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25.ダンジョンの階段

「それじゃ、そろそろダンジョン探索に行きますかね」


 写真を一通り確認し、昼食まで済ませた。

 といっても神様とにゃん太郎は食べたばかりで、私だけ持ってきた昼食を摘まむ程度ではあったが。一応神様のおやつも作っておいた。


 よっこらしょと立ち上がり、ローブを羽織る。

 バッグを肩から下げると、神様がひょいっと指を振った。


【デイリークエスト:畑に水をあげよう】

【デイリークエスト:ダンジョンで拾った石をヌシの水場に入れよう】

【デイリークエスト:新しい素材をゲットしよう】


「今日のクエストだ」

「あ、そっか。まだ水やりしてませんでしたね。行く前にやっておきます」

「うむ。水やりは植物の成長に関わるからな。クエストがなくとも忘れぬようにな」

「朝食後、探索に行く前にやることにします。私が忘れてたら教えてくださいね」


 神様はコクリと頷く。


 水やりは昨日と同じ手順で問題なし。

 ダンジョンで拾った石とは、おそらく水場で苔が付着したものを確保してこいということだろう。先ほど教えてもらったヌシの餌である。


 残りの一つだが……。


「新しい素材って採取したことないのならなんでもいいんですか?」

「採取以外の方法でもいいぞ。第二階層に行くなら新たな魔物や、第一階層の魔物とは違うアイテムを落とす魔物と遭遇するはずだ」

「我が輩の分は新しい魔物の討伐だから、落ちた素材をロゼが拾えばいいにゃ」


 毛繕いをしながら答える。

 にゃん太郎の気遣いはありがたいが、元よりにゃん太郎が倒した魔物の素材を回収するのは私の役目だ。そんないつも通りの手順でいいものなのか。


 それではクエストとして出す意味がない。


「それはあくまでもにゃん太郎のアイテム扱いになるはずだから」


 やんわりと断ると、神様はなんてことないように私の言葉を否定する。


「それでも構わぬぞ。今日は第二階層を見て回るのが目的だからな」


 神よ、それでいいのか。信者に甘すぎやしないか。


 それでいいなら、気になる点がもう一つ浮上する。


「ところで水場で拾った石は素材に含まれないんですか」


「あ」と溢す神様。

 完全に失念していたようだ。まぁにゃん太郎の倒した魔物のドロップ品でもカウントされるらしいので、大した違いはないのだが。


 神様はごほんと咳払いをする。


「新しいフロアに行くのだ。せっかくだからそのカメラとやらをダンジョンで使ってみたらどうだ?」

「今後、創造神のコインが見つかった時に撮影できるかもですし、慣れておいた方がいいですよね。なんか面白い植物とかあったら撮影してきますね」

「また撮るにゃ?」

「うん。にゃん太郎の活躍を撮って、神様に見てもらおっか」


 空中でカメラのシャッターを押す真似をする。するとにゃん太郎の表情が緩んだ。先ほどの撮影を気に入ってくれたようだ。


 スマホの写真フォルダが猫ちゃんの写真でいっぱいになる人達の気持ちがよく分かる。近々作成予定のアルバムは速攻で二冊目、三冊目と増えていきそうだ。


「撮影するのはいいが、くれぐれも周りへの警戒を怠るでないぞ」

「はぁ~い」

「分かったにゃ」


 にゃん太郎と二人で元気な返事をする。

 そして忘れないうちに水やりを終えて、ダンジョンへ進む。


 今回はメイン通りのスライムだけをサクサク倒していく。ゼリー用の核もバッチリ確保して、バッグに突っ込んでいく。


 そのままにゃん太郎に先導してもらって、階段を下りていく。


「見た目より幅あるんだね」

「いっぱい通ると広くなるにゃ」

「広くなる?」


 話していると、下から冒険者が上がってきた。大きめの荷物を持った5人組のパーティーだ。数段ほどの距離まで近づくと、階段の幅が広がった。


「すごい」


 頬を緩ませて感心する私とは反対に、冒険者達は顔を俯け、視線を逸らしていた。せっかく幅が広くなったというのに、壁にくっつきそうなほどに端に寄って。


「目を合わせるな」

 ボソッと吐かれた言葉には警戒の色が込められていた。皆、手には干し魚を持っている。明らかににゃん太郎を警戒している。


「下にはまた違う魚がいるにゃ。どんな味かにゃ〜。ご飯楽しみにゃ〜」


 当のにゃん太郎といえば、夕飯に思いを馳せている。階段を下る足取りも非常に軽やかだ。


「釣れた魚は今晩のご飯にしようね」

「いっぱい獲るにゃ!」


 シュッシュと前足で魚を獲るポーズをする。すれ違った冒険者達がビクッと肩を揺らした。そして何かをボトボトと落とすと、ダダダと駆け上がっていく。


 階段に魚の匂いが充満する。

 一体いくつの干し魚を落としていったのだろうか。


 だがにゃん太郎が後ろを振り向くことはなかった。


ーーーー

ストックが少しできたため、以降は毎週火・土曜日の投稿となります。

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