19.創造神のガチャコイン?
「そういえば作物によって土壌や育成方法を変えなくていいんですか?」
「現在ガチャから排出される種はどれも簡単に育てられるものばかりだ。特別手を加えねばならないものはない」
「ならランダム豆の種類だけ気にすればいいってことですね。種類分からなくならないように柵とか欲しいけど、とりあえずは布ロープでいいや」
種類ごとに植える場所を大まかに決める。余っていた布を小屋から持ってきて、ざっくりスペースを分ける。
全体の1/3はトマトという超トマト贔屓な畑である。その他にも手持ちの種は全て植えつつ、一番狭いスペースにはダンジョンから持ち帰った薬草を植えた。
髪染めに使う草だ。根っこごと確保しておいたため、植え替えも簡単。第一階層でも採取できるとはいえ、自分で育てられるに越したことはない。これは畑と開拓前の土地の両方に植えて、経過を観察することにした。
「お芋はこっち。支柱使うシリーズはまとめておきたいから、豆はトマトの横でいっか。支柱に使えそうなまっすぐな枝も探してこないと……」
種を植えた場所に軽く土を盛りながら呟く。
すると手元に小さな影ができた。神様だ。
「枝は枝。支柱の代わりには使えぬぞ」
「まっすぐな枝でも?」
「畑と作物、どちらからも認めてもらう必要があるからな」
「えっと、比喩ですか?」
「そのままの意味だ。必要なら作れ」
育成環境がアバウトなわりに変なところにルールがあるようだ。まぁその辺の枝よりも、ちゃんとした支柱の方がいいのはなんとなく分かるが。
ただ支柱とまっすぐな棒とは何が違うのか。
棒と棒との間の支えの有無とか? それも支柱により有無が分かれるわけだが。
百均の支柱を愛用していた私にはコレと言って拘りも知識もない。
「幸い、支柱の材料は枝のみ。釣竿同様、念じれば作れる上、経験値も溜まる」
「あ、お手軽生産でいいんですね。それなら助かります」
「どうやって作る気だったんだ」
「ダンジョンから木材や竹材を取ってきて、ナイフとかで加工してから紐で縛るとか?」
2本の支柱を十字に組んだり、四角に置いてから紐で周りをグルリと囲ったり。そんなに難しくはないイメージだ。あくまでイメージでしかないが。まぁなんとかなるだろうと思っていた。
「それでもいいぞ。竹でも支柱は作れるしな」
「お手軽な方でお願いします」
「我が輩がまた枝を持ってくるにゃ」
「ありがと、にゃん太郎」
「ところで、ロゼの足元にあるキラキラは何にゃ?」
にゃん太郎はもふもふの手で私の足元を指す。
「キラキラ?」
キラキラとはなんだろう?
疑問に思いつつ、しゃがんだままの状態で2歩下がる。
すると私の足跡のすぐそばに何やら光るものがあった。手で軽く土を払うと、すぐにキラキラの正体が顔を見せる。
「ガチャコインだ!」
なぜこんなところにあるのだろう。
土を取り出したり埋めたりしていた時はまるで気づかなかった。まさかの遭遇にテンションは鰻登り。だがすぐに冷静になった。
「食神の模様じゃない……」
突如発見されたガチャコインは、先ほどガチャ投入したばかりのコインとは模様が違う。大きさや重さなど、見た目や持った感じは大体同じなだけにショックがデカい。
それによく見ると、火水風土のガチャのデザインとも違う。
「大樹と同化する美女のデザインなんて見たことな……いや、どこかて見た気もするな」
どことなく見覚えがあるような、ないような。
首を左右に捻っていると、目を大きく見開く神様が視界に入った。
「神様、このデザインって何を意味するものなんですか?」
「それは創造神様の模様だ。なぜ我が神域に創造神様の模様が刻まれたアイテムが……」
「創造神様の?」
乙女ゲームには創造神のガチャコインなんて登場しなかった。私が知らないだけで設定として存在していたとしても、見つけるならダンジョン内であるはず。
よりによって畑開拓中に見つかるなんてことはない。あったらとっくにストーリーとして読んでいる。見逃すはずがない。
神様も混乱しているようだ。
私の手の中のコインをひっくり返し、観察している。
「食神信者が自作した後、神域に埋めたとか?」
創造神は5柱の上位神。
他の5柱の加護を受けながらも、創造神を信仰する者もいる。だからかつての食神信者の中に、創造神へ強い信仰を抱いていた者がいても不思議ではない。
ただし土の中に埋めたアイテムが、養分として吸収されないのは不思議な話。
見た目は本物に寄せられても、どうやって保存面をクリアしたのか。
「いや、ガチャコインは模倣品が作れぬよう特別な素材で作っておる。このコインも同じ。模倣できるはずがない」
つまりコレも立派なガチャコインではあると。
「溶かして新たに作り替えた可能性は?」
「不可能ではないが、ガチャコインにはそれぞれ神の力が宿っておる。状態を変質させるのは至難の業だ。そこまでして手に入れたコインを、なぜ我が神域に放置する?」
「うーん……。それぞれの神域に設置することで、強い信仰を示したかったとか?」
頭に浮かんだ意見を言ってはみたものの、自分でもあまりしっくり来ない。
二人揃って首を傾げ、うーんうーんと唸る。
すると私達の間ににゃん太郎がひょっこりと顔を出した。私の腕に寄りかかるようにコインを確認する。
「前にこれとおんなじの見たことあるにゃ」
「なんだと? どこで見た」
「落っこちた先の、トゲトゲの根元にあったにゃ」
「それ、罠に引っかかってない!?」
「我が輩にかかればにゃんてことないにゃ!」
典型的な落とし穴だが、心配ご無用とばかりのドヤ顔である。
実際、下に落ちていた物まで観察できるくらいだから余裕はあったのだろう。
シュタッと壁を蹴り、華麗に回避するにゃん太郎の姿は簡単に想像できる。
「つまり同じものが複数枚存在するということか……」
神様はぶつぶつと呟きながら、さまざまな可能性を思案する。
「面白い」「続きが気になる」など思っていただけたら、作品ブクマや下記の☆評価欄を★に変えて応援していただけると執筆の励みになります!




