表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/105

45 第一王子と悪役令嬢 1



 久しぶりの、父の腕の中は、やはり安心できる居場所だ。こんなにも、安心できる場所があったのに、どうして悪役令嬢ルルーシアは、そこに助けを求めなかったのだろう。


 そこだけは、ずっとずっと、私の中で大きな疑問だった。そんなことを思いながら、私は夢の中へと落ちていく。


 深層に沈んでしまった、悪役令嬢ルルーシアの記憶の中へと。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 少しの間、気を失っていたらしい。

 何処かから、「運命に抗うか?」という声が聞こえた直後に、周囲は闇に飲まれた。


 体から溢れた闇の魔力が、抑えきれずに溢れかえってしまったことまでは、記憶しているけれど。


「……まさか、これ私がやったの?」


 魔力がこんなにあるなんて知らなかった。

 こんなふうに、周囲を廃墟にしてしまうなんて。


 魔力判定は、秘匿して行われ、闇の魔力が少しあることは父から聞いていたけれど。


「無事か? ルルーシア。急いでルドルフ殿のところに帰ろう」


「アレス様……。私」


 いつも微笑んでいるだけで、決して感情を表に出したりしないアレス様が、珍しく焦りを滲ませていた。そんな顔をさせているのが、自分の引き起こした惨事であることに、私は思わず身震いした。


「今は何も考えなくていい。きっと何か手立てはあるはずだ」


 そう言って、私を支えて立たせてくれようとしたアレス様が、「……まさか、早すぎる」と、呟いたあとギリッと音がしそうなほど、奥歯を食いしばった。


 まるで準備されていたみたいだった。

 集まった騎士たちの手により、私の体は、あっという間に拘束される。


 ーーーー怖い。


 でも、私は震えを抑え込んで、「第一王子の婚約者に対する扱いではありません。誰の差金です?」と、出来るだけ冷たい瞳で言い放った。


「さすが、闇の魔力に魅入られた令嬢だけある。これだけの事態を引き起こしておいて、そんな不遜な態度でいられるとは」


 そう言って、私を見つめた男性は、茶色の髪に紫の瞳、そしてどこかアレス様と似ていた。


 その後ろにいるのは、魔術師ギルドの次期最高責任者、シュルツ侯爵家の長男……。


「リベラ・ロレンディア第二王子殿下?」


 彼は、小説のメインヒーローのはずだ。そして二人は、魔法に関しては、この王国の最高峰に位置する。


 こんなところで、ルルーシアと接点があったのだろうか?


 どこからか、「真実を見据えろ。抗うために」と声がする。ほんの少しの違和感。だけど、そんな不思議な思考に集中する暇もない。


 そう、高等学院に進級直後に私が起こした、闇の魔力の暴発。幸いなことに、人的な被害はなかった。まるで、仕組まれたかのように、周囲に人はいなかった。


 けれど、その直後から、私の運命は。


「……ルルーシアを離してもらおうか。闇の魔力に関しては、王家でも光の魔力に継ぐ機密事項のはずだ。なぜ、こんなにも大事にする、リベラ」


「第二王妃の息子であるあなたこそ、今回のことからは退いてください。正妃の息子である俺が、扱うべき事案のはずです」


 二人の言葉の応酬の後、ゆっくりとアレス様がこちらを振り返った。

 その瞳が、何かの激情を押し隠すように細められた。


 その唇が、「愛している」と音を立てずに震えて、私のことを安心させるように微笑んだのは、たぶん私の願望がそう見せたのだろうけれど。


「……悪いが、この件は俺の預かりにしてもらえますか?」


 振り返ると、父が立っていた。


 おそらく、長距離を駆けつけたはずなのに、息を乱すことすらない。


「伯爵家程度で」


「……いいえ、先日復帰いたしましたので、今はS級冒険者ですよ。王国だけでなく大陸全土の安全が脅かされる時、S級冒険者に与えられた権限は、陛下の次に優先される。……それとも、ここで戦うか?」


 そんなふうに、その力を使ってはダメ! 

 ……巻き込まれてしまうから。


 そう思うのに、動くことのできない騎士達の間に割り込んだ父が、私を軽々と抱き上げ、微笑みかけた。


「俺の力を使えば、闇の力を抑えることができる。一番の適任のはずです。……お許しいただけますか、アレス・ロレンディア殿下」


「ああ、ルドルフ殿に任せよう」


 けれど、私が周囲を廃墟にしてしまったことで、ルルーシア・フリーディル伯爵令嬢が闇の魔力を持つことは、周囲に知れ渡ってしまった。


 再び王族としての仮面をかぶってしまったアレス様。この出来事の後、その笑顔を見るのは、もう取り返しがつかなくなった、あの時、たった一回だけだった。

最後までご覧いただきありがとうございます。


『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ