07 入学式と新たな出会い。
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桜のような薄桃色の花が満開に咲く中、新しい制服を身に纏って正門をくぐる。
無事に私は、特待クラスではなく冒険者クラスへの入学を果たした。
ヒロインの入学は、高等部になる15歳から。冒険者クラスに関しては、魔法や剣技の才能を見出され幼少期からの育成後、15歳には、ほとんどのものが冒険者や騎士学校、軍部への士官としてそれぞれの進路を選び学園を離れる。
ヒロインとは関わらずに済むだろう。たぶん。
「私は……生きる。そして誰も、巻き込まない」
しかし、問題が一つだけあった。
冒険者クラスに所属していても、希望の授業を別途受けることができる。
私とアレス殿下は、礼儀作法やマナー、歴史、外国語については必ず受けることが義務付けられた。殿下に至っては、兵法も帝王学も受ける必要がある。
「――――ここまで一緒なんだから、兵法と帝王学も受けてよ」
「えっ、貴婦人には必要ない……」
「ルルがそれを言うの?」
……貴婦人ではないと?! そして、反論ができない……?!
最近、かわいらしい笑顔で願い事をうまく叶えてしまうアレス殿下に、私は全く敵わない。ここから可愛らしさが失われて大人になると俺様王子が完成するのだろうか。
アレス殿下が俺様王子? 全く想像できないけれど?
……この可愛らしい王子様が、本当に、冷酷、俺様な小説の第一王子アレスと、同一人物なのだろうか疑惑が拭えない。
「第一王子の婚約者なんだから、帝王学も必要だし、冒険者になるなら兵法はきっと役に立つ」
「――――そうかもしれませんが」
「…………それに、僕がルルと一緒に受けたい」
「っ……おっ、おっ、お戯れを!」
「本気だよ?」
そう。たぶん、アレス殿下は私に興味がある。令嬢としては完全にベクトルがずれているのは理解している。それに、訓練をつけてくれる父があそこまで強いなんて知らなかった。
王立騎士団の正統派な剣術にはない、おそらく実戦で磨かれた剣術。
アレス殿下としても、もっと父に剣術や魔法を習いたいに違いない。だから、娘の私とこれからも仲良くしたいという姿勢を見せているのだろう。
ここで、殿下の不興を買うのは、断罪を避けるためにも良くないことよね?
「分かりました……。殿下の仰せのままに」
「強制じゃなくて、一緒に受けたいだけなのにな」
優しい殿下は、そんな声をかけてくれる。寂しそうな声に、良心がチクリと痛む。でも、いつか私は婚約破棄をされるのだ。
その日まで、少しでも不興を買わないように過ごす。それが処世術というものだ。
「そういえば殿下。新入生代表あいさつ、応援してますね」
「うん。なんだか緊張してきたな」
アレス殿下は、感情を極力表に出さないようにしている。たぶん、そのように教育を受けている。でも、私の前で見せる姿は年相応に見えることもある。
「失敗したっていいじゃないですか。失敗したところで命まで取られる訳じゃないですし。青春の一ページですよ」
「……青春の一ページ? そんなこと言うの、ルルだけだよ。ああ、君の父上もか」
「だって、私たちはまだ子どもなんですよ?」
「うん。そうかもね?」
そっと、アレス殿下から差し出された手を握る。私たちはまだ七歳の子どもなのだから。もっと、たくさんのことを経験したって、失敗したっていいのだと思う。
第一王子としての重圧、義務、求められる姿。
アレス殿下は完璧だ。でも、その完璧さの中に閉じ込められているものに、私は気がついてしまったから。
まあ、これから冒険者クラスでともに強敵と戦う仲間としてなら、仲良くしたっていいのだろう。
アレス殿下は第一王子。冒険者になることはできない。
私は自分に言い訳する。今は、仲良くしても良いのだと。婚約は円満解消を目指しているのだから。
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