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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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28 俺にすら勝てない人間には渡せない。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 家に帰ると、今日もソファーにフェイが寝そべっていた。


「――――フェイ?」


 家にいるのに、なぜかフェイは人の形をとっていた。

 そして、なぜかとても具合が悪そうに見える。


「出会ってしまったのか。光の聖女に」


「……フェイ」


 フェイの言っているのは、ヒロイン、アイシラ様のことだろう。

 私の魔力が枯渇したということは、フェイの力が減ってしまうということだ。


「待っていて!」


 私は、決意を固めて、父の執務室の扉を叩く。

 今日は、S級冒険者の遠征から帰って、領主としての仕事をしているはずだ。

 腕輪をはめてしまえば、フェイの力が減ってしまうことももうない。


「お父様!」


「ああ、久しぶりだな。ルルちゃん。元気だったか?」


「腕輪をください!」


 その瞬間、父の雰囲気が大きく変わる。

 ビリビリと感じる覇気。

 決して超えることができない壁があるのだと、思い知らされる。


「そうか……。殿下は覚悟を決めたのか」


 なぜか父は、愛剣を手にしてマントを羽織った。

 どういうことなのだろう。私は、例の腕輪を渡してほしいだけなのに。


「お父様……?」


「ルルーシア、お前もちゃんと覚悟を決めたのか?」


「――――え?」


「その腕輪をはめるということは、アレス殿下とともに歩む未来を選ぶということだ。この後は、もう引き返すことができない。何があっても」


 私は、ただアレス殿下のそばにいたいだけ。

 アレス殿下が、非業の死を遂げたりしないように守りたいだけ。


「……殿下のことを本当に守りたいなら、俺と一緒に彼の前から消えるべきだ。隣国につてがある。隣国で一緒に冒険者として暮らそう」


「お、お父様……」


「俺なら、どんなことからもルルーシアのことを守ってやることが出来る。ルルーシアも、アレス殿下のそばから離れれば、力を使うことが出来るし、フェイが弱体化してしまうこともない。……殿下は、ルルーシアから離れれば強い。おそらくS級冒険者にもあと少しすれば手が届くだろう」


 そのことを、何度も考えた。私が、アレス殿下から離れさえすれば、きっとアレス殿下は自分の身は自分で守ることが出来る。もしかしたら、王都を襲う未曽有の災害さえ、アレス殿下がいれば大丈夫なのかもしれない。


 ――――それなのに。


『ずっと一緒にいようね? ルルーシア』


 ――――私だってずっと一緒にいたいです。


 真っすぐ私の瞳を見て笑ってくれたアレス殿下のその言葉に、私は、まだ返事をしていない。


『好きだよ。ルル』


 ――――私も、好きです。アレス殿下。


 その言葉にすら返事をまだしていない。

 そんな中途半端な私に、魔法が使えないハンデを背負ってすら、アレス殿下は約束してくれたから。


『ルルーシアが望んでくれるなら、なってみせる』


 ――――私にも望んでください。強くなってみせる。


 アレス殿下、あなたが約束してくれたから。

 たとえ魔法が使えなくても、S級冒険者になってくれるって。


「だから……。私だって、アレス殿下と一緒にいる未来を諦めたりしない。諦めたくない!」


 その答えに、父が笑った。

 そして、私に背を向ける。


「分かった。今から、殿下と会ってくるから」


「お父様……?」


「俺にすら勝てない人間には、ルルを渡したりしないって決めているからね」


「え?」


 止める間もなく、父は窓を開けてそこから飛び降りてしまう。

 S級冒険者の身のこなしに、追いつくことができない私は、まだまだA級冒険者を卒業できそうにない。


「その腕輪、渡しておくけど、俺か殿下がここに戻るまで身に着けるのは保留しておいて? ちなみに、もし殿下に勝ってほしいなら俺のこと追いかけるなよ? 殿下が魔法を使えなくなったら、万に一つも殿下に勝ち目はないのだから」


 父の声が遠くから聞こえてくるけれど、それに返事をする前に父は消えてしまった。

 呆然と腕輪を握りしめるだけの、私を一人残して。



最後までご覧いただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 単純な断罪モノあるいはそれに近いもので回避や死なせたくないと思うのなら貴族位捨てるとか国から逃げ出すとかすればいいだけなのにね。
2022/03/06 15:31 退会済み
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