表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/105

29 第三の選択肢


 アレス殿下は強い。


 私から離れて魔法を使うことができれば、十五歳の頃の父より強いらしい。


 でも今現在の父はもっと強い。


 だって、この大陸に一人しかいないS級冒険者なのだから。


「なんでこんなことに……。お父様はいったい何を考えているの?」


 開け放たれた窓から入ってくる風。

 でも、私はその後を追いかけることも出来ず立ちすくんでいた。

 だって、私が行ってしまったら、魔法が使えないアレス殿下には万に一つの勝機もなくなる。


 私は現実を突きつけられる。

 私たちは、二人で戦えばA級冒険者の実力を持つ。

 でも、私一人ではそこまでのレベルで戦うことはできない。


「おい、ルルーシア」


 振り返ると、黒髪を後ろで結び、漆黒の闇のような瞳をした闇の精霊、フェイがこちらに近づいて来た。


「すごい威圧を感じたが、ルドルフか」


「ええ、お父様は、アレス殿下と戦いに行ったわ」


「お前たち二人が、直球勝負なのは遺伝か? そもそも、ルドルフは無敗だろ? ……S級になってからはたった一回を除いて」


「ええ、お母様を救えなかったたった一回の戦い以外は無敗だって」


 その戦いの後、父は冒険者を完全に引退した。


 そのことを話してくれた時、父は血が流れそうなほど拳を握りしめていた。

 だから、きっと誰よりも私たちのことを応援してくれるのと同時に、誰よりも危険に飛び込む私たちのことを憂いている。


「……なぜルドルフがあそこまで強くなったか、お前は知らないんだろう?」


「え?」


「ルドルフは強い。でも、あれは人が超えることができる強さじゃない。それは多分、ルドルフがS級になった時に倒した竜と関係しているんだろうな」


「竜?」


 そういえば、S級になるには伝説級の魔獣を倒す必要があると聞いたことがある。


「……本当にいいのか」


「え?」


「ルドルフは、全てを捧げてお前たちを守ろうとしている。人間が掴める未来は少ない。……お前は本当にこの未来に進む覚悟があるのか?」


 全てを捧げる? 

 捧げるって何を?


 だって、小説の中にはそんな展開なかった。


 悪役令嬢ルルーシアの父親について描かれることはほとんどなかったし、S級冒険者に復帰するなんてことも。


「今、お前が駆けつければ、二人の戦いを止めることができる。お前がそばにいれば、アレスに勝ち目はないからな」


「っ……お父様」


 窓の向こうの空が、赤く光り輝く。

 その直後には金色の光が。


 大好きな父と、大好きなアレス殿下が戦っている。


 私は、それを見ているしかないの?

 それが私の選択の結末?


「……私っ、二人を止めたい! でも、アレス殿下がそのせいで負けてしまうのは嫌」


「……俺の主人は強欲だな。それなら、第三の選択肢を掴め。その腕輪はアレスの腕にはめるといい。……そして俺に願え」


 フェイは、美しい黒い犬の姿になった。

 その体を取り囲む、人間の全てを魅了し、恐れさせるだろう漆黒の闇。


「本当に願うなら。今度こそ正式な契約を」


「……私と一緒に運命に抗って。フェイ」


「ああ、わかった。俺の唯一の主人。その名において俺に願え」


「ルルーシア・フリーディルの名において、今一度の契約を願う」


 その瞬間、フェイが笑った。いつも、つまらなそうにしているか、無表情なことが多かったのに。


「ちっ。唯一の主人を選ぶほど、この俺が絆されるなんてな。……しばらくこうやって話ができないのは残念だけど。俺に会いたければ、早く強くなれルルーシア」


 その直後、私の手には一振りの懐かしい黒い刀身の剣が握られていた。


 そして私の魔力は、私の中ではなくて全て剣の中に収められたことを知る。


「フェイ……。私が強くなったらまた会える?」


 黒い剣からは返事はない。その代わり、黒い剣は硬質な美しい音を立てたような気がした。



最後までご覧いただきありがとうございました。

誤字報告ありがとうございます。


『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ