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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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51 物語の強制力 3



 それにしても、レイチェル様が、第二王子の婚約者? 聖女になったアイシラ・クリスタルと、寡黙だけれど、正義感に溢れる第二王子が結ばれるのが、メインストーリーだったのでは?


「はっ……まさか!」


「どうしたの、ルル?」


「悪役令嬢不在の穴が、まさかレイチェル様に?!」


「…………まさか、また何か画策してる?」


 少しだけ、アレス殿下の顔色が変わって、不安げな表情が覗いたことに私は気が付かなかった。


 だって、他に考えようもない。


 今日は、私たちに合わせてくれたのか制服を着ていたけれど、基本的に赤いドレスを好んで着ていて、クルクルゴージャスな縦ロール。


「えっ、悪役令嬢レイチェル?!」


 いや、物語の中盤で、婚約破棄と断罪、第一王子アレスの死により、そこから先の物語は、惰性で最後まで読んでいた部分が大きいのだけれど。


 本当は、第一王子アレスが死んでなかったという展開を期待してしまったのだけれど!


 カツカツカツと、どこか不安を煽る足音が聞こえてくるようだ。その足音は、私の真横に立ち止まり肩を叩いた。


「ルルーシア・フリーディル」


「ひっ?!」


「――――ルルーシア・フリーディル。授業中だ」


 目の前に、ペリドットみたいなオリーブグリーンの瞳が映る。教室内に、笑い声がどっと溢れた。


 しまった、シーク先生の授業中だった!


 恥ずかしさに赤くなってしまった両頬を、思わず両手で隠す。


「もっ、もう訳ありません。シーク先生」


「はぁ。あとで、職員室に来るように」


 そう言って背中を向けたシーク先生。


 ……ちっ、違うんです。レイチェル様のピンチなのです!


 そう思いながらも、私は諦めて教科書に目を移す。その日の授業は、どうしても頭に入ってこなかった。


 チラリと、アレス殿下に目を向ければ、シーク先生の方を向いて、真剣な顔をしていた。


 ――――真面目に取り組もう。


 アレス殿下を見習って、私も授業に集中する努力をすることにした。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 放課後、人影もまばらな教室。

 仕方がないから、シーク先生の部屋を訪れて、叱られようと私はゆるゆると席を立ち上がった。


「ねぇ、ルル」


「アレス殿下? そう言えば、今日は最後の授業まで残っていたんですね」


 第一王子としての執務に忙しいアレス殿下は、多忙すぎて最近全ての授業に参加するのは困難だ。


 私も、フリーディル伯爵家の、諸々を父に押し付けられているので、多忙は多忙だけれど、間違いなくアレス殿下は、働きすぎだと思う。


 夢の中のアレス様も、いつも忙しそうだった。


 第一王子アレスは、多忙な執務だけでなく、ルルーシアを救うために水面下で戦っていたのだと、今ならわかるのに。


「……気になることがあってね。俺も一緒に、シーク先生のところに行くよ」


 アレス殿下も、一緒に怒られてくれるとでも、いうのだろうか。時々、妙なところで過保護だなと、アレス殿下を見つめる。


 その割には、その表情は妙に深刻だ。

 ただ、怒られに行くようには見えないのだけれど?


 この後、物語の強制力のせいなのか、この時点では揃うはずのない配役が、揃ってしまうのだけれど……。


 差し出された手を、ギュッと握り締めれば、私の不安は甘い綿菓子にフンワリと包まれたように、見えなくなってしまった。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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