18.初めての神域開拓
「ガチャ回してきますね〜」
ガチャコインを回収し、今度はガチャの間へと移動する。
今回ドロップしたコインは8枚。
ミミックなだけあって大量に溜め込んでいた様子。一気に大富豪になった気分だ。ご機嫌でハンドルをぐるんぐるん回していく。
【⭐︎3 ゾウさんジョウロ】
【⭐︎1 良質な土】
【⭐︎1 杭×5本】
【⭐︎1 ロープ×3本】
【⭐︎2 小麦の種】
【⭐︎2 種芋】
【⭐︎1 良質な土】
【⭐︎1 ロープ×3本】
今回は⭐︎1が多め。
小麦と種芋が嬉しいところだが、見慣れないアイテムが気になる。
「土はともかく、ロープと杭って何?」
何に使うために用意されたアイテムなんだろう。
改めて隣に設置されたレアリティ一覧を確認する。
⭐︎3 調理器具や農具
⭐︎2 野菜などの種
⭐︎1 資材または素材
表記は以前と変わらず。
土、ロープ、杭はいずれも⭐︎1相当なので、資材または素材に当たる。これで何を作れというのか。
頭上に大量のハテナマークが浮かぶ。
「まぁ持っていってみればいっか」
ひとまず獲得したアイテムを腕に抱える。
一袋0.5キロの土が地味に重い。だが往復するまでもない量でもある。
のっそのっそと移動しながら、神様とにゃん太郎の元へ戻った。
「遅かったな」
「今回は8回もありましたからね〜。それで、杭とロープなんてものが出たんですけど、これって何に使うんですか?」
土を床に置き、ロープと杭を机に載せる。
にゃん太郎は机にヒョイっと飛び乗り、興味津々でロープを見つめている。
新しいおもちゃと勘違いしてそうだ。いきなり飛びかからないのは、さすがにゃん太郎。
一応手で軽く制しておく。
「開拓用資材だ。ちょうどいい、外で開拓しながら説明する」
「それは脱がなくていいのかにゃ?」
にゃん太郎は温泉スライムの皮ポンチョの袖の方をちょいちょいと引っ掻く。
「汗で色が垂れてくると怖いから、今日は帰るまで着てようかなって」
「邪魔じゃにゃいか?」
「意外と動きやすいよ」
「ならいい。これからロゼには働いてもらわねばならぬからな。ひとまずその土も運び出してくれ」
「これも使うんですか?」
「使わなくてもいいが、あるなら使った方がいい」
「なら使う一択ですね」
「開拓場所は……そうだな、水場のすぐ側がいいだろう」
残りの種もポケットに入れ、よいしょよいしょと土を運び出す。
開拓場所に到着する頃には額に汗が溜まっていた。首元のタオルを引っ張り出し、軽く汗を拭う。
「開拓に最低限必要なのは、我の力がこもったロープと杭だ。今回は開拓初回ということで、畑の開拓に使うロープと杭はこちらで用意した」
神様はどこからか、ロープ5本と杭10本を取り出した。
私がガチャで獲得したものと見た目は全く同じだ。
「これを使って、開拓したい場所を囲め。もちろん追加でゲットした資材を使用してもいい」
「ロープ同士を結ぶのはオッケーですか?」
「構わぬ。畑の形は自由だが、必ずスタート地点とゴール地点は同じであること。そしてロープがピンと張った状態であることが条件だ」
「杭と杭の間が等間隔である必要は?」
「ない」
「なるほど。植木算より緩めってことですね」
「植木算?」
「一定距離に等間隔で木を植えていく際、必要となる木の数を計算するための式です。今回なら使用するロープの長さの合計が全体の距離で、杭の数は決まってるから間隔を答える問いになりますね」
小中学校の算数で登場する定番問題である。
植える場所を直線で表せるか、円で表せるかが問題を解く鍵となる。リアルで使う機会など早々ないと思っていたが、状況としてはかなり似ている。
「ふむ。それでも構わぬぞ」
「いや、計算は簡単でも測量が面倒そうなので、見た目判断でいきます。杭やロープを今回全て使わず、次回以降に持ち越すのはアリですか?」
「次回以降に回しても構わぬが、同じく畑を作る予定があるなら、今回まとめて作ってしまった方が楽だと思うぞ」
「なるほど」
確かに同じものを二度作るのは手間だ。
畑はある程度のスペースを確保しておきたいし、神様の言う通り、まとめて作ってしまうことにしよう。
「一度挿した杭は再利用できぬから、場所は慎重に選ぶのだぞ」
そう告げて、神様は木槌を差し出した。
これを使って杭を打ち込めと言うことだろう。
先にロープだけで大体の位置を決めてから杭を打ち込んでいく。
「できました〜」
「ではロープの中にある地面を掘れ。我の膝が隠れるあたりが好ましい」
「この中、全部? 結構あるんですけど」
深さは20〜30センチ程度といったところか。それ自体は大したことではない。
問題は広さ。
ロープ11本と杭15本で作った畑は、小学校の教室ほどある。意外とロープが長かったため、限界まで欲張ってしまったのだ。
「今日で終わらせずとも、何日かに分けてやればいい」
「畑自体を何個かに分けた方が楽だった気がするんですけど!?」
「まとめてやった方が初めからより多くの作物を育てられる」
「順番を待たずにいろいろ食べられるようになるにゃっ!」
「面倒臭がった私が二回目以降の開拓を放置するのをブロックしようって魂胆ですね……。欲張った私も私だけど、罠に嵌められた気分……」
文句を言いながら、スコップでえっさほいさと土を掘っていく。堀りだした土はロープの外側で山にする。
途中で水分補給を挟みながら、黙々と掘っていく。
若い身体は汗をダラダラと垂らしつつも、腰が悲鳴を上げることはない。ついでに色がついた汗が垂れてくることもない。
「暑い!」
半分くらいでポンチョを脱ぎ、土堀りを再開する。
「はぁ〜、終わりましたよ」
ヘロヘロになってロープの外に出る。
時計を確認したところ、作業時間は約2時間。
長かったような、意外と早く終わったような。
このくらいならまとめてやってよかったかも、と思えるちょうどいい時間だ。
「ご苦労。ではこの椅子をロープの真ん中に設置してくれ」
私が掘っている間に小屋から運び出したのだろう。
食事の際に使っている椅子がロープの外に置かれていた。座面には、先ほど渡した座布団が敷かれている。早速使ってもらえて嬉しい。
「この辺ですか?」
「うむ。それではこれより開拓の儀を行う。ロゼとにゃん太郎はロープの外に出ていてくれ」
神様はそう言って、自分は椅子にちょこんと座る。
「お供物とかは?」
「夕食はりんごのゼリーがいい」
「夕食じゃなくて、今お供えするやつです。神様の前で行う儀式ってそういうの必要じゃないんですか?」
神社で結婚式を挙げる時や地元のお祭り、地鎮祭などでは必ず米や酒、塩などの供物が置かれていた。今回も似たようなものではないのか。
そう考えたのだが、当の本人は不思議そうに首を傾げている。
「ここにあっても困るからあとでいい」
確かに地鎮祭などの儀式は神への挨拶だったり、安全や繁栄などの願い事を伝えるためのものだったりする。神域の主である神様が行う儀式を同列に考えるのもおかしな話だったかもしれない。
「あとで食べるからな。これは体力を使う」
しっかりと念押しまでしてくる神様。
「ちゃんと作りますから安心してください」
私もお腹が減っている。帰宅するまで我慢できそうもないので、終わったら軽く食べてから帰るつもりだ。
神様は私の返事に満足げに頷く。
そしてなにやら呪文のようなものを唱え始めた。聞き慣れない言語で、何を言っているかは分からない。にゃん太郎は暇そうに欠伸をしてから丸くなった。
私は神様をぼうっと眺める。
大体5分くらい唱えていたと思う。ピタリと止めると、神様はヒョイっと椅子を降りた。
「椅子をロープの外に出して、先ほど掘った土を中に戻してくれ」
「真っ平にしちゃっていいんですか?」
「畑に使うなら少しふんわりさせた方がいい。そこの土を混ぜ込むと、より良質な畑に近づくぞ」
神様が指差したのは、ガチャで獲得した良質な土だ。
すっかり存在を忘れていたが、ここで活躍するようだ。二袋持ってきたうちの片方だけ開け、先ほど掘り返した土に混ぜ込んでから穴に戻していく。
心なしか先ほどよりも土が軽くなっている気がする。
せっせと戻し、最後に周りを囲んでいた杭とロープを外す。
杭を抜くと、結んでいたロープごと灰になった。
そのまま地面に落ち、畑の周りに線を描いていく。開拓済みのエリアとそうでないエリアとの境界線代わりというわけか。
全ての杭を回収すると、畑がぽぅっと光り、端っこに小さな木札が設置された。
しゃがんで確認すると、畑①と書いてあった。
なんとも親切なシステムである。
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