37 光と闇の鎖 2
シーク先生の研究室に足を踏み入れた瞬間、何かの魔法が発動した。
遮音結界? ……本気ですね、先生。
それでも、何から話せばいいのか、シーク先生も思案しているみたいだった。
私自身も混乱しているくらいなのだから、思考を整理する時間がもらえるのはありがたい。
まず、一番気になるのは、アレス殿下が、まるで小説の中の第一王子アレスみたいな言動をとったこと。
私は、小説の中の出来事みたいに思っていたけれど、私の中にどんどん経験した記憶みたいに定着していくことを思えば、本当に私たちはやり直しているのかもしれないと思う。
それに、不可能なはずの光魔法と闇魔法を融合したらしい鎖……。
第一王子アレスは、光と闇魔法の共存を成功させていたのだろうか。
「フェイ……」
腰にさしたままの、黒い剣にそっと触れる。
冥府の扉をくぐることができなかったのは、愛する者からの魔法の鎖のせいだって……。
だとしたら、その鎖は……一つしか当てはまりそうもない。
「――――どこまで話せる」
シーク先生は、すべてを無理に聞こうというわけではないみたいだ。
ありがたい……。
何も考えず、全部話してしまいたい気持ちでいっぱいだけれど、いくらシーク先生にだって全部話してしまったりしたら、父とアレス殿下に後で大目玉を食らいそうな予感がする。
「……カトルが、火の魔力を暴走させました」
「――――ああ、それしか考えられないな。あいつの内包する魔力は凄まじい……。そばにアレスがいて幸いだったといったところか」
小説の中では、ヒロインに助け出されるまで、死者は出ないまでもけが人は多数出た。
そのせいで、カトルは学園から姿を消してしまう。
そして、次にヒロインの前に現れるときには、王国で唯一S級冒険者に手が届くであろう、期待のA級冒険者になっているのだ。
――――ん? 誰もけが人は出なかった。それはとっても良かったけれど、このままではカトルが学園を出ていく理由がなくなってしまうのでは。
そうなった場合、アイシラがピンチになるたびに、正体不明の助太刀により倒される魔獣はどうなるんだろうか。
もちろん、正体不明の助太刀をする人は、カトルなのだが……。
ま、アレス殿下が何とかしてくれそうな気がする。
私は、アレス殿下のヒロイン力に期待することにした。
一刻も早く、アレス殿下のそばに行きたい私と、まだ納得しきっていない様子のシーク先生。
もう、全部話してしまいたいのですが……。だめですかね?
私は、盛大にため息をついた。
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