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時の虜  作者: 古都麿
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25/28

第25話 社会との隔絶〜再会

「陛下」

宰相閣下が穏やかな顔でお兄ちゃんに話しかけるのは珍しいことだ。

「私もいささか歳をとり過ぎましたので引退させていただきたく」

「後継者は大丈夫なのか?」

「はい、きっちり仕上がりました

とても優秀で、今すぐでも着任できます」

「わかった、では、来週任命式を行う」

「承知いたしました」


今日はお兄ちゃんに呼ばれて謁見の間にいる。

新しく宰相となる人の任命式だそうだ。

私が接触を許されている数少ない人の一人が宰相閣下。

すでにお歳は80歳を過ぎている。

いい加減引退させてあげないと。


扉が開き、宰相閣下と後任の宰相閣下が入ってきた。

40代後半の女性。

「志保!」

私は思わず駆け寄った。

「会いたかったよぉ」

志保が驚いた顔で私を見てる。

「詩織、なんで……」

「うぉほん」

宰相閣下が咳払いをして。

「まずは任命式を」

そう言われて陛下の隣に戻った。

「宮本勇士、此れを以て帝国宰相の任を解く

長谷川志保、帝国宰相に任命する

これより任にあたれ」

「拝命いたします」

志保は陛下の前に進んで任命書を受け取り、深く礼をした。

「二人とも、これが終わったら、皇帝の間に来るように」

陛下はそう言って二人を下がらせた。


「楽にしてくれ」

お兄ちゃんの言葉に、みんながテーブルに着いた。

「宮本前宰相、お疲れ様でした」

お兄ちゃんが宮本さんを労う。

「いえいえ、もったいないお言葉」

宮本さんはあくまでもお兄ちゃんを陛下として敬っている。

「志保ちゃん、久しぶりだね」

お兄ちゃんが志保に声をかける。

志保の表情が硬い。

志保が私を見て。

「詩織、どうして歳を取ってないの?

あの時のままだよね?」

志保らしく、核心を突いてくる。

「それに陛下も」

お兄ちゃんは頷きながら。

「こちらに来て貰ったのは、そのことなんだ」

お兄ちゃんが志保に向き直って。

「俺と詩織は歳を取らない

これまでも、これからも」

志保が信じられないという顔をしている。

志保は集まっている人の顔を見回して、歩美に視線が止まった。

「歩美は知ってたの?」

この話を聞いて驚いた様子がない歩美を不審に思ったんだろう。

歩美は何も言わず、ただ頷いた。

志保が歩美を見る目に非難が含まれている。

「俺たちが隠棲しなければならなくなった理由、志保ちゃんならわかるよね」

お兄ちゃんが志保の思いに気づいたのか、そう問いかけた。

志保は考え込んで。

そして。

「はい」

ただ頷いた。

その目からは非難の色が消えていた。

「俺たちが接点を持つ人物はごく限られている

宰相もその一人だ」

お兄ちゃんは皇帝の顔でそう言った。

「お兄ちゃんの話はもういい?」

待ちきれず、お兄ちゃんにそう言って。

「ああ、終わったよ」

お兄ちゃんは呆れ顔で言った。

私たちは、皇后の間に移動して、女子会となった。


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