04 父と学園長が密談しているようです。
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王立学園の学園長室。そこには学園長が一人で待っていた。年齢不詳の父と比べて、学園長はイケオジという言葉が良く似合う。
「――――お久しぶりです。学園長」
「ああ、久しいな。ルドルフ……。お前が貴族になると聞いた時には驚いたが、上手くやっているようだな。だが、娘のルルーシアは、やっぱりあれか? 彼女に似たのか? それともお前に似ているのか。まさか実技試験に参加するとはな」
「――――そうかも、しれません」
「血は争えないということか。ところで、魔力測定試験を行う前に倒れてしまったからな、特例として今のうちに受けてもらえるか。ルルーシア?」
特例で受けさせてもらえることに感謝しつつ、高価な測定機に手を置く。
その瞬間、黒い闇が部屋を包み、右も左もわからない状態になった。
どうしようかと、困惑していると暖かい父の手に掴まれて、気がつくと何もなかったかのように室内に立っていた。
「ふぅ。このことは、口外しないでいただけますか?」
「あ、ああ……。まさかここまでとは。……大丈夫なのか? ルドルフ」
「――――この程度であれば。……王家にも話していないので、まだ詳しく話すことはできないのですが、ルルーシアは精霊使いです」
「まさか」
真剣な顔をした父と学園長に見つめられる。年齢不詳の色気がある父と、イケオジの学園長にそんなに見つめられたら照れてしまう。
「―――闇の……精霊使い。聞いたことがないぞ」
「俺は……現役時代に一度だけ」
「そうか、お前でもそのくらいの情報しかないのか」
続くかと思われた二人の会話は、しかしたくさんの足音に遮られた。
「来たか……それで、実技試験を受験する際にルルーシアが提出した進路希望。今なら取り下げることも可能だが。まさか第一王子まで冒険者クラスに希望を出すなんてな。貴族連中が騒然としているぞ」
「――――進路は自分で選ばせたいと考えています。ましてや、この素質……王国の損失ですよ」
「それは……そうだが」
そういえば、実技試験を受ける前に冒険者クラスへの進路希望を出したのだった。そのことについて、目が覚めたあとも父からは一言もなかった。
ところで不穏な言葉が聞こえた気がした。
あれ? 断罪が回避で来たらそれでよかったのに、なんだか余計なことをしたのかも?
だって、殿下までついてきてしまうなんて想定外だ。まさか、あの殿下がそんな我儘を言うなんて思わなかった。
それなら、普通に特待クラスから冒険者を目指した方がよっぽど現実的だ。
慌てながら「取り下げてもいいです!」と言おうと思ったのに、ドアは開いてしまった。すでにタイミングを逸してしまったらしい。
父と学園長が黙ったまま膝をついて頭を下げる。父はともかく、侯爵家の現当主の弟で、この国の学業の最高峰に位置する学園長がここまでの最敬礼をする相手なんて、数えるほどしかいない。私もあわてて、深い礼をする。
――――まさか。
「今日は友として話をしに来た。顔をあげてくれ。ルドルフ」
えぇ。父?! この人やっぱり国王陛下ですよね? 国王陛下とお友達ってどういうことですか?! 慌てて父を横目に見るけれど、その表情は……。え? 笑っている。この状況で不敵な感じに父が笑っている!
「じゃ、そうさせてもらおうかな? アベルは息子の進路聞いたんだろ?」
陛下を守る近衛騎士たちがざわつくのも構わずに、陛下に対してため口で話しかける父。いくら何でも、友と言ってもらったからってそれはないと私でも思う。だが、国王陛下は少し口の端をあげただけで、気にすることもなく話し出す。
「そうだな……息子からお前の娘と同じ進路に進みたいと駄々をこねられてな。しかし、王族は特待クラスに進むのが慣例だ。とは言っても、息子の初めての我儘くらいかなえてやりたい気持ちもある」
「申し訳ありませんが……娘の進路を譲ることはしません。うちの娘も我儘を言うのは初めてなものでね?」
「そうか。王国の剣……娘は王国の力となりそうか?」
「いいえ。娘には自由にさせます。まあ、結果として王国を救うことだって否定できませんが」
二人がどちらともなく、さも愉快だというように笑い声をあげた。それを周囲の人間が、唖然とした表情で見つめる。学園長を除いて。
「ふはっ。俺にそんな口の利き方をするということは、復帰してくれるということかな?」
「近いうちにせざるを得ないでしょうね? 伯爵程度の地位では、娘を守ることは叶わなそうですから」
「――――そうか。心強いな。この国で唯一、王国の法ではなく独自の法に守られた存在。その最高峰に……」
どうやら、悪役令嬢の父として没落に巻き込まれる父は、私の運命にどうしても巻き込まれるらしい。自分のことばかりだったことを、私は恥じた。
そして、伯爵の地位を伯爵程度といった父。成り上がり伯爵と言われても、黙って笑っていたのに。伯爵になる前の地位の方が高いみたいじゃないか。
父のためにも何としても断罪を回避しなくてはいけない。私は再度心に誓うのだった。
だって、悪役令嬢にも大事にしたい家族はいるのだから。
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