9.にゃにが出るかにゃ
夕食と明日に使う分の魚を残し、あとは全て捌いてしまう。内臓もしっかり取って、食塩水に漬ける。
「まぁ1時間くらい漬けておけば大丈夫でしょ」
漫画でもそのくらいだったと思う。ザックリとした記憶を頼りにする不安はあるが、そもそも使っている魚も大きさも違うのだ。
小さいのは早めに引き上げて、大きいのは長めに漬けておけばいいだろう。
待っている間に、夕食用のスープと焼き魚を作っていく。スープは魚をメインに、ハーブみたいな草と昨日の草も入れてみた。それから山菜もいくつか。
これは初心者用採取食材スープと名付けよう。
にゃん太郎のおかげで、お腹を満たせるスープになりそうだ。
スープを煮込んでいる間、別の鍋でも魚を茹でる。こちらは身をほぐして、山菜と混ぜ合わせる。味つけする前に、スプーンで掬って一口。
「魔魚ってどれも魚介感強いから、意外と塩だけでもいけるな……」
身もふっくらしていて、脂も乗っている。種類の違う魚を食べているはずなのに、全てが同時に旬を迎えているような感覚だ。
ダンジョン内にも旬があるのか、時期によって魚が入れ替わっているのかは分からないが。ゲームでは魔魚と一律で表記されており、種類までは出てこなかった。
そもそも恋愛シミュレーションがメインなのだ。魚の種類まで気にするプレイヤーなど一握り。私だって転生するまでまるで気にしていなかった。
茹でた魚の身をほぐして山菜や草と混ぜたものも作ってみた。意外と美味しい。常備菜とまでは行かずとも、私の帰宅後にお腹が空いた場合に食べてもらうものとしては良さそうだ。
一通り作り終わったところで、火を止め、ポケットに手を入れる。3枚のガチャコインを握りしめれば、マットの上で丸まっていたにゃん太郎も立ち上がる。
「どこか行くのかにゃ?」
「さっきもらったコインでガチャ回してこようかなと思って。にゃん太郎も来る?」
「行くにゃ」
「なぁにが出るかな〜」
「にゃにが出るかにゃ」
私の歌に合わせてにゃん太郎もふんふんと鼻を鳴らす。神様もスッと立ち上がり、列に加わった。
神様とにゃん太郎に見守られながら、巨大ガチャのハンドルを回す。
すると出てきたのはラメ入りのカプセル。黒いから分かりづらいが、キラキラしている。これはいいものに違いない。
パカっと割ると、中にチャームが入っていた。
目の前のウィンドウに【☆3 鉱物用ハンマー】と表示される。
「鉱物用ハンマーだ!」
待望の岩塩ゲット用アイテムだ。
シャベルに続く、二つ目のチャームでもある。なくさないよう、早速ブレスレットに付ける。
「岩叩くやつにゃ?」
「そうそう。魚に付いてたコインを入れたから、干物作りに役立てろってことなのかな? 神様、なんか不思議なパワーとか使いました!?」
「我にそんな力はない。役立つものが出てよかったな」
冷静に否定しつつも、お祝いの言葉も添えてくれる神様。
「はい! 今漬けてる分を乾かしてる間に早速塩取りに行ってきますね」
「我が輩も行くにゃ」
「どのくらい音が響くか分からないから、最初は私だけ行ってくるよ。ガチーンって落としたら嫌でしょ?」
近くにいることを知らなかったとはいえ、にゃん太郎はシャベルで岩を叩いた際に間近で音を聞いている。
私にとってはあまり気にならず、どちらかと言えば手に伝わる衝撃の方が印象に残っている。それでも猫の耳にはさぞかし不快だったはず。
にゃん太郎も以前「嫌な音がしたにゃ」と言っていた。叩いた時に聞こえた鳴き声も覚えている。さすがに連れていくのは申し訳ない。
にゃん太郎は少し考えてから、不安そうな目を向ける。
「一人で大丈夫かにゃ?」
「大丈夫だよ。さすがに歩き回る体力はもうないから、神域出てすぐのところにあった岩をいくつか叩いたら戻ってくる」
人差し指を左右に降りながら「パッと行ってサッと帰るから」と付け加える。
我ながら雑な説明だが、その雑さがよかったようだ。にゃん太郎の目から不安の色が消えていく。
「帰ってきたら一緒にダラダラしよ。にゃん太郎のことブラッシングしてあげる」
「ブラッシング?」
「今日来る時にブラシも買ったんだ。気にいるか分からないけど、一回使ってみよ」
にゃん太郎の頭には大量のハテナマークが浮かんでいる。元野良猫のにゃん太郎はブラシを見る機会がなかったのかもしれない。
「後で見せるね〜」
そう言ってから、残りの2回も回していく。
【☆2 トマトの種】
【☆2 豆の種】
「またトマト!? このガチャ、トマト率高すぎません!? これ三個目なんですけど!?」
「今入っているものはどれも比較的簡単に育てられる野菜がメインだからな。初めての野菜としては、トマトも豆もちょうどいいと思うぞ」
「まぁ両方嫌いじゃないですけど。豆はお腹にも溜まりますし……」
ガチャガチャで中身が被るのはよくあること。トマトの種だけでいくつ入っているのかは気になるところだが、神様に文句を言っても仕方ないかと考え直す。
「5回引いて☆1が一個も出ないのは運がいい証拠ってことにしておきますか!」
☆3も出たことを含めれば、なかなかの確率だ。二種類の種とチャームを見ながら、幸先がいいと自分に言い聞かせる。
「面白い」「続きが気になる」など思っていただけたら、作品ブクマや下記の☆評価欄を★に変えて応援していただけると執筆の励みになります!




