24 その未来を選べば楽なのに。
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王宮で、王妃様のお茶会に参加しています。
なぜか、第二王子リベラ・ロレンディア様まで、同席してます。
金の髪に青い瞳のアレス殿下に比べ、茶色の髪に紫色の瞳をした弟君は、恥ずかしがり屋なのだろうか。
王妃様の後ろに隠れたまま、私の方を見ようともしない。そして、アレス殿下は、なぜか私の手を握ったまま離さない。
――――お茶も飲めない。
「ふふっ。ルルーシアのこと、いくら誘ってもルドルフ様ったら素気無く断ってしまうのですもの。参加してもらえてうれしいわ? リベラ? あなたの姉君になるお方よ。ご挨拶なさい」
「は、リベラ・ロレンディアです。フリーディル伯爵令嬢」
さっきまで、隠れていたとは思えないほど、第二王子殿下の挨拶は優雅だった。
さすが、メインヒーローだわ。アレス殿下は、可愛いけれど、少し無口なメインヒーローは、たしかにカッコいい。
でも、私の断罪に関わる人だから、限りなく距離を取りたい。私はつい、アレス殿下と繋ぐ手に力を込める。
そして、意外にも王妃様は、気さくな方だった。どうして、こんな気さくな母を持つ殿下が、小説ではあそこまで俺様な感じに育ったのか理解に苦しむほどに。
でも、今のアレス殿下の母君というのなら、納得できる。
……ところで、父のこと名前呼びですか?
「――――あの、父と知り合いなのですか?」
「ええ。というよりフリーディル伯爵令嬢だったあなたのお母様とね。友人だったの」
そうだったのか……。母は王立学園に通っていたと聞いている。その時に、王妃様と一緒に学んでいたのか。
「王妃教育は厳しいわ。でも、それ以外は自分の家だと思って気楽に過ごしなさい」
「ありがとうございます」
お礼を言いつつも、流石に王宮を自分の家と思うなんて無茶が過ぎると思う。だって、私はただの成り上がり伯爵の娘なのだから。
でも、王立騎士団の訓練に参加できるのは良い。自由時間はすべてそこに当てようと心に決める。
「あの、ところで王妃様は、私の魔法が」
「ルル! そろそろ騎士団の訓練に行こう!」
その時、慌てた様子の殿下が、私たちの話題に割り込んでくる。
ああ、王妃様は知らないのだと私は察する。
そして、なぜかいつも見ないほど、どこか冷たいアレス殿下の瞳が第二王子殿下を見据えた。
「ルルーシア、俺と一緒に来て?」
「――――そうですね。退室の許可を頂けますか?」
「……あなたは自由だわ。好きになさい?」
王妃殿下が悲しそうな瞳で、私の背中をじっと見ていたことに、その時の私は気がつかなかった。
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「なあ、いつまでここにいるんだ?」
侍従の格好に身を包んだ、フェイがうんざりしたように私に話しかける。
侍従にあるまじき体勢で、ソファーの上でゴロゴロしながら。
誰かに見られたら、どうするんだろうか。
「ね……。誰かにそんな姿見られたら大変なんだけど」
「悪いけど、闇の大精霊たる俺を処罰できる人間なんて……。まあ、いなくはないけど」
「――――え? そんな人がいるの?」
「――――だから、ここには来たくないんだ。闇の魔力が全部消されたら、ここにいることも叶わないんだからな? アレスにしろ、弟のリベラにしろ、俺を消すには十分な力がある」
たしかに、王宮に来てからというもの、フェイはずっと人の姿のまま過ごしている。あの、ツヤツヤ、フカフカの毛並みが懐かしいけれど……。
「相手を害そうとしていなくても、光魔法と闇魔法は互いに打ち消し合ってしまう……」
「その通り。だから、あの小僧といるなんて、茨の道でしかないんだ。さっさと離れた方が、お互いのためなんだよ」
「――――そうだよね。実際、小説の世界でももっと早く離れていたら……」
アレス殿下の最後……。たぶんその時、殿下のそばには、婚約破棄されたはずのルルーシアがいたに違いない。そうでなければ、小説内最強と謳われたアレス殿下の最後があんなふうにあっけないなんて説明がつかない。
それは、もしもルルーシアを完全に見限って、近寄りもしなければ起きるはずのない未来だ。
「離れた方が……やっぱりいいんだよね」
「まあ、一般論を言えばそうだろうな」
「じゃあ、今から出て行こうか」
「たぶん……地の果てまで追いかけてきそうだけどな!」
フェイが言うことは、少し意味が分からない。だって、第一王子としての身分とかしがらみとか、すべて捨ててまでアレス殿下が私のことを追いかけてくるなんてありえない。
「あり得なくても……」
「ルルに余計なこと言わないでもらえるかな? 精霊界に帰った方が良いんじゃない」
「――――ちっ。どこから現れた」
「ここは、俺の家だからね」
しかし、なぜ私の部屋にいるのかについての理由にはなっていない。そのことに私は、気がつかないふりをすることにした。
「――――ルル、俺から離れたい?」
なぜかひどく悲しそうな顔をしながらの殿下からの質問に対する答えを、私は一つしか持っていない。だからこそ、こんな質問の仕方、ズルいと思う。
「――――アレス殿下。あなたから離れるのは寂しいです」
「そう……。求めた答えじゃないけれど、今はそれでもいいよ」
私たちは、きっと離れればそれぞれ安定した道を進んでいける。
父にも迷惑をかけないし、私が破滅することも、殿下があんな最期を迎えることもない。
きっとやり直すならそれこそが間違いのない選択。
「――――殿下は魔法が無くても、誰よりも強いS級冒険者になれますか?」
「ルルーシアが望んでくれるなら、なってみせる」
たぶん、それはとても難しい。
それでも、まだ私達には時間がある。
だから、まだあきらめない。そう私は決めたのだった。
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