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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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84 もう一つの竜の卵 5



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 鬱蒼とした大木と蔦の葉に隠されるみたいに、その扉は存在していた。


「誰か開けてしまったら、どうするんですか?」


「……私を誰だと持っている、ルルーシア・フリーディル。私は、悠久の時を生きるハイエルフだ。なあ、闇の精霊様?」


「その通り。俺ほどではないが、高位の存在だ」


「証人が……いまいちですシーク先生」


 ある予感が、私の不安を引きずり出す。


 創世神話の闇の精霊様が、ふんっと鼻を鳴らす。

 どう見ても、可愛らしい大きなモフモフにしか、見えない。


 確かに、白銀の竜と戦った時、虚空みたいな黒い魔法は、飲み込まれたら絶対出てこられない予感がしたけれど。


 ……それよりも、何よりも、扉が開けられてしまうフラグですか? どうか、開けられませんように。


 アレス殿下が、片手で私を支えたまま、器用に扉を開くのをぼんやりと見る。


 そういえば、いつもアレス殿下と私の距離が近すぎると、間に入ってくる父が、妙に静かだ。


 ……どうして今回は、邪魔をしてこないの?


 扉が閉まる。見慣れた王立学園の、シーク先生の部屋。


 そして、その時はやってきた。


「アレス……。ここまで、目を瞑ったんだ。責任持って、ルルーシアを守れよ?」


「言われるまでもなく」


 その瞬間、地面が大きく揺れる。

 ギシギシと揺れ動く空気の振動が、世界中を飲み込んでしまうような、悲痛な叫びに聞こえる。


 まるで、助けを呼ぶような。

 全てを根絶やしにしてしまいたいと、怒り狂うような。


「キュウウウゥゥッ!」


 その声に、応えるみたいに、フェイの背中でクロが鳴いた。


 それが収まっても、私の体はまだ揺れが続いているみたいに、ガタガタと震えていた。私とアレス殿下を繋ぐ魔法の鎖が、まるで頼りない絹糸みたいに、頼りなく途切れかけた気がしたから。


 どうして私は、まだ時間があると思っていたのだろう。災厄は、私が十八になる年に起こるのだから、それまでは安全なのだと。


 そう、災厄が起こる前、王国の各地で、地震が起こり、魔獣たちの活動が活発になっていった。


 ようやく、アレス殿下が、私のことを降ろしてくれる。そのまま、ペタリと私は床に座り込んだ。無意識に、留めようとした魔法の鎖。思ったより、魔力を消費していたことに気がつく。


「…………ルル、大丈夫?」


「平気です。アレス殿下は、予想していたのですか?」


「……前の人生でも、今回も、調べ続けていたからね。どうして、ルルーシアが狙われたのか。犯人の予想は、ついていたから、今回は泳がせていた部分もあるけれど……」


「っ……だって、今の揺れは、明らかに……」


 魔力の波動を帯びていた。

 自然が引き起こしたのではない、その揺れは。


「……明らかに、竜の魔力を帯びていました」


「……まずは、リベラを迎えに行こう」


「アレス殿下。また、無茶をする気ですか」


「リベラは、大事な弟だからね」


 そう言われてしまえば、止めることなんてもう、できない。ただ、私はこの先に何が起ころうと、そばにいることだけを、誓ってアレス殿下の腕を引き寄せた。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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