31.神様の新たなお気に入り
「ご飯できましたよ~。今日はお刺身と魚のスープ、いろいろ葉っぱ炒めと桑の実ゼリーです」
ついつい品数が多くなってしまった。
夜食用は別の皿に避けつつ、三人分の食事を机に運ぶ。
私の分は試食程度だが、桑の実ゼリーだけはキッチリ1人前確保した。
「お刺身ってなんにゃ? このまま食べていいのかにゃ?」
にゃん太郎は刺身を見るのが初めてのようだ。
もふもふハンドでペシペシと触りながら様子見をしている。
「うん、生でも食べられるみたいだから。好きかどうかは分からないから、感想聞かせて欲しいな。にゃん太郎が気に入ったら明日からも出そうかなって思ってる」
「分かったにゃ!」
にゃん太郎は元気に返事をして、早速お刺身を食べ始める。一口食べた直後、固まった。
冒険者達は干し魚を携帯していたが、おそらく生魚を食べる機会も多かったのではないか。
そう思っていたのだが、少し心配になる。その場にしゃがみ、にゃん太郎の顔を覗き込む。
「にゃん太郎、美味しくなかった? 嫌だったら、ぺってしていいからね?」
けれどにゃん太郎の反応は想像とは違った。
動きこそ止まっていたものの、俯いていた顔に浮かんでいたのは笑み。
「これも好きにゃ! 大きさが違うのも面白いにゃ」
「そっか、よかった!」
にゃん太郎は幸せそうな顔で、残りのお刺身にも口を付ける。
大きさと薄さが違うのは私の技術の問題なのだが、喜んでもらえて何よりである。にゃん太郎のお気に入りの厚みが決まる前に頑張ろうと心に誓う。
一方、神様はスプーンにも手を付けぬまま。
ジッとゼリー皿を見つめている。
「このゼリーはいささか小さすぎるのではないか?」
「いっぱい採ってきたつもりだったんですけど、潰してみたら思ったより量なくて。三人で分けるとこのくらいの量しかできなかったんですよ~。美味しかったら明日は別の場所も探して採ってくるので、今日のところはこれで我慢してください」
「そこにあるではないか」
神様はバッグの横に置かれた桑の実を指差す。
文句を言うために食べずに待っていたようだ。とても神様とは思えない食い意地である。それでも食べなくても問題ないと言われるよりウンといい。
食欲があるのなら食べるのが一番なのだ。
無理に我慢する必要はない。
だがあれらは譲れない。
「あれは神域に埋める用です」
畑と畑以外にそれぞれ植えて、成長を観察するために採ってきたもの。桑の実以外にも髪染めに使う薬草や油花などもずらりと並んでいる。
「……美味いか見極めた後、新たに採ってくるのでもよいのではないか?」
「でも他のはもう採ってきてますし、1種類だけ日をズラして埋めると土の状態が変わってややこしいので嫌です」
私も意地悪で言っているわけではない。
ましてや手の平をクルックルーとひっくり返しているわけでもない。
先日埋めた神様の爪やガチャから出た土などの恩恵がどれほどか分からないのだ。2日目以降に埋めたものは恩恵が得られず、そのまま枯れてしまったーーなんてこともあり得てしまう。
それを気にするなら、畑に作物を植えた日と同じ日にこちらの検証も開始しろという話だが、疲れていたのだから仕方ない。
次の検証が必要であれば、可能な限り揃えるつもりだ。
「他の料理はたくさんありますし、量はキッチリ三等分。その上で、神様のだけオレンジゼリーも付けたので、今日はそれで我慢してください」
「……美味いのが育つことを期待する」
「神様が豊作祈願してくれれば百人力ですね! 酸っぱい実も甘くなるかも。まぁこの実が酸っぱいかどうかは分かりませんが」
まずは一口食べてみてください。
そう勧めると、にゃん太郎がひょっこりと顔を出す。
「甘かったにゃ」
「ぬっ!?」
どうやらゼリーの大きさに不満を抱いているうちに、先を越されてしまったようだ。神様は焦ったようにスプーンを手に取る。
「……ふむ。これもなかなか美味だ。もう少し大きければよかったのだがな」
「まだ言いますか」
「明日は大きい物を所望する!」
「はいはい。明日は桑の実採取を重点的に頑張らせて頂きます」
第一階層では見かけなかったが、第二階層はかなり広そうだった。他にも実っているポイントがあるはずだ。
今日の水場に立ち寄って確保した後で、他のポイントも探してみよう。
「ところで、あそこで冷ましている葉は食わぬのか?」
「ああ、あれはお茶にするんです。作り方合ってるか分からないので、美味しいかは分かりませんが。美味しくできたら神様にもあげますね」
「なるほど、茶か。そちらも楽しみにしておくとしてよう」
「乾燥させる時間もあるので、飲めるのは明日以降になります」
「スープに入ってる葉っぱも美味しいにゃ」
「結構美味しいよね〜。明日も実と葉、両方採ってこようね」
「にゃっ!」
今日のご飯も我ながら美味しくできて満足だ。
一足先に食べ終えた私は、動画が止まっていたことに気づく。
電源を落とそうと手を伸ばすと、期待の眼差しを感じた。にゃん太郎である。
「もう一回見る?」
「にゃっ!」
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