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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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80 もう一つの竜の卵 1



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 レティに、案内されて訪れた村は、予想外にもごく普通の家々が立つ、ごく普通の村だった。


 どこから情報が広がったのか、不思議なほど、どんどん人が集まってくる。


「シークテイルダイアンタス様! お久しぶりです。ところで、失礼ですが、後ろにおられる方たちは……」


「私の師、ルルーシアよ! あと、そのお供の方達」


 いや、アレス殿下は、人族の王太子殿下ですよ? いくら、世の中を知らないからって……。


 あれっ? アレス殿下は、なんとも思ってなさそうですね。私が言われた時は、ピリッとした雰囲気を醸し出していたのに。


 その時、「久しぶりだな! ルドルフ」と、集まっていた人たちを掻き分けるように、背の高い超絶美形が現れた。


 エルフは、美形が多いって書いていたけれど、銀の髪にアイスブルーの瞳をしたこの方は、もはや美しいを通り越して、神々しい。


 このお方が、エルフの長リークシドエル様なのだろう。物語に出てきた造形そのものだ。


 しかし、そのお方が、なぜか父の名を呼んだ。


「ああ、元気そうだな、シド」


「あれから十五年か、バルトも、元気にしてるか?」


「ああ、総ギルド長として飛び回っている」


「へぇ。あの、弱虫バルトがねぇ」


 おや、お知り合いでしたか。

 しかも、ずいぶん気安い雰囲気ですね。

 バルト総ギルド長は、以前父に命を救われたという。その頃からの、付き合いのようだ。


 国王陛下をアベル呼びを始め、父の顔が広い。

 S級冒険者とは、そこまでのものなのだろうか。


 そんな思考の波間に浮かんでいると、アイスブルーの瞳が私を捉える。


「……ということは、君がルルーシアか。竜の予言通りなら、もういないはずだが、元気そうだね? ルドルフに、二重に竜の力が絡み付いているのと、関係しているのだろうね」


「竜の予言は、書き換えられたからな」


 ふんっ、と息を吐いて父が言った言葉。

 周囲に走る動揺、騒めき。


 それはただの驚きだけではない。

 そこには、戸惑いと敵意の香りが、ほのかに混ざっている。


「…………そうか。…………そして、アレス・ロレンディア王太子殿下。ご挨拶が遅れました。エルフの長リークシドエルと申します。光の精霊の恩恵とともに」


「ああ、アレス・ロレンディアだ。リークシドエル殿、お会いできたことを喜ばしく思う。……だが、今回訪れたのは他でもない、竜の卵についてお聞きするためだ」


「…………そこにおられる、小さき竜と関係が?」


「えっ、どこに竜がいるの?!」


 小声のリークシドエル様と、場違いなほど大きな声を出したレティ」


「レティ。ちょっとこちらに来なさい」


 ため息をつくシーク先生。だって、あなたが抱っこしているクロが、その竜ですよ。


 先ほどの輪から離れた場所で、パチンッとシーク先生が、指を鳴らす。途端に、レティがプルプルと震え出す。


「は?」


「レティシルディア。見えるものが全てではないと、何度も教えているはずだが。君の魔力なら、そのことを忘れなければ、すぐ気がつくことができただろう。そして、不用意に大きな声を出さないように」


 シーク先生は、騒ぎにならないように、クロに得意の認識阻害魔法をかけていたようだ。


「…………は?」


 周りが騒ぎにならないところを見ると、魔法が解かれたのは、レティ限定のようだ。もちろんリークシドエル様は、気がついていたみたいだけれど。


「あの場所に、案内してさしあげなさい。レティシルディア」


「あの場所、ですか」


 こうした私たちは、あの時の謎に、また一歩近づくのだった。


 

最後までご覧いただきありがとうございました。


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