表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
40/70

14.リンゴ採取と連携プレー

「そういえばロゼ、欲しいと言ってたものは買えたかにゃ?」


 釣り場に向かう道中。

 にゃん太郎は顔だけこちらに向けて質問する。


「お金は余裕あったんだけど、商品が見当たらなくて。今日早めに帰って探そうかなって思ってる」


 盗み聞きをして得た情報なので、残念ながらどの店で売っているかは分からないのだ。ひとまず雑貨屋には売っていなかった。


 魔法道具を専門に取り扱う店があるのだろうか。

 道に迷った時にはそれらしき店は見当たらなかったが……。まぁひたすらいろんな店を覗くしかない。途中で掘り出し物があるかもと前向きに考えることにした。


「早く見つかるといいにゃ〜」

「やっぱりあった方が安心だもんね」


 そんな話をしている最中も、周りから視線が集まっている。

 あからさまに囲まれるようなことはなく、討伐や採取をしながらこちらを窺う程度。私達の進行方向にも軽く道ができている。


 やはりにゃん太郎がいる時といない時とでは、警戒度合いが変化するようだ。


「今日はこっちにゃ。赤い実がここから見えるにゃ?」


 昨日と違う小道に進もうとしたところで、にゃん太郎は「あれにゃ」と遠くを指す。

 だが少し距離があるせいか、目的の果物は見えない。


「ごめん。私の視力だとぼんやり木っぽいのがある程度しか見えないや」

「もう少し近づけば見えるにゃ?」

「私に見えなくても、にゃん太郎が見えているなら大丈夫だよ。取り尽くされた後とかじゃなくてよかった」

「他にも果物ある場所知ってるにゃ。そっちは紫のまんまるがなってるにゃ」


 にゃん太郎はふふんと鼻を鳴らして自慢げだ。


 紫の丸い果物って何だろう?

 パッと浮かぶのはぶどうだが、りんごやオレンジのように広葉樹に付いている想像ができない。確かぶどうを育てるためには、藤棚のようなツルを這わせる棚が必要だったはず。


 ダンジョンにも屋根なし休憩所みたいな棚があるのか、はたまた棚に代わる何かがあるのか。


 ぶどう以外の果物の可能性もある。

 木の高さは低くなるが、ブルーベリーでも美味しくいただける。


 大穴はアケビ。

 私は食べたことないのだが、祖父から子供の頃食べたんだよなぁ〜なんて話を何回も聞いたものだ。美味しいのかな。


 まだ見ぬ紫の果物の想像が広がり、私の口元も緩んでいく。


「今度クエストが出た時、連れてってくれる?」

「我が輩に任せるにゃ! 今日は赤いのにゃ〜」


 そのまま数組の冒険者とすれ違いながら、奥にズンズンと進んでいく。


「あ、私にも見えてきたよ。りんごだ!」

「あれは我が輩も食べられそうかにゃ?」

「神様に聞いてみてにはなるけど、見たままりんごなら食べられるよ。にゃん太郎に出たクエストって採取まで? 私が登って取ってこようか?」

「今日は我が輩が取るにゃ。これなら昨日のより固いから地面に落ちても大丈夫にゃ」

「あ、なら私が下で布広げてキャッチするよ」


 りんごの木の下に到着すると、周りには他の冒険者の姿がまるでない。

 昨日の釣り場とは違い、広く知られている場所のようだが先客は先ほどすれ違った彼らで全員だったらしい。帰る途中で魔物を倒していってくれたのか、周りから魔物の声さえ聞こえてこない。


 私からすればありがたい話だ。

 釣りセットを地面に置き、バッグからゴブリンの布を取り出す。


 弛まないように二つ折りにして、左右から引っ張る。破けているところがないか確認してから、りんごの真下あたりで広げる。


「いいよ〜」

「行くにゃ」


 準備完了の合図を送ると、にゃん太郎は木に向かって風魔法を放った。

 木に触れるか触れないか辺りで小さな竜巻が起こる。それに巻き込まれる形で、りんごが三個一気に落下する。


 待機場所は完璧。

 りんごが落下した衝撃で布を落とさないように両手に力を入れる。すると布の真ん中、窪んでいた部分がふわっと空気を孕み出す。そこに吸い込まれるようにりんごがぽすんと落ちた。


「成功にゃっ!」

 布の上にりんごが三つ並ぶと、にゃん太郎が嬉しそうな声を上げた。


「どうやったの?」

「布に向けて運んできたのにゃ」

「そんなこともできるんだ。すごいね」


 強く魔法をぶつければりんごが割れてしまったはず。傷一つないりんごを見つめながら、にゃん太郎の凄さを改めて実感する。


「柔らかいところに落とさないと潰れるだけにゃ」

「なるほど、連携専用技ってことか」


 一応私も役に立っていたようだ。

 りんごはそのまま布で包み、バッグにしまう。


「このリンゴは神域に帰ったら食べよ。あとは特殊個体だけど……。そこの水場、変わった魚いる?」

「前来た時と変わらないように見えるが、取っていけばそのうち見つかるにゃ!」


 にゃん太郎は水場の近くを歩き、早くも釣りポイントを見つけたようだ。足の上に座り込み、にゃっにゃっも次々に魚を掬いあげていく。


「にゃん太郎はそこにいてね。私はちょこちょこ移動しながら釣ってみる」


 特殊な魚の場合、特定のマスで釣りをした時のみ低確率で引っかかるということがある。大事なのはどこのポイントで釣れるのかを把握すること。途中、餌や道具を変えてみるのも手だ。


 ーーというのはゲームあるあるの知識なのだが、リアルの釣りでも似たような現象は起こるらしい。


 そこで今回使用するのは、ニャン太郎のボンボンと一緒に作った毛糸ルアー。

 と言っても凝ったものではなく、短い毛糸を何本かつけてから軽く割いただけ。それでもないよりマシだろうと思って作ってみた。


 道具も餌も変えられないのだから、できる範囲で工夫するしかない。

 そもそも特殊個体に向けての準備はゼロなのだ。引っかかってくれたら儲け物くらいの軽い気持ちで釣り竿にくくりつけていく。


「そいやっ」

 まずは第一投。

 水の流れに任せていると、早速1匹目が引っかかった。


 二投目がなし。

 三投目を引き上げている時に、ふと視界の端に何かが映った。


「宝箱?」

 魚の奥にチラッと見えたのは、いかにもな見た目の宝箱。海賊船や洞窟の奥が似合いそう。


 探している特殊個体ではないが、宝箱なんて見つけたらスルーできるはずがない。


 ひとまずかかった魚を手繰り寄せ、バケツに入れる。

 そして釣竿を手に、水場にある石の上をひょいひょいっと移動する。


「この辺りだよね?」

 宝箱が見えた位置でしゃがんでみるが、それらしきものが見当たらない。


「見間違いかな〜」

 手に持っている釣り竿の先で水の中をツンツンと突いてみる。すると釣竿の先に何かがぶつかった。


「ここ、なんかある?」

 石の上から覗き込んでも何も見えない。

 だが手に伝わる感触が、ここに何かがあると告げていた。



「面白い」「続きが気になる」など思っていただけたら、作品ブクマや下記の☆評価欄を★に変えて応援していただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ