25 運命に一緒に抗って
✳︎ ✳︎ ✳︎
あれから、五年の月日が過ぎた。
私たちは、A級冒険者として活躍している。
「アレス殿下! 行きますよっ」
私が使うのは、弓矢だ。剣術では、アレス殿下に遠く及ばない。
その分、弓矢なら闇の矢をつがえれば、いくらでも打つことができて便利だ。
近接戦では、アレス殿下が絶対に守ってくれる。
そして、アレス殿下の周囲は私が守る。
――――それでも、S級冒険者に辿り着くことは出来なかった。
「それにしても、ルドルフ殿は強いな」
完全無欠のように小説内では描かれていたアレス殿下。
それでも、魔力を使って戦える状態ですら、まだ父に勝つことは出来ないらしい。
私の前では、魔力を使うことができないアレス殿下。
だから、私は本気で戦う二人のことをまだ、見たことがない。
父が先日、「なんだ、あの成長率。この前はやばかった。……あっ、アレスには言うな? 調子に乗る」と悔しそうにつぶやいていたのを聞いた。もちろん秘密にしておく。
――――でも、やっぱりアレス殿下は私と離れていれば、S級冒険者まで手が届くところまで到達しつつある。
もう、時間が来てしまった。
これから、学園に入学してくるヒロイン。
そうすれば、私たちは待ったなく世界の変化に巻き込まれていくのだ。
「私が断罪されないこと。そして、なんとしてもアレス殿下を守ること」
その二つだけなら、大丈夫そうな気もする。
でも……。
「お前の考えていることは分かるが、人間が掴める未来には限度がある。後悔するとしても、自分の一番大事なものだけは離すな」
そんなカッコいいことをいう、ツヤツヤの黒い毛皮。
アレス殿下と一緒にいなければ、しなやかな大型犬の姿をしているフェイ。
「いつも、お腹出して寝ているばかりのくせに……」
「――――ルルーシアが知らない間に活躍しているんだ」
「そう……いつもありがとう。フェイ」
「え? そのまま信じるのか?!」
当たり前だ。だって、毎日が平穏過ぎるから。
本当は、入学式の直後に悪役令嬢ルルーシアは、闇の魔力に目覚めるはず。
そして、周囲を廃墟にしてしまう。
たぶん、実技試験でフェイと契約できていなければ、今回だって起きてしまったかもしれない。
人命に関しては失われなかったものの、それからはルルーシアが闇の魔力を持っていることが周囲に知れ渡るのだ。
そして、王太子の婚約者としてのルルーシアに疑問の声が上がり始めたころ、聖女というにふさわしい光の魔力を持ったヒロインが登場する。
「……だって、魔力もとても安定しているの。本当は、小説の中のルルーシアみたいに、アレス殿下の傍にいる限り、いつ暴発してもおかしくないんでしょう? 私の魔力」
「――――妙なところだけ察しが良いよな。ルルーシアは」
「フェイがいるから、こうやって平穏に過ごしてこれた。感謝しているの……フェイ」
「そんな風に、殊勝になられると……困るな」
黙って、フェイは向こうを向いてしまった。
学園に入れば、フェイはこの姿を保ったまま私の傍にいることは出来ないだろう。
だって、アレス殿下とヒロインの光の魔力はとても強いから。
そして、私もヒロインとアレス殿下とともに過ごすことで、どんな影響があるかわからない。
「本当は、学園に進まずに冒険者として過ごす方が良いに違いないよね」
でも、小説の中でアレス殿下を傷つけたのが誰なのか調べなければ。
運命を変えることなんてきっとできないだろう。
「悩むなんて性に合わない。――――フェイ、契約の言葉、もう一度聞かせてほしい」
「ああ……お前の運命に一緒に抗ってやる」
その言葉とともに、私はアレス殿下とともにいられる未来を掴むことを決意した。
最後までご覧いただきありがとうございました。
誤字報告ありがとうございます。
第一章終了です。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
続きが気になるという方は、『☆☆☆☆☆』評価いただけるとうれしいです。




