表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/105

76 甘い空気と、脇役令嬢の危機。



「そろそろ、ルドルフ殿が乗り込んできそうだな……。名残惜しいけど」


「えっ、いくらお父様でも、王族が暮らす場所まで乗り込むような不敬は」


 ない。ないと思いたい。


「ありがとう、ルル。話を聞いてくれて」


 そういえば、アレス殿下は昔から、自分の生い立ちを話すことが、ほとんどなかった。


 だから、私はアレス殿下を産んだ時に、亡くなったという第二王妃様の話も、アレス殿下が私と一緒にいない間、どんな風に過ごしていたかも知らない。


「…………もっと、聞かせてください」


「楽しい話でも、ないよ」


 楽しい話でないというのなら、ますます聞かせて欲しい。


「聞きたいです。どうやって、冒険者クラス入学をもぎ取ったのかとか」


「ああ、あれは……」


 あとから聞いた噂によると、王国騎士団で、騎士団長と一騎討ちしたとか。


 本当の話だったのだろうか。もし、本当なのだとしたら、その勝負の結果は、どうなったのだろうか。


「百戦中、九十九敗だったけど、一度でも騎士団長に勝てたら、在籍を許すと、陛下は言ったからね」


 思ったより、ワガママの規模が、大きかった!

 勝手に冒険者クラスに、申し込んでしまった、私とは大違いだ。


 あの時の、やつれた父の姿が、瞼の裏に浮かぶ。

 悪役令嬢の運命から、逃げたい一心で入った冒険者クラス、たくさんの人を巻き込んでいたようだ。


「……なんで、そんな無茶をしたんですか」


 アレス殿下は、模範的な王子様だったと記憶している。我儘なんて言わないし、完璧で、いつも笑顔で……。


 それなのに、たった一つのワガママを通すために、たぶん騎士団全てを巻き込んだ大騒動だったに違いない。


「ルルと過ごしたかったからに、決まってる」


「そういえば、あの後会いにきてくれましたよね?」


「よく覚えているね。そうだな、ラベンダーのドレスが、愛らしくて、実技試験の時と違った意味でドキドキした」


 アレス殿下こそ、何年も前の私の服装まで、よく覚えてますよね?!


 そんなことを思えば、なぜか頬が染まっていく感覚がする。熱くなってしまった頬に、思わず両手で触れる。隠せるわけもないのに。


「……夜が更けてしまうよ。今ならまだ、ちゃんと送り届けてあげる」


「アレス殿下?」


 送り届けるというのなら、そんな風な目で見ないで欲しい。そばにいて欲しい、寂しいって言っているような目で。


「そばに、いて欲しいんですか?」


「そんな、一つしか答えがない質問しないで。ルルと結婚するまで、あと少しだから、我儘を言うのは、やめると決めているのに」


 この場所は、静かだ。静かで寂しい。

 もちろん、第一王子の私室に相応しく、全ての調度品は豪華だ。


 それなのに、なぜだろう。この部屋に、アレス殿下を一人にしたくなかった。


「……そんなことじゃ、すぐ俺に捕まってしまう」


「もう捕まってます」


「たぶん、俺とルルの間に、認識のずれがある。分かってるつもりだから、人の自制心を削るのはやめよう? ……それに、来客だ」


 えっ?! まさか本当に、父が迎えにきてしまいました?


 ノックの音が響く。アレス殿下は、扉のほうに進み出ると、鍵を開ける。


「リベラ、入って良いよ」


「……邪魔して申し訳ありません」


「リベラが、こんな風に部屋にまで来るってことは、よほどの重大案件だ。謝る必要がない。……それで」


 その後に紡がれた言葉に、私の思考は停止して、真っ白になる。


「レイチェルが、シュルツ侯爵家に戻った後、侯爵家の地下室に閉じ込められました」


 先ほどまで、夜会で華やかに微笑んでいたのに。


「お前、分かっていて止めなかったのか」


「……一時的に、魔法を封じられましたので」


 無表情のままのリベラ殿下が、上着を寛げて胸元を露わにした。細身に見えるのに、鍛えられているのが一眼でわかる。


 魔法の才だけに溺れたりしない、弛まぬ努力がそこに現れている。


 でも、それよりも一番に目に入るのは、真っ黒な爪痕のように首元から斜めに走る傷跡の一部。


 明らかに普通の傷ではない。


「……兄上なら、俺の封じられた魔力を、解除できますよね?」


「出来るが……。封じられた魔力は、解除できても、この傷は別だ」


「ええ、魔力を封じられていたので、遅れを取りました。こんな時、魔術師は無力です」


 自嘲を感じる笑み。だが、その瞳はギラギラとして、笑うなんてものとは、ほど遠い。


「この状態で無茶するなと、言いたいけど」


 アレス殿下が、光魔法を使う。

 その光は、眩いほど強く、力のコントロールが難しいのが見て取れる。


 確かに、この状態で戦い続けたら、体が壊れていくのは、間違いない。


「……義姉上がその状況でも、同じことを言えますか?」


 再び着衣を整えながら、リベラ殿下が、挑発的な笑みを見せる。


「はっ、俺なら全てを殲滅する。……後処理は任せろ」


 なぜか急に、第一王子アレスの俺様王子バージョンが降臨した?! ここにいたんですねっ?!


 えっ、この流れ、止めるの、私の役目ですか?


 でも、レイチェル様がピンチだと言うのなら、私も全力で証拠隠滅に協力しそうです。


「風の調……渡鳥」


 リベラ殿下の左側の肩だけに掛けられた、青いマントがバサバサと風になびく。その瞳が、紫の光を宿すと同時に、魔法による強い風で私のドレスのスカートまで、ぶわりと広がる。


 そういえば、メインヒーローは、無口で穏やかなのに、ヒロインのことになると手がつけられなくなる描写があったなぁ……。


 なぜか今、ヒロインじゃなくて、婚約者のことで、その状況になっているけれど。


 そんなことを思っている間に、リベラ殿下はふわりと浮かんで、勢いよく窓を開けて飛び降りた。


 この部屋は、最上階なのに……。


 窓から身を乗り出したけれど、すでにそこには闇が広がるだけで、誰もいなかった。


「あの、私たちも行かなくて良いのでしょうか」


「リベラは、前回の討伐で、竜の魔力を受け継いでいる。そして同じミスを二度としない。つまり、まともに戦えない俺は、足手まといだ。……それに、気になることがあるから」


 置いていかれまいと、アレス殿下のマントの裾を掴む。二人ともお揃いの白い正装なのに、アレス殿下の赤いマントは、両肩にかかっていて、その印象を変えている。


「とりあえず、そのドレスでは、動けないだろう。着替えておいで、ルル?」


 次の瞬間、私たちは、フリーディル伯爵家のエントランスにいた。


「……転移魔法なんて、無茶してますよね?」


「……っ、これくらいなら、まだ平気。ルドルフ殿と話してくるから」


 次回からは、動きやすいドレスにしようと、心に決めて私は慌てて侍女のローリエを呼び出した。


最後までご覧いただきありがとうございました。


『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 入学試験のアレス殿下sideありがとうございます♪ ルルがすごく可愛い〜 アレス殿下のいろんな面がいいですね(//∇//) 王族の仮面はカッコいいし、ルルを一途に求めるところは切ないし、「…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ