39 私たちは似ているから。
「ふむ、仲が良いのは宜しいことだ。二人はまるで、創世神話の闇の精霊と光の精霊のようだ」
――――そんな高貴なものに例えないでください!バチが当たったら、どうするんですか。
しかも、二人とも愛を叶えた代わりに力を失ったんですよね? 縁起悪すぎです。
そうシーク先生に反論しようとした瞬間、腰に下げた黒い剣がフルリと震えた気がした。
「……フェイ?」
なぜか、フェイがひどく、その言葉に反応している気がする。そう言えば、フェイはどうして私に力を貸してくれるのだろう。
「闇の精霊か……。ルルーシアの精霊は、どんな姿なんだ?」
「えっと、大きな黒い犬で」
長い時を生きるハイエルフ。しかも、精霊と魔法を専門にしているはずのシーク先生なら、何か知っているに違いない。
そういえば、フェイは出会ったばかりの頃に、父に「……冥府の犬と」言っていた。
「冥府の犬? それに、黒い犬の姿だなんて」
その言葉が思わず口からこぼれ落ちた瞬間、何故か取り乱した様子のシーク先生に両肩を掴まれていた。
「……何かご存知なのですか」
「……まさか、そんな」
私がもっと強くなれば、フェイはもう一度姿を見せてくれると言った。でも、今は私に力を貸してくれるばかりで、何も答えてはくれない。
「シーク先生? 何をご存知なのですか?」
アレス殿下の言葉に、緩くシーク先生が首を振る。
あれ? 何かが引っかかる。大事なことを思い出せていないような。
そう、もうすぐ私達は、二年生になる。
二年生? そう、二年生の時にかつての悪役令嬢ルルーシアと、第一王子アレス・ロレンディアの運命を決定的に分ける出来事が起こる。
「アレス殿下の」
どうして、思い出せなかったのだろう。
アレス殿下の光の精霊は、まるでフェイと対をなすような、淡い黄金の毛並みをした、大きな犬として記されていた。
弱いけれど、闇の魔力を持ったかつての悪役令嬢ルルーシアの前には、決して姿を表さなかった光の精霊。
けれど、小説の中にはその姿が描かれていた。
どうして、フェイの姿が光の精霊と対をなしていることに思い至らなかったのだろう。
――――フェイと第一王子アレスの光の精霊。
第一王子が光の精霊を召喚した日。その日から、ルルーシアと第一王子アレスの関係は変わってしまう。その出来事は、もうすぐ訪れるはずで。
その瞬間、パキリと剣から音がする。
まるで、これ以上思い出しては、ダメだとでもいうみたいに。
「ルル……ひどい顔色だ」
心配そうに、私の頬にそっと触れたアレス殿下。その顔色は、たぶん私より悪いに違いない。
だから、私は強がりを言う。我ながら可愛くないと思いながら。
「アレス殿下、自分の顔色見てから言った方が良いです。どうして、魔力が枯渇しているのに休んでいないんですか?」
「ふっ、心配してくれるの? ルル、可愛い」
「っ?!」
その笑顔が、眩し過ぎるせいで、何を考えていたのか、その瞬間吹っ飛んでしまう。本当に、アレス殿下はずるいと思う。
アレス殿下は、そのまま私の手のひらに口付けを落とした。
「ルル、何があっても離れない。……覚悟しておいて」
そんな、アレス殿下だから、私だって心の奥底の気持ちを伝えて良いのだと思える。
「わっ、私だって離れません」
「えっ、ルル?!」
シーク先生の存在に気がついて、私が羞恥心に悶えるまで、あと少しの時間が必要なのだった。
最後までご覧いただきありがとうございました。
『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。




