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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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68 悪役令嬢の再来 1



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 竜の子どもは、元気に育っている。

 そして、今日の私は、ドレスアップして夜会に参加予定だ。


 ……王太子妃になるつもりがなかったから、夜会の参加は久しぶりだ。


 コルセットを締めるのも、久しぶりで、侍女のローリエにギュウギュウ締め付けられて、泣きそうになった。


「お美しいです! いつもの冒険者姿も凛々しく素敵ですが、ドレス姿は格別です!」


 褒めすぎる侍女を微笑ましく見つめ返す。


 今まで、伯爵令嬢の専属侍女なのに、冒険のための道具の管理などしてもらって、王宮に行く時くらいしか、それらしい仕事はさせてあげられなかった。


 考えれば、考えるほど、伯爵令嬢付きの侍女のお仕事ではなかった。申し訳なさすぎる。


「それにしても、見事なドレスですね」


「そうね、お父様……いくら使ったのかしら」


 今回のドレスは贅の限りが尽くされている。


 アレス殿下が、ドレスを贈りたいと言ってきたのに、「あと少ししか買ってあげられないのに、俺の夢を奪うな!」と、父が頑なに譲らなかったのだ。


 キラキラ光るビーズは、全部宝石で出来ているし、所々魔石も混ざっている。魔石って、ビーズに使って良いものなのだろうか?


 ドレスに使われているのは、王国の北端で織られた希少な生地だ。S級冒険者として、以前フェンリル退治に行った時、お礼として貰ったらしい。


 ブラウンの落ち着いた色合いだけれど、歩くたびに生地が艶やかに、ビーズがキラキラ煌めく。


「でも重い……これでは戦えないわ」


 扇子をぱらりと広げて呟く。


「おいおい、夜会だからな。戦い方を間違えるなよ?」


 なぜか心配そうに、呟くフェイ。


「ご心配なく。貴族令嬢の夜会での戦い方を、見せて差し上げます」


「心配だ。何かズレている気がする……。俺としては、おそらく社交については、アレスに任せた方が良いと思う」


 そんなことないと思う。悪役令嬢ルルーシアの記憶には、全ての貴族の名前と顔、出身地など完璧に網羅されている。


 立ち居振る舞いも完璧なはず。

 思わず、腰に手をやって、剣を掴もうとしてしまう以外は。そう、ふんわりしたドレスの中に忍ばせる短剣を用意しよう。そうしよう。


「……やっぱり、何かが間違っている気がしてならない」


 ため息を吐きながら、フェイが私から離れていく。


 でも、夜会が戦場というのは、事実だわ。


 ……悪役令嬢ルルーシアを、追い詰めて断罪した相手も、きっと夜会にいるに違いない。


「ルルーシア……。美しいな。取り敢えず、王太子殿下の色合いでコーディネートされるのを阻止できて満足だ」


「え? 流石に、アレス殿下もそんな恥ずかしいこと」


 振り返ると、正装に身を包んだ父がいた。


 ふと、悪役令嬢ルルーシアの記憶が蘇る。そういえば、贈られてくる宝石は、全てサファイアだった。


 よっぽど、サファイアがお好きなのね。って、思っていたのだけれど、まさかね?


 え? 瞳の色の宝石だから、贈ってきていたの? え、アレス様、そんな素振りひとつも見せなかったじゃないですか。


 混乱する私をよそに、父が続ける。


「それから、夜会に行く前に伝えることがある。……リリーベルは、言っていた。シュルツ侯爵は、好きじゃないと」


「……レイチェル様のお父様ですか?」


 王立学園長は、シュルツ侯爵の兄だ。

 レイチェル様には、良くして頂いている。


 この間、学園で会った時にも、リベラ殿下が王位を継がなくても、そばにいることを誓ったと言っていた。


 その言葉に嘘がないことは、私には分かる。


「あの、好きじゃないというのは?」


「リリーベルは、人の善悪が分かる不思議な力を持っていた。……好きじゃないというのは、そういうことだ」


「…………悪い人、ということですか」


「いや、俺たちにとっては、悪い人ということだろう」


 確かにそうなのだろう。母の仇だった竜でさえ、私たちにとって、敵であるというだけだったから。


「ルルちゃん、俺はハッキリ言って、貴族社会は好きじゃない。S級冒険者でいられなくなった今、ただの成り上がりだと思う人間がほとんどだろう」


「お父様……私は、誰よりもお父様を尊敬しています」


「嬉しいよ。だが、そのことを決して表に出すな。俺は何を言われたとしても、気にしない。ルルーシアもそうしろ」


 ……うーん。お父様が悪く言われても、表に出さないなんて、出来るだろうか?


「表情にほんの少しすら出さずに、微笑んだまま裏からやり返すくらいでなければ、アレスの隣には、立てないだろうからな」


「……承知いたしました。お父様」


 私は、扇子で口元を隠して、悪役令嬢ルルーシアとしての笑顔を見せた。



最後までご覧いただきありがとうございました。


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