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6.今回の成果報告

「ロゼ、大丈夫だったかにゃ」

 神域に入るとすぐににゃん太郎の声が飛んできた。


 声と表情にはうっすらと不安の色が滲んでいる。なかなか神域に入ってこないから心配になったのだろう。


「大丈夫だよ。待っててくれてありがとう」

 その場でしゃがみ、にゃん太郎にお礼を告げる。すると視界の端に小さな足が見えた。


「我もいるぞ。何やら変な輩に絡まれたそうではないか」

「にゃん太郎目当ての人たちですよ」

「そのアザもそやつらに付けられたのか」

「すれ違い様に腕を掴まれた時についたやつですね。にゃん太郎が神域に入れるかどうか見たいとか言って、そこまでついてきたんですよ〜。見届けた後に、アザをつけたのと疑ったお詫びってポーションと魔石色々セットをくれました」


 ポーションと魔石を入れたバケツを少し持ち上げる。


 けれど神様は私のアザから視線を逸らさない。そのままアザまで手を伸ばし、悔しげな声を漏らす。


「我の信仰が弱いばかりに」

「別に食神信者だから狙われたってわけでもないと思いますよ。にゃん太郎が神域に入ったのを見て色々とよく分かんないこと言ってましたし、なんかあるんじゃないですかね。知りませんけど」


 彼らはにゃん太郎が私といることに驚いていた。本人が言っていたように、咄嗟に腕が伸びただけだろう。イカつい冒険者ゆえに力が強すぎてこうなったーーと。


 掴まれた側はたまったものではないが、あの状況で私達がどの神を信仰しているか確かめる術はなかったはず。


 だから神様が気に病むような内容ことなどないのだ。

 雰囲気が暗くなりすぎないうちに、サクッと話を切り替える。


「まぁそんなことより小屋入ってお昼にしましょ。戦利品も見せたいですし」

「我が輩もたくさん魚獲ったにゃ!」


 にゃん太郎は「みんなで食べるにゃ〜」とご機嫌である。そのまま一番乗りで、ドアが開いたままの小屋に入っていった。


「痛くはないのか」

「普通にしてる分には問題です。押したら痛いかもですけど」

「負傷している箇所はあまり触るものではない」

「分かってますって。お詫びセットもご飯後に紹介しますね〜。相談したいこともありますし」


 相談という言葉に神様の眉がかすかに動く。


「別に変な話じゃないですよ」

「何してるにゃ〜」

「ほらにゃん太郎も待ってるから早く中入りましょ」


 さぁさぁと神様を小屋に入らせる。私も続いて入り、魚が入ったバケツとボウルは床に置く。


「ほお。初めてのわりにずいぶんとたくさん釣れたな」

「ほとんどにゃん太郎が獲ったものですよ。私なんて小さいの三匹釣ったらヘロヘロで。体力的にギリギリだったので、もう少し貧弱仕様の簡単なクエストにしてください」


 ローブを脱ぎながら、本日のクエストへの文句を軽く告げる。

 帰りに知らない冒険者相手に警戒していたこともあり、午後も同じ地点まで探索に行く気力はない。


「初めて作った釣り竿はどうだった?」

「結構しなるから、そのままボキッと折れちゃうんじゃないかって思ってましたけど、いい感じに力を分散させてくれているんですかね。意外と丈夫でびっくりしました」

「選んだ枝が良かったのかもしれんな」

「枝はにゃん太郎に拾って来てもらったんですよ」


 褒められたにゃん太郎はドヤ顔である。人型だったら後ろに転がりそうなほど胸を張っていることだろう。


 今回使わなかった分の枝は、釣り竿と一緒にバッグに刺してある。

 ここでもゴブリンの布を活用しているのだが、頻繁に行くのであればバッグに釣り竿を固定するためのベルトが欲しい。


 今日は釣り竿を持ち帰って、専用ベルトでも作るべきか。

 だが使う枝によって竿の大きさが変わったら困る。そういうところは普通の釣り竿と違うわけで……。


 意外と便利なゴブリンの布を見つめながら思案する。


「次は釣り竿が壊れるまで釣るクエストを出そうと思っていたが、この様子だとしばらく壊れなさそうだな。次回はまた別のものにしよう」

「あ、今日はにゃん太郎が結構頑張ってくれたおかげで、明日の分くらいまでお魚ありそうなので、釣り系のクエストは明後日以降にしてくださいね」

「ロゼはデイリークエストを一体なんだと思っている」


 本来、信者側から難易度の調整やクエスト内容の要求はできない。要求したところで神様が信者側の要求を呑むこともない。


 クエストとは、神と信者とは、そういうものだと理解している。

 そして目の前の神様なら、ある程度意見を汲んでくれることも。


「どうせ釣るなら美味しく食べられる日がいいじゃないですか。神様だって魚だけポンポンポンって出されるより、いろんな種類の食べ物があった方がいいでしょ?」

「我は魚のみでも構わぬが……。まぁ我の信者らしいと言えばらしいのか」

「私なんて伸び代のオンパレードですからね! 明日は釣り以外の分野でよろしくお願いします。それでこっちが魚以外のものです」


 話しながら、机の上にゴブリンの布を置く。その上で山菜風呂敷を開く。

 採取時にある程度泥を落としたつもりだったが、まだまだ付いている。先に別の布を敷いて正解だった。


「こっちは昨日と同じやつで、この辺がにゃん太郎が食べられるんだよって教えてくれた山菜です。この食用菊っぽいやつとかってどうやって食べるんですか」

「そのままでも食べられるが、湯がいでも美味い」

「へぇ。菊のおひたしみたいですね。なら魚をしゃぶしゃぶにしたのと和えても美味しいかも」


 しゃぶしゃぶにせず、刺身と和えてもいい。

 火を通すのは単純に私が生魚を苦手としているからだ。二人の反応を見て、今後は彼らの分だけ刺身と和えて出すかどうかも考えるつもりだ。



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