67 モフモフと陽だまり。
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フェイは、その姿のままでも、私からの闇の魔力を全部預かって、生活できるようになったらしい。
全部、闇の魔力を持っていかれているにも関わらず、竜を倒したおかげで手に入れた、竜の魔力のせいなのか、体調はすこぶる良い。
ソファーは、隣にいるモフモフの触感とともに、日が当たり、幸せをカタチにしたような空間になっている。
「それにしても……」
「キュウウゥ!」
フェイと竜の子どもは、神話時代の因縁なんてなかったかのように、仲が良い。
「こらっ、貴様! 偉大な精霊の頭の上に乗るとは何事だ!」
「キュイッ?」
――――普通の感覚だったら、長年愛する人と自分を引き裂いた竜のこと、憎くならない?
「ねぇ、セラフはフェイのどこを好きになったの?」
「はっ? どこが好きって…………」
ソファーに丸まったまま、セラフはしばらく、無邪気に走り回るフェイを見つめていた。
「…………特に突出したものはないわね? なぜ、好きなのかしら」
クルクルと子竜と走り回るフェイが、チラリとこちらを見た気がした。確実に、こちらが気になっている。
「…………そうね。でも、あんな風に、ずっと敵だと思っていた竜と、仲良く過ごすなんて、私にはできないわ。ああやって過ごしているのを見せつけられるから、許してしまいそうになるだけで」
ノソノソと、子竜を頭に乗せたままのフェイが近づいて来る。
「こいつは、アイツらとは違う個体だ。魂も違うし、俺たちの敵ではない」
「…………そういうところだわ」
なるほど、そういうところを愛しているのですね! 私は思わず、ニヨニヨとしてしまう。
「違うから! あんまり、私のことが好きだって縋るから、仕方なくっ!」
「素直じゃないな……。まあ、そんなところも含めて、俺はセラフのことを可愛く思うのだが?」
「はっ?! なっ、なななな、何言って」
「一緒にいられる幸せを、噛み締めているんだが、セラフは違うのか?」
そういえば、セラフも人型になることができるのだろうか?
金の髪をした可愛い系のツンデレ美女が、真っ赤になってぷるぷる震えている幻影が見えた気がした。私としては、ぜひツインテールでお願いしたい。
「ちっ、ちっ、違わないわよ!」
明後日の方を向きながらも、返す言葉はあまりにも可愛らしく。
あー、ツンデレ尊い。
きっと、フェイは本当に、セラフのこんなに可愛いところも含めて、大好きに違いない。
「おい、その顔やめろ」
「えぇ? 何のこと?」
「普段俺が、アレスとお前の雰囲気にどれだけ耐えていたと思っている」
ああ、確かに剣の姿をして、いつも一緒にいたフェイには、あんな台詞とかこんな台詞とか、全部聞かれていたってことなのね。
「あ、ほら。俺を苦しめてきた犯人が来たぞ」
日差しが降り注ぐたびに、キラキラと煌めく髪を揺らして、こちらに微笑みかけるアレス殿下。
口を開けば、どんな言葉が飛び出すかなんて、想像するだけで赤面しそうだ。
「俺もそこに、座りたい」
「どっ、どうぞ?」
ため息をついたセラフが、トトッとフェイのそばに近づき、その体に擦り寄る。
二匹と一匹は、陽だまりの中、丸まってお昼寝をすることにしたらしい。
「…………結婚したら、毎日こうして過ごしたいな」
「それも、良いですね」
きっとアレス殿下は、忙しすぎて、毎日は難しいと思うけれど。
「王太子妃ともなれば、結婚式も盛大にせざるを得ないし、まだまだ準備に時間がかかるなんて……。待ちきれない」
確かに、王太子の結婚式となれば、国の一大行事だ。多分それは、災厄が落ち着いてからになるのだろう。
「結婚しなくても、膝枕くらいならしてあげますよ」
「そう? 夢みたいだ」
アレス殿下は、疲れていたのだろう。
ウトウトと微睡みはじめた。
キラキラ輝く、陽だまりの中の細い髪をそっと撫でながら、私も幸せを噛み締めた。
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