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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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65/105

65 それは、あなたの隣だから。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



「う……」


 窓から差し込む光は、ずいぶん高くなっているみたいだ。


 その光が降り注ぐ窓際で、本を読んでいた人が、パタンと音を立ててページを閉じると、こちらに向かってくる。


「起きた? 今回は、ずいぶん寝坊だね」


「アレス殿下……」


 光の中で、髪の毛が透き通る金色に輝いている。なんて綺麗なんだろうと、まだ寝起きの頭で考える。


 それにしても、光の魔力を抑えてなお、なんて規格外の魔力。


 冒険者を続けて来た私は、魔力の質や量を察することができるようになっている。


「あの、体は大丈夫ですか?」


「それは目が覚めたばかりのルルに、俺が言いたい台詞だよ。……大丈夫?」


 案ずるように、私の頬に手が触れられる。

 その手がいつもよりも、ずっと冷たい気がして、思わずピクリと震える。


 ここで、やっぱり何かおかしくないかと聞いてみても、上手くはぐらかされるに違いない。


「大丈夫です。無事かどうか、確かめますか?」


「そう、だね……。触れさせて」


 そっと抱きしめられて、背中を撫でられる。


「怖かった」


「え?」


「ルルが、もう一方の竜がいる場所に行ったと気がついた時、一瞬また、あの魔法を使うことを想像したんだ」


 あの魔法といえば、今も私にまとわりつく、魔法の鎖のことだろう。


「記憶を失ったとしても、何度でも好きになる。でも、今のルルは、もうどこにもいないかもしれない」


「そう、ですね。私も怖かったです。……アレス殿下が、私のことを置いて行ってしまうから」


「ごめん、それでも俺はルルを守りたい。だから、そばにいて。結婚して、ルルーシア」


 黙って頷いた私に、そっと青いサファイアの指輪が捧げられた。


「えっ、指輪?! どうして」


 この世界では、結婚の申し込みの時に指輪を捧げたりしない。たくさんの贈り物を捧げて、その中に指輪があったとしても、特別な意味を持つわけではない。


「愛してる」


 それなのに、なぜかアレス殿下は、私の左手の薬指に、その指輪をそっとはめた。


「ほら、ルルも俺の指にはめてくれるかな?」


「はっ、はい」


 お揃いの指輪は、アレス殿下の分には紫の石が嵌められている。


 金の髪と青い瞳。紫の髪と金に近い瞳。まるで、私達みたいな色合いのお揃いの指輪だ。


「……総ギルド長は、ルルと同じ世界から来たって聞いたから、結婚の申し込み方法を教えてもらったんだ」


「っ……アレス殿下」


 感動のあまり、号泣する私を、どこか嬉しそうに見つめるアレス殿下。


「……まだ、何も終わってない。それでも、ルルと一緒にいる未来だけは、手放せない」


「そういえば、S級冒険者になったんですよね? 私達……」


 その瞬間、アレス殿下が困ったように笑ったから、私は緊張に体全体が強張るのを感じた。


「ごめんね、約束守れなかった。俺と、ルドルフ殿は、冒険者を続けることが出来ない」


「えっ……?! どうして」


「カトルとルルーシアは、S級の申請が通ったよ。アイシラは、冒険者ではなく、やはり聖女を目指すと言って辞退したけど」


「理由を……」


 そっと触れた指先は、やっぱり気のせいなんかじゃなく冷たい。


「その前に、キスして良い?」


 頷く以外の選択肢がない私に、柔らかい唇が、啄むように何度も触れる。最後に、長く口付けて、息が切れた私は、ようやく解放される。


「竜二匹を倒したせいで、受け入れた力に体がついてこないんだ。たぶん、戦い続けるのは、もう無理だから」


 つまり、戦うことに体が耐えられないってこと?


「……竜の力を得たリベラは、魔術師ギルドの最高責任者に就任した。王位継承権放棄、先を越されてしまったよ」


「へえぇ……っ?! えっ、アレス殿下」


「今すぐでなくて良い。S級冒険者として生きていくか、俺の隣で王太子妃になるか、決めて。どちらにしても、俺にはルルーシアしか、いないけれど」


「王太子妃、なります」


 シーンと、耳が痛くなるほどの静寂が、私達を包み込む。


 ――――あれ? 何かおかしな返事をしたかしら? あ、望んでいた答えと、違ったかしら。


「えっ、あのっ?! 即答?! え、都合のいい夢の続きかな」


「アレス殿下の隣にいたいです。なんでもするから。……私では、役に立てませんか?」


 まあ、確かに戦う力では一流になっても、貴族令嬢としての私は……。


「なんでもするなんて言わないで。ルルーシアの全てが、今すぐ欲しくなる。……外堀埋めてとか、説得どうしようかとか、悩んでいたのに。そんなふうに、即答されるなんて」


「……あの」


「うれしい」


 抱きしめられたまま、冒険者が好きだったのは、結局アレス殿下がそばにいてくれるからだったのだと、認めるしかなかった。


 王太子妃としての重圧なんて、悪役令嬢ルルーシアとして過ごして来た時から、完全に理解している。


 それでも、その場所に立つことを決めるのは、それがあなたの隣だからで。


 結局のところ、近い未来にS級冒険者になるのは、物語の通り、カトルだけらしい。


「S級にならなくても、ルルは俺が守るから」


 そんなこと、聞くまでもなく私は知っている。

 災厄の日は、私の十八歳の年に起こるという。


 それでも、なんとかなるような気がした。

 私の周りの人たち、そしてアレス殿下がいてくれる限り。


 


最後までご覧いただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アレス殿下のプロポーズ素敵でした♪ ルルの世界に合わせてくれるなんて〜(//∇//) そんなスパダリ殿下にクリスマスプレゼントを贈りたいです(๑˃̵ᴗ˂̵) 王太子妃即答のルル!カッコいい…
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