80 もう一つの竜の卵 1
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レティに、案内されて訪れた村は、予想外にもごく普通の家々が立つ、ごく普通の村だった。
どこから情報が広がったのか、不思議なほど、どんどん人が集まってくる。
「シークテイルダイアンタス様! お久しぶりです。ところで、失礼ですが、後ろにおられる方たちは……」
「私の師、ルルーシアよ! あと、そのお供の方達」
いや、アレス殿下は、人族の王太子殿下ですよ? いくら、世の中を知らないからって……。
あれっ? アレス殿下は、なんとも思ってなさそうですね。私が言われた時は、ピリッとした雰囲気を醸し出していたのに。
その時、「久しぶりだな! ルドルフ」と、集まっていた人たちを掻き分けるように、背の高い超絶美形が現れた。
エルフは、美形が多いって書いていたけれど、銀の髪にアイスブルーの瞳をしたこの方は、もはや美しいを通り越して、神々しい。
このお方が、エルフの長リークシドエル様なのだろう。物語に出てきた造形そのものだ。
しかし、そのお方が、なぜか父の名を呼んだ。
「ああ、元気そうだな、シド」
「あれから十五年か、バルトも、元気にしてるか?」
「ああ、総ギルド長として飛び回っている」
「へぇ。あの、弱虫バルトがねぇ」
おや、お知り合いでしたか。
しかも、ずいぶん気安い雰囲気ですね。
バルト総ギルド長は、以前父に命を救われたという。その頃からの、付き合いのようだ。
国王陛下をアベル呼びを始め、父の顔が広い。
S級冒険者とは、そこまでのものなのだろうか。
そんな思考の波間に浮かんでいると、アイスブルーの瞳が私を捉える。
「……ということは、君がルルーシアか。竜の予言通りなら、もういないはずだが、元気そうだね? ルドルフに、二重に竜の力が絡み付いているのと、関係しているのだろうね」
「竜の予言は、書き換えられたからな」
ふんっ、と息を吐いて父が言った言葉。
周囲に走る動揺、騒めき。
それはただの驚きだけではない。
そこには、戸惑いと敵意の香りが、ほのかに混ざっている。
「…………そうか。…………そして、アレス・ロレンディア王太子殿下。ご挨拶が遅れました。エルフの長リークシドエルと申します。光の精霊の恩恵とともに」
「ああ、アレス・ロレンディアだ。リークシドエル殿、お会いできたことを喜ばしく思う。……だが、今回訪れたのは他でもない、竜の卵についてお聞きするためだ」
「…………そこにおられる、小さき竜と関係が?」
「えっ、どこに竜がいるの?!」
小声のリークシドエル様と、場違いなほど大きな声を出したレティ」
「レティ。ちょっとこちらに来なさい」
ため息をつくシーク先生。だって、あなたが抱っこしているクロが、その竜ですよ。
先ほどの輪から離れた場所で、パチンッとシーク先生が、指を鳴らす。途端に、レティがプルプルと震え出す。
「は?」
「レティシルディア。見えるものが全てではないと、何度も教えているはずだが。君の魔力なら、そのことを忘れなければ、すぐ気がつくことができただろう。そして、不用意に大きな声を出さないように」
シーク先生は、騒ぎにならないように、クロに得意の認識阻害魔法をかけていたようだ。
「…………は?」
周りが騒ぎにならないところを見ると、魔法が解かれたのは、レティ限定のようだ。もちろんリークシドエル様は、気がついていたみたいだけれど。
「あの場所に、案内してさしあげなさい。レティシルディア」
「あの場所、ですか」
こうした私たちは、あの時の謎に、また一歩近づくのだった。
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