第6話 友達
「詩織」
「なぁ〜に、お兄ちゃん」
「仲のいい友達って何人ぐらいいる?」
「特に仲良しは2人だけど」
「今度の日曜日に招待しないか?」
「いいの?」
「ああ」
「でも急にどうして?」
「今度の月曜日に婚約発表が決まっただろ?」
「詩織の親友だったら、いきなりニュースで知ると
“なんで言ってくれなかったんだろう”
って水くさいと思われるんじゃないかと思って
だから、前日にその二人にだけ、そっと知らせておくほうがいいだろ」
「お兄ちゃん、ありがとう
二人とも、そんな子じゃないよ
でも、明日二人に予定聞いてみる」
日曜日。
「こんにちは、お邪魔します」
「初めまして、志保です」
「初めまして、歩美です」
「いらっしゃい、初めまして、翔太です」
みんな少し緊張してるみたい。
「それじゃ俺は準備してくるから、3人で遊んでて」
お兄ちゃんは庭に出て行った。
お兄ちゃんが向かった先はWeberのBBQコンロ。
友達のためにローストビーフを焼いてくれてる。
3人でリビングで話をしてたら。
「お待たせ」
お兄ちゃんがローストビーフを持って戻ってきた。
途端に目が輝く志保と歩美。
お兄ちゃんがローストビーフを切り分けてくれる。
「どうぞ、たくさん食べてね」
ローストビーフのサーブをして、キッチンに。
ピザを持って戻ってきた。
「詩織のお兄さん、素敵ね」
歩美が言うと、お兄ちゃんが照れる。
「優しそうなお兄さんでいいな」
志保の言葉にちょっと赤くなってる。
「お兄さん、彼女さんとかいるんですか?」
志保の質問にお兄ちゃんが固まる。
視線は、私に助けを求めてる。
「志保ったら、お兄ちゃんが困ってるよ」
4人で笑ったけど、お兄ちゃんの笑顔だけ引き攣っていた。
食事が終わって、まったりタイム。
お兄ちゃんが目配せしてきた。
「志保、歩美、あのね」
勇気を搾り出して。
「実は、お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんじゃないの」
「えっ、詩織、どうしたの急に」
「あのね、お兄ちゃんは
私の旦那様になる人」
そこまで行ったところで。
「改めまして、詩織の婚約者の翔太です」
「えぇー!?」
「うそぉ!」
二人が驚くのも無理はない。
「いつから?」
「どうやって知り合ったの?」
二人に質問攻めにされた。
ひとしきり騒いで落ち着いたところで。
「それでね、もう驚いてるついでだから、もう一つあるの」
「まだ何かあるの?」
志保が呆れた顔で。
「お兄ちゃんは、皇帝陛下」
「っ!?」
「ちょっとまって!」
「冗談でしょ?」
「ほんとなの?」
まあ、信じられないよね。
「本当にほんとなの?」
「ほんと」
「ドッキリじゃなく?」
歩美がキョロキョロしてるのはプラカード探してるのかな?
「そんなことって、ある?」
しばらく沈黙が続いて。
志保が気づいたように。
「ということは、私、皇帝陛下にローストビーフ切り分けてもらってたの?」
んー、そうなるよね。
「不敬をお許しください!」
志保が椅子から飛び降りて土下座した。
それを見た歩美も反射的に隣で土下座した。
「ちょっと、二人とも椅子に座ってよ」
二人の手をとって、椅子に座らせた。
「驚かせてごめんなさいね」
お兄ちゃんが二人を怖がらせないように優しい声で話してる。
「実は、明日、婚約発表されるんだ
だから、詩織と仲良くしてくれているお二人には、先にお知らせしておきたくて
それで、今日、ご招待させていただいたんです
これからも、詩織と仲良くしてやってくれると嬉しい」
お兄ちゃんが二人に頭を下げた。
「そんな、頭を上げてください」
二人は恐縮している。
「話し方、今まで通りでいいですよ」
お兄ちゃんがにっこり笑ったけど。
「今まで通りって、どんなだっけ」
ようやく二人の笑い声が戻った。




