03 第一王子がぐいぐい来るのですが?
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やつれた父が心配だが、その理由を問いただす前に、なぜか第一王子の来訪が告げられた。いつの間にか、フェイはどこかに消えてしまっている。王族が苦手なのだろうか?
「なぜ、第一王子殿下がいらっしゃるんですか?」
「――――婚約者だからとごり押しでな。こんなことなら、王家からの婚約など受け入れなければ良かった」
父が静かに怒りをあらわにする。本当に今日は珍しい日だ。父がいろいろな顔を見せてくれる。
それに、未だに悪役令嬢ルルーシアが、婚約者になぜ選ばれたのかという謎は解決しないままだ。
「……まだ、体調がすぐれないと言って断ることもできる。どうするルルちゃん」
「会いますわ。だって……」
断ったところで、体調不良などという理由がいつまでも通るはずもない。遅かれ早かれ会うことになる。それなら早めにあった方が良いに決まっている。
「準備します。ローリエ、ドレスを見繕って」
私は侍女のローリエに指示を出す。名前を呼んだことがなかったせいか、一瞬固まった後、ローリエは笑顔を見せた。
「かしこまりました。お色はどうなさいますか?」
「そうね……淡いラベンダーにして」
「赤では……なくですか」
悪役令嬢ルルーシアのトレードマークは赤いドレス。
たぶんこれから先、私が赤いドレスを身に着けることはないだろう。
届けられたラベンダー色のドレスは清楚で、私の髪色によく似合う。
まだ、子どもだからひざ下丈で動きやすい。
「お待たせいたしました」
「ルルーシア……大丈夫だった?」
試合のあとの悔しさなどみじんも見せずに殿下が私の体調を気遣う。小説の中ではどちらかというと、俺様王子だったと思ったのに、子ども時代の殿下が天使!
金の髪に青い瞳の王子様。まさにその言葉が似合うと思った。これはたしかに、悪役令嬢ルルーシアがヒロインを近づけまいと暗躍するはずだわ。私はしないけれど。穏便な婚約解消を目指しているのだし。
「ありがとうございます。第一王子殿下も……」
「ルル。僕のことはアレスと呼んで」
「アレス殿下?」
やっぱり困った王子様だ殿下は。婚約が成立してから、自分から会いに来たことはなかったのにどうしてしまったのだろう。そんなに負けたのが悔しかったのだろうか?
「まあ、それでいいか。ルル? 元気そうで安心したよ。急に訪れて悪かった。また、学園で会おうね?」
そう言って、アレス殿下は踵を返して去って行ってしまった。
どこか意味深な笑顔が気になりはしたけれど、やっぱり、婚約者が自分との対戦で倒れてしまった手前、外聞を気にして来てくれただけだったのだろう。私はそう結論付けた。
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しかし、事態は思わぬ方向に展開する。
「――――行こうか。ルルーシア」
余所行きの父は、カッコいい。どうして家にいる時は、あんなにもボンヤリしているのだろうか? しかし、これから学園に行く。仕方がないから私もドレスに身を包む。えらい人がたくさん来るのだと説明を受けた。
それがなぜなのかわからないけれど、確実に大事になってしまっている。
「大丈夫、俺が守ってあげるから。ルルちゃんは心配することはない」
珍しく父が頼もしい。まあ、成り上がり伯爵と揶揄されるくらいなのだから、父の外での顔は、家の中で見る物とは違うのかもしれない。
私の手はまだ小さい。父の大きな手にすっぽりと包まれてしまう。
「さあ、行こうか」
私たちは、屋敷をあとにして学園へと向かった。
そして私は、どうして父が倒れた私に付き添うことができなかったのか、なぜあんなにやつれてしまっていたのか。その理由を知るのだった。
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