43 たとえこの目で見たとしても。
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「――――さて、そろそろ寝たふりはよせ。いくら魔力を完全に枯渇したからといって、動けなくなるほど柔に鍛えてはいない」
「……お見通しでしたか」
「当たり前だ。アレスのしぶとさは、よく知っている。……学園の方から感じた闇と光の混合魔術。発生源は、お前で間違いないな?」
「ええ……。たしかに俺です」
「思い出したのか」
「……おそらくルルーシアがまだ、思い出せていないことも含めて、全て」
「ルルーシアの運命を、こんなにも複雑に絡み付かせてしまった原因は、やはりお前か。……分かっているな? このままでは、守るなんて叶わない。表に出ろ」
私が、フェイとの感動の再会をしていたその頃、父とアレス殿下は、一触即発の雰囲気で向き合っていた。
そんなことを知らない私は、フェイから真実を聞くのに必死になっていた。
父とアレス殿下が、何をしようとしているかなんて、知らないままに。
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「……ずいぶん、久しぶりに会話するな。ずっと一緒に過ごしていた気もするが」
「そうだね……。えっと、単刀直入に聞くね? フェイは、創生神話の中に出てくる、闇の精霊なの?」
「本当に、真っ直ぐでルルーシアらしいな。少しは、交渉術というものを学んだほうがいい。まあ、答えは是なのだが」
「……ということは、アレス殿下がこの先呼び出す精霊は」
ブルルッと、フェイがその体を揺らした。
どこか、ピンと尖ったその耳が、緊張を表しているみたいだ。
「もう、会うことなどないと思っていたのだが」
創世神話では、闇と光の精霊は、愛し合った結果、力を失って他の属性の精霊がこの世界に生まれたとされている。
闇と光の精霊は、共にいることができない。
闇と光の魔力の持ち主が、一緒にいると魔法が使えなくなるということは、光と闇の精霊を同時に召喚出来ないということなのだから。
「フェイが、剣の姿でいたら、もう一度会えるってこと?」
「……そうだな。永遠に出会うことはない運命のはずだったのに。ルルーシアが運命に争うせいで俺たちの運命にも綻びが生まれたのか。しなくても良い期待をしてしまう」
どこか一点を見つめるフェイは、あまり嬉しそうに見えなかった。
ーーーーどうして? 闇の精霊は、光の精霊を愛しているのではないの?
擦り寄ってきたフェイは、それ以上答える気がないようだ。そもそも、大事な思い出に土足で踏み込むなんて、してはいけないことだ。
私は、一旦その問いは、飲み込むことにした。
「とりあえず、ルルーシアは、自分が生き残ることを考えた方がいい。たぶんアレスは、全て思い出しただろうが、お前はまだだろう?」
「え?」
そういえば、たぶんこうやって、この世界に来てやり直していることが、第一王子アレスの魔法によることはわかっても、私は全てを思い出せたわけではない。
「その鎖が、そんなにはっきりと表に出てきてしまっては、もう後戻りなんてできない。他の世界に生まれ変わったお前が、この世界に引き戻されてしまったように」
「鎖? こちらの世界に……引き戻された?」
「ああ、それでも俺は、冥府の門から引き戻される直前問うたな? その鎖を見ても、あの時の決意はまだ変わらないか?」
ふと、両手を上げてみれば、ジャラリと音がした。足にも絡まったままの光と闇の鎖は、私から自由を奪ってしまうみたいだった。
「ルルーシアが、気がつかなかっただけで、アレスと魂の深い部分でそうやって繋がれている。……嫌悪感はないのか?」
全て、アレス殿下が引き起こしたこと?
普通に考えれば、平和な世界で過ごす時間を奪われて、再び悪役令嬢として生きることを余儀なくされたなら、怒ってもいいのかもしれない。
「アレス殿下も、同じように繋がれてしまったのですか?」
それなのに、私の中の、悪役令嬢ルルーシアが、笑っている。
そして、たぶん私も。
「その顔が答えか。……仕方がない。俺たちみたいになるなよ」
「フェイ?」
そのことについて、追求しようとした瞬間、フェイが今までにないくらい慌てた様子で、先ほど見ていた方向へ体を向ける。
「……ルルーシア、一つだけ、俺のわがままも叶えてくれ」
私も感じたその予感は、たぶん正しい。
このあと私は、何日も寝込むことになる。
フェイを止めなければ、それは現実になる。
ーーーー迷いなんて、ない。
「フェイは、私の運命に一緒に抗うって言ってくれた。それなら私だって、フェイの運命に一緒に抗うから!」
「……すまない」
走り出したフェイの後を追いかける、追いかければ追いかけるほど、近づけば近づくほどに、魔力がすごい勢いで流れ出していく。
私は必死になって、魔力の流れを最低限にするよう抑え込む。いつも私を助けてくれるフェイが望んでくれた、たった一つのお願いくらい、なんとしても叶えたいから。
――――それにしても、この魔力は、アレス殿下だわ。完全に魔力を使い切っていたはずなのに、なんて強い。
たぶん、辿り着いたら今度こそ戻れない。
それでも私は、迷うことなく、フェイの後ろを追いかけていった。
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