↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/105

81 もう一つの竜の卵 2



 不思議な魔力に溢れる森は、どこか竜の棲家と似ていた。奥に行くほど、森は深くなり、生き物の気配がなくなっていく。


 たぶん、この奥は、大事なものを守るための空間だ。


 それにしても、気になるのは、レイチェル様とリベラ殿下のことだ。


 物語の展開に、近づくために弓矢対決を申し出たら、エルフと師弟関係になったのは、理解に苦しむけれど、それよりも。


「…………また」


 ――――他の人たちを、巻き込んだ。


 アレス殿下と、幸せに暮らせればそれで良いのに、なぜこんなにも周囲を巻き込んでしまうのだろう。


 小説の中には、リベラ殿下が、あんな傷を負う展開なんてなかった。だから、これは私が運命に抗った結果、起こったことなのだ。


 あの、黒い傷跡を思い起こして、歩いていたら、窪みに気が付かずに、バランスを崩しかける。


 それなのに、転ぶこともなく、ふわりと私の体は宙に浮かんだ。


「……アレス殿下」


「ルルは、本当に危なっかしい」


「あの、ありがとうございました」


「……ちゃんと掴まって」


 なぜか、抱き抱えられたまま、降ろしてもらえない。そのまま、アレス殿下は、人を一人抱えてるなんて思えないほど、軽やかな足取りで森の中を歩いていく。


「また、余計なことを考えている。リベラとシュルツ侯爵令嬢のこと?」


「……なんで、分かったんですか」


「分かるよ。ずっと、ずっと、ルルのことばかり、見てきたから。ほら、歩きにくいから、掴まらないと」


「あぅ」


 さらっと、何言っているんですか!

 それに、歩きにくいなら降ろしてください。


 そう思うのに、全く降ろしてくれる気がないアレス殿下。仕方がないので、しがみつく。


「……リベラは、大丈夫だ。負けるはずがない」


「だって、あの傷」


 あの禍々しい黒い傷跡。

 どう考えたって、普通の傷じゃない。


「……リベラが、一人でなんとかできなくても、俺がいる。リベラは、大事な弟なんだから、兄として助けるよ」


 ……本当に、頼りになると同時に、不安で不安で仕方なくなる。


 きっと、アレス殿下なら何とかしてくれると、頼ってしまう自分が、嫌だ。


 頼ってしまうくせに、色々なものとアレス殿下を天秤にかけたら、今の私は、アレス殿下のこと、どんなに迷ったとしても選ぶに違いない。


 たくさんの人を巻き込んでしまっても。

 そんな自分が怖い。嫌いだ。


「……ルル、大丈夫だ。もちろん、ルルが最優先なのだとしても、今の俺を作ってくれた大切な人たちを切り捨てたりは、しないから」


「アレス殿下?」


 確かに、悪役令嬢ルルーシアを救うために、第一王子アレスは、多くのものを切り捨てた。


 今の私は、そのことを知っている。

 そして、アレス殿下が、あの時とは違うことも。


「そんな顔させないために、ルルの大事な人達ごと、守るから」


「アレス殿下にばかり、負担をかけてます」


「ルルが、俺のこと選んでくれたから、それでお釣りが来る」


 何を言っているのだろう。

 私が、アレス殿下を選んだ結果、大変なことになっているのに。


 それでも、しがみつく力を強くする。

 離れたくなくて。確かに、ここにいることを、確かめたくて。


「……それで、私は、この胸焼けしそうな茶番をいつまで見ていれば良いのかしら」


 諦めを漂わせる声色。

 アレス殿下の肩口から、顔を上げると、レティと目が合う。


 ああ、森と同じ色の瞳が、本当に綺麗。


「っ……アレス殿下! 降ろして下さい!」


「え、どうして?」


 何故そこで、いかにも私の方がおかしいみたいに、小首を傾げて聞き返してくるんですか?


「…………もう、いいわ。あと少しで、着くのだし、勝手にしてっ」


「まあ、アレスとルルーシアは、いつもあんな感じだ。気にしたら負けだ」


 相変わらずクロを背中に乗せたフェイ。

 認識阻害魔法が見せているのは、仲の良い親犬と子犬に違いない。


「ひっ?! 犬が喋った!」


「…………俺は、犬じゃない」


 今までダンマリだった、フェイがレティに話しかける。たぶん、居た堪れないのは、アレス殿下以外、この場の全員だ。


「ルルが、嫌ならやめるけど」


 それなのに、私は目的地に着くまで、とうとう嫌だとは、口に出来なかった。



最後までご覧いただきありがとうございました。


『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。