77 竜との因縁。
念のため、冒険者としての服に着替える。
王太子の婚約者である以上、ある程度の格式を求めた結果、あの白銀の竜の素材を使っている。
最高の贅沢。そして、キラキラ光る白銀のドレスは、見るものを惹きつける……らしい。
着替えを終えると、父の執務室へと向かう。
「ルルちゃん、遅いから心配した。アレスをあまり信じてはダメだ。ひどい目に遭うよ?」
「失礼な。何もしませんよ。結婚するまでは」
「あれ? レイチェル様についての、話をしていたのでは……」
「その話は終わった。まずは、レイド殿に会いに行く」
レイド・シュルツ学園長は、レイチェル様の、叔父だ。現侯爵の弟で、侯爵家から出て、平民と貴族分け隔てなく教育を施すことができるよう、貴族のためにだけ門戸を開いていた王立学園を根本的に変革した。
「シュルツ家に、何があったのでしょう……」
夜会で感じた殺意、ディルク・シュルツ侯爵令息。話したいことがあると言っていたのに、地下室に閉じ込められたレイチェル様。
「……俺も行くぞ」
ふくらはぎに、トンッと軽い衝撃。
フェイが頭をぐりぐりと、私のふくらはぎに擦り寄せる。
「おそらく、災厄と関係あるだろう」
「え? どうしてレイチェル様が、捕まったことと、災厄が関係」
「ルルーシアは、薄々気がついているのではないか? 前回の人生の終わりに、何があったのか」
人生の終わりに、私たちを貫いた剣は、急に目の前に現れた。普通の剣ではない、それは魔法の剣。そんなことができるのは、魔術師ギルドでもごく一部の人間だけだ。
そんなこと出来るのは、リベラ殿下か、ディルク・シュルツ侯爵令息くらいだろう。
「魔術師ギルドが、怪しい。リベラは、幼い頃から何度も精神魔法の干渉を受けていた。セラフの召喚が早まらなければ、俺も気がつけなかっただろう」
「えっと、ちなみにアレス殿下は、いつセラフを召喚したのですか?」
セラフが姿を変えた腕輪を、父に渡した時には、もう召喚していたに違いない。
「ルルーシアの召喚した黒い剣を見た直後だよ。光魔法は、ルルの前では使えない。しかも無理に使えば、ルルが倒れてしまう……。必死で調べたな」
つまり、入学試験の後には、光の精霊と繋がりがあったってことですね?
前回の人生で、第一王子アレスが、私との婚約破棄直前に召喚したことを思えば、異例の速さだ。
「だから、前回は気がつけなかった。リベラは、罪のない令嬢を、貶めるような人間じゃないのに。信じることも、助けることすら、出来なかった」
……私も、公明正大なメインヒーローとして描かれていた、リベラ殿下が、悪役令嬢ルルーシアに向けた言葉には、違和感しかなかった。
「キュゥッ!」
「クロも、おかしいと思う?」
「キュッ!」
クロと名前をつけた竜は、フェイの次だとしても、不思議なほどにリベラ殿下に懐いている。
竜との因縁は、終わらないのだ。幸か不幸か。
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