第六話「容疑者と記憶」
【容疑者一覧】
ルーク
ナイトの兄。シャトランジ王国の幹部の一人で、
近衛兵をしていた。
当時アリバイは無し。現状、犯人の可能性が高い人物。
現在国軍の指揮官として戦線に出ている。
フォーク
シャトランジ王国の幹部の一人だった。
当時アリバイはあり、ピンと共に兵の強化について話し合っていた。その様子執事長が目撃している。
犯人の可能性は低い。
現在軍をやめて、自警団を結成し、ピンと共に街の治安維持を行っている。
ピン
シャトランジ王国の幹部の一人だった。フォークと同じく当時アリバイはあり、ピンと共に兵の強化について話し合っていた。それは執事長が目撃している。
犯人の可能性は低い。
現在軍をやめて、自警団を結成し、フォークに着いていき、共に街の治安維持を行っている。
サクリフェイス
シャトランジ王国の幹部の一人。元敵国の兵士。当時アリバイは無し。図書館にて、一人で読書をしていたとのこと。犯人の可能性あり。
ビショップ
シャトランジ王国の幹部の一人。当時アリバイは無し。実験室で新しい魔法の実験をしていたとのこと。もし犯人ならクインを蘇らせる意味が分からない。犯人の可能性は低め。
キャスリング
シャトランジ王国の幹部の一人。当時アリバイは無し。ルークの為に茶を入れに行っていたらしいが、目撃者無し。犯人の可能性あり。
チェック
シャトランジ王国の幹部の一人。人たらしなクインをあまりよく思っていない様子だった。
当時アリバイはあり。キングスと一緒にチェスをしていたとのこと。しかし、クインをよく思っていなかったキングスと共犯の可能性はある。
キングス
クインの兄。
先代の王と妾との子だったので第一王子であるのにもかかわらず、王位継承権第二位。当時アリバイはあるが、クイーンをよく思っていなかったこともあり、犯人の可能性あり。
——————————
「……ざっと、こんなものでしょうか。」
持ってきた紙に容疑者を一通り書き終えたナイトは息を撫で下ろすが、ポーンは静かに「ナイト」
と口を開いた。
「……貴方は?」
「なんですか、ポーン様?」
「だから、当時の貴方について書かれてないわ。」
「……え?」
「だから、当時の貴方の事が書かれていないの。何故?」
意味が分からなかった。何故自分を容疑者一覧に書かなければならないのかとポーンの言うことに理解できないナイトだった。
「ポーン様、まさか……俺が犯人だと?」
全くもって心外だった。当時の自分はまだ八歳の子供であり、もし犯人であるならどうやって力もあり、知力もあるクインを殺せるのだろうか。
疑われた事に眉を顰めたナイトに「……はあ」とポーンはため息をつく。
「私、さっきヒントをあげるって言ったわよ。」
「?ええ、そうですね。」
「当時の貴方について書く事こそが、ヒントよ。」
「………………はッッッ!?」
「ちょっと、声大きいわよ。」
(当時の俺が、ヒント……!?)
ナイトは暫く、考え込んでしまう。自分がヒントとは考えたことがなかったのだ。
「当時の、俺は……」
ナイトは当時について思い出そうとするが「……っ、」と、頭を抱え込んでしまう。
その様子を見たポーンは「そうなのね」とまるで予想通りと言った反応をした。
「——貴方、私が殺された日のこと……覚えてないでしょう?」
ナイトはまるで悪いことをした子供のように項垂れる。
「……はい。俺は、あまり覚えていません。」
そう言ったナイトだったが、続けて言う。
「ポーン様はなんで俺が覚えていないって、わかったんですか?」
「………さあ、勘よ、勘。
じゃあ"あまり"覚えていないナイトくん。貴方は一体何を覚えているのかしら?」
「す、すみません 」
「子供だもの、忘れるのは仕方ない事よ。……ただ、私が気になるのは"あまり"よ。少しは覚えている、という認識で合ってる?」
「はい……俺が覚えてるのは、」
ナイトは思い出す。
頭から血を流しながら担架に運ばれていくクインを。
そして、その前に何故か医務室で寝ていた事を。
それらを聞くと、「なるほどね」とポーンは言う。
「じゃあ、ナイトくん。書いてくれる?」
「っ、はい!」
ナイトは紙に自身について付け足した。
————ナイト。当時8歳。当日クインが殺された際に何故か医務室にいた。その当日の記憶を覚えていない。
と、書き終えるのを確認したポーンは「さて」と口にする。
「次は、私の当時の状態について整理しましょうか。」
——————————
クイン・シャトランジ。
事件の被害者クイン・シャトランジの遺体はルークの執務室の隣である談話室のトロフィー、表彰状などが置かれている棚のすぐ隣にうつ伏せで倒れており、ルークは第一発見者だった。
クインの死因は、頭部を重い鈍器で殴られたことによる脳出血。
クインの頭部には二つの打撲痕があるのだ。
最初の打撲痕が頭頂部にあるのだが、二つ目の打撲痕は後頭部にあるのだ。
おそらく二つ目は倒れているクインに目掛けて鈍器が振り下ろされた……と考えるのが妥当。
「なるほど、なるほど。私はこういうふうに……なんか、結構痛そう——————」
「何呑気な事言ってんですか!?」
「いや、痛そうじゃない。二回も殴るか二回も普通………………否、殴るか。」
「いや、殴らないですからね!?」
呑気な事を言い始めたポーンに、ナイトは叫んでしまった。これは自分は悪くないと思う。
すると、ポーンは「くくく」と笑い始める。
「考えてみなさい、ナイト。何故二回も殴る必要があったのか」
「!」
「これ以上は、何も言えないわ。」
「えっと、」
二回も殴る意味。それが、犯人を追う手がかり。ナイトは考え込む。
——————————何故二回殴ったのか。
(打ちどころが良かったから、ポーン様は一回目の時点で生きていた?)
当時のクインの遺体について振り返る。
(凶器は確か、見つからなかった……でも、重い鈍器……棚……トロフィー…………あ、トロフィー!)
恐らく、犯人は棚にあったトロフィーでクインを殴ったとナイトは考えた。
(もう1発殴る事で、凶器がトロフィーであることを隠したかった?)
「犯人がもう一回殴って跡を重ねることで、凶器がトロフィーだという事を隠したかったから、とかですか?」
「……うん。確かにもう一回殴ったのには、それもあるかもね。」
「え?」
「だって、私の遺体はトロフィーがある棚にあった。勘の良い子なら凶器がトロフィーだってわかるはずよ?だから隠したかった気持ちはあるんじゃない?」
「なるほど、」
「でも、貴方の推測はちょっとずれてる。」
「え、」
「だって、私の遺体の状態もう一度振り返ってみなさいな。」
ナイトは改めてクインの遺体の状態について振り返る。
(あ、そっか。最初の打撲痕が頭頂部、だけど、二つ目の打撲痕は後頭部にある)
全然場所が違うじゃないか。跡を重ねて誤魔化した……という線はナイトの中で消える。
「えっと、打ちどころが良かったから?それとも、憎んでいたから二回殴ったとか?」
「……ナイト。貴方当てずっぽうできてない?私は一つ目については言えないけど、憎んでいるならもっと鈍器で殴るはず。憎んでいるんですもの。何故数回だけなのかしら?」
「……あっ。」
もうナイトにはお手上げだった。
(……頭から煙が出ているわ)
さすがにもうお手上げかと、ポーンは考えると「それはまた二人を仲間にしたら考えましょうか。」と口を開いた。
「ふ、ふたり?俺と貴方がですか?」
「違うわよ、馬鹿。……ほら、この二人よ。」
ポーンは容疑者一覧の紙に書いてある名前に指を指す。途端ナイトは血の気が引いた。
「……嘘でしょ」
「嘘じゃないわよ。貴方、いずれ国を復興させるならこの二人は必ず向き合わなくちゃならないのよ」
「いや、彼女は大丈夫なんですが、その、……彼と兄は、仲が悪いので、……俺を受け入れてくれるか、どうかは。」
「それは昨日聞いたわよ。」
「ううっ、」
ポーンはそんな真っ青な顔をしているナイトを尻目に椅子から立ち上がる。
「——————いきましょう、自警団へ。」
フォーク、ピン。
現在軍をやめて、自警団を結成し、街の治安維持を行っている二人の元幹部の元へポーンとナイトは向かおうとしていた。
投稿遅れてすみません……ついに幹部全員の詳細について明かされました。でも、一気に七、八人の名前が出たので訳わからなくなっていると思います。
少しずつ覚えてもらえるように、頑張ります!
次回も、楽しみにしてください。




