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29.クリア報酬??

「ただいま帰りました〜」

「帰ったにゃ〜」

「よく戻ったな。それで、初めての第二階層はどうだった」

「猿の群れの顔面が怖かったです」

「初めて部屋入れて楽しかったにゃ!」


 私とにゃん太郎はそれぞれ、今回の探索で最も印象に残った出来事を伝える。


「ほぉ、隠し部屋を発見したのか。運が良かったな」

「エリアDってところらしいですよ」

「エリアD?」


 首を傾げる神様にダンジョンでの出来事を話す。


 例の部屋の前で撮った写真を現像して見せると、にゃん太郎はふんふんと鼻を鳴らす。

 よほど楽しかったようだ。心なしか、神様の表情も優しく思える。


「それで、ロゼが我が輩の足を拭いたのにゃ」

「やっぱり予備のゴブリンの布は持っておくべきですよね。にゃん太郎、いきなり足拭いてごめんね。気持ち悪くなかった?」

「案外悪くなかったにゃ」

「じゃあこの布は足拭き用雑巾として、入り口のところに置いておこうか」


 バッグの中から足拭きに使った布を取り出す。

 すると綺麗に畳んでおいた布の間から何かが落ちた。コインだ。


「今日はガチャコイン1枚もなかったはずだけど……」


 昨日取り出し忘れがあったのだろうか。しゃがんでコインを拾う。

 そしてコインに刻まれた模様を見て、眉を顰める。


「また、創造神の模様……。なんで? どこから湧いてるの? 怖いんだけど……」


 元より使い道も目的も分からないアイテムだ。

 入手経緯まで不明となるとありがたみなんてない。手元に残るのは圧倒的恐怖と気持ち悪さである。


「あの部屋から持ってきたにゃ?」

「いやいや、私は何も選ばなかったし、この布だってにゃん太郎の足拭いただけだよ? まさかにゃん太郎の足からコインを生成するエキスが……。神獣だし、ありえない話じゃないよね……」

「我が輩にそんな力が!?」


 にゃん太郎と2人で顔を見合わせる。

 すると間に神様が割り込んだ。


「2人とも落ち着け。神獣にそのような力はない」

「じゃあゴブリンの布か、私のバッグから沸いたってことですか? でもコインが沸く系のマジックは必ず先にコインを仕込むものです。数秒確認しただけなら誤魔化せても、私が何度も使っているのにコインの存在に気づかないなんて……」

「ゴブリンの布に隠されていたわけでも、ロゼのバッグの中に隠れていたわけでもない」

「ならどこに!」

「聞いた話を参考にするならば、2人が入った部屋は隠し部屋ではなく試練の間。そのコインは試練の間をクリアした報酬といったところだろう」

「クリア報酬? これが?」


 予想外の返答に口があんぐりと開いてしまう。


「ロゼを選ぶのが正解だったにゃ?」

「でも仲間を正解にすると、1人で入った時に正解を選ぶことができなくならない?」

「これは我の推測だが、答えは入室した者によって変わるのではないか? 置かれているアイテムすら変わる可能性もある。その中でにゃん太郎は本心からロゼこそが最も大切だと判断した。だから試練をクリアできた。おそらく他にもいくつかクリア基準があるのだろうが」


 基準として真っ先に思い当たるのは持ち出し個数。

 にゃん太郎が見かけた冒険者は『いくつもアイテムを持っていた』という。


 1つを選べと言われているのに、複数持ち出したとなればその時点で失格だ。礼儀や選択アイテム以前に、欲に目がくらむものが多かったのかもしれない。


「クリア報酬でくれるなら、使い道の分からないコインより食べ物の方が……いや、身に覚えのない食べ物が入ってた方が怖いか。今回は試練の間クリアの記念メダルが手に入ったと思っておきます」

「創造神の模様が描かれたコインを記念メダル扱いとは……」

「現状使い道がない謎コインですからね。観光地の記念メダルとほぼイコールですよ。むしろ見た時に訪れた場所が分かる分、記念メダルの方が嬉しくもありますけど……。あ、そうだ。他にも写真と動画を撮ってきたので見ましょうよ」


 何か言いたげな神様の視線は無視して、撮影した動画を映像保管用の水晶に移す。

 そして水晶に魔力を流しながら赤い電源ボタンをポチッと押す。


「映像は綺麗だけど、音がちょっと聞き取りづらいかも?」

「距離が遠いのではないか?」

「我が輩はこれも好きにゃ」


 にゃん太郎は自分の勇姿が映る映像にご満悦のようだ。映像に映る魚に爛々と目を輝かせ、手を小さく動かしている。可愛い。


 今回のような映像を撮るためであれば、距離を詰めれば音声への満足度も高まることだろう。


 カメラ自体も思ったよりも使いやすく、映像も一回で約10分撮れる。

 そのまま撮影を続けていれば、自動で2つ目の枠を使って撮影を開始する。枠は全部で20個。フルで使えば200分の動画が撮影可能だ。


 画質だっていい。

 家庭内ビデオ撮影が目的ならこれで十分。


 だがメインはトラブル時の証拠動画撮影である。

 対象との距離はある程度取っておきたいし、画質と同じくらい音や声の記録も大事。


 となると証拠映像を撮ることに特化したビデオカメラか、録音特化のアイテムをいくつか持っておいた方がいいだろう。


 突然だとカメラを構えるのが間に合わないかもだし、値段的にも使い切りの録音アイテムが現実的。ひとまず練習用と予備も合わせて、三個は欲しいところだ。


 もらったカメラに満足はしているが、予定通り、今日は魔法道具屋を覗いて帰ることにしよう。




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