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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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69 悪役令嬢の再来 2



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 今夜の夜会は、ざわめいていた。

 それぞれの思惑により……。


 今回、十数年ぶりに討伐された竜。


 英雄とも目される、第一王子アレス。

 そして、社交界にはほとんど顔を出すことがなかった、S級冒険者の一人娘。フリーディル伯爵令嬢。


「今回の討伐にも、S級冒険者ルドルフ殿の力添えがあったらしい。引退とは惜しいな」


 そんな声が聞こえる一方。


「フリーディル伯爵代行に、取り入った成り上がり冒険者の娘」


 父を貶めるそんな声も聞こえてくる。


 ……耳が良くなったみたいだわ?


 父の腕に片手を添えたまま、扇子で隠した口元を、片方だけ上げて歪める。


 竜の魔力を得たからだろうか。それとも、フェイを呼び出したまま、その力を借りて闇の魔力をコントロール出来るようになったからだろうか。


 それとも、母から受け継いだ力なのか。


 母が、あの人好きじゃない。と言っていた言葉の意味がわかる。


 悪い人も確かにいるけれど、私に敵意を向けている人が、悪い人とも限らない。私を憎む人を、好きになれないだけ。


 特に今、目の前にいるこの人は……食えない。


「フリーディル伯爵令嬢ルルーシア様。いつも、レイチェルが仲良くして頂いて光栄です」


「シュルツ侯爵様。ご無沙汰しております。お声をかけていただき、こちらこそ光栄ですわ。レイチェル様には、本当に良くして頂いております」


 何故か、私のことを上から下まで、品定めするように見つめてきたシュルツ侯爵。それは、本当にさりげなくて、冒険者として命を懸けてきた経験がなければ、気がつかなかったかもしれない。


 ――――好きじゃないかもしれない、この人。


「本当に……。フリーディル伯爵代行が、目の前にいるようです」


「……え?」


 そういえば、先ほどから父をいないものとして扱ってないか、この人。好きじゃない。


 一歩前に出そうになった途端、父にグイッと引き寄せられた。


 その瞳が、一瞬遠い過去を懐かしむように揺らいだ気がした。その直後には、冷酷だと噂される氷みたいな表情に戻ったけれど。


「ああ、失礼いたしました。フリーディル伯爵、輝かしい活躍、耳に入っております。冒険者の活躍は、王国の誉です」


 ……二重音声で、冒険者風情がって聞こえてきた?!


「シュルツ侯爵、王国の力となることは、喜ばしく、当然のことですから。私もシュルツ侯爵のますますのご活躍を願っております」


 ……お前こそ王国に貢献しろよって、やられっぱなしではないのですね、父?!


 それにしても、どちらかと言うと、直球勝負なのね。何となく、シュルツ侯爵は、悪い人ではない気がした。ただ、好きじゃないだけで。


 そんなことを思いながら、会場のざわめきが、急に静まり返ったことに気がつく。


 ざわめきは、端から順に消えていく。


 その方向を振り返って、私は思わず息を呑んだ。


「アレス様……」


 こういった場所で、こんな風に入場してきたアレス殿下を見るのは、今回は、初めてだ。だからなのか、王族としての少し冷たく見える笑顔のままのアレス殿下が、第一王子アレスと重なる。


 冷たい笑顔、アレス様は、その笑顔を崩さないまま、私の前に進み出ると、婚約者の義務とばかりに、いつも一曲だけ私と踊ってくれた。


 今回も、やはりそうなのだろう。


 諦めにも似た感情を、思いのほか持て余しているうちに、アレス殿下が、何故か足早に近づいてくる。


 私は、気を取り直し、王族を前にした時の深い礼で、出迎える。


 その瞬間、会場がさらに静まり返った。


「ルルーシア、今宵も美しい。まるで、深き太古の森にいたという、光の精霊のようだ」


 そのまま、私の手の甲に口づけを落としたアレス殿下が、「俺の色に染められなかったのは残念だけれど」と言って、満面の笑みで微笑んだ。


「…………アレス殿下こそ、まるで黄昏の空から太古の森に降り立ったという、闇の精霊のようですわ」


 色合い的には、私たちは真逆だろう。それでも、この言葉に会場が騒めく。そう、私たちが、光と闇の精霊を召喚したという噂を、認めたとみなされただろうから。


 ――――何とか答えきったけれど、動揺してしまったわ。アレス殿下は、こんなところで、そんな風に笑うなんて、何を考えているの。


 けれど、目の前にいる人は、確かに第一王子アレスではなく、私の大好きなアレス殿下なのだと、思い知らされるのだった。


最後までご覧いただきありがとうございました。


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