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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
悪役令嬢は冒険者になります。え? 殿下はだめですよ?

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22/105

22 致命的じゃないですか、それ。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 S級冒険者と、たまたま同郷だった総ギルド長の威光を借りてC級冒険者としてスタートした私は、普通にG級からB級まで上り詰めたと言う殿下を前に肩身が狭い思いをしていた。


「ルルは、普通にC級以上の実力があるから平気だよ」


 殿下はそんな風に慰めてくれたけれど、それを鵜呑みにできるほど、いくら私でも図々しくはない。


「なぜ、こんなにも自己評価が低いのでしょうか。義父上?」


「お前の父になった覚えはない。……まだ」


「それに……。ルルと一緒に活動する時には、たぶん良くてもC級くらいの力しか出せないし」


「……そうですよね。だって殿下は」


 小首を傾げながら、あえてそこで言葉を切る。

 実は、小説には殿下と悪役令嬢ルルーシアが婚約破棄に至った理由が、そこまで詳しく描かれているわけではないから。


「……そうだね。ルルの近くで俺は魔法が使えなくなるから」


「えっ、なにそれ致命的!」


 その瞬間の沈黙の重さを、たぶん私は一生忘れられない。これはトラウマレベル。


 沈黙を打ち破ったのは、アレス殿下の震える声だった。


「まさか……知らなかったの?」


「知って……ましたとも」


 スッと細められる殿下の表情は、帝王教育が活かされてますね! という印象を私に与えた。


 こんな殿下の前では、私なんて震える子ウサギでいるしかない。


「――――そう。まあ、そんなわけだから、しばらくはD級あたりの討伐とか採取をこなして行こうと思う。異議はないよね?」


「勝手に決めるな。しばらくルルは俺が面倒を」


「ははは……。S級冒険者殿? 実力が近い者と組んだ方が、若き冒険者の経験にはいいと思いますよ? それにまもなく緊急のフェンリル討伐の依頼が入ってくるでしょうから。S級冒険者は、王族相手にでも異議を唱える権限を持つ、しかし緊急討伐依頼だけは断ることができない。……そうでしたよね?」


「貴様……」


 私のせいで可愛い殿下が魔王みたいになってしまった! これは逆らうとあとが怖いやつ!


「……それは冗談としても、フェンリルは倒していただけると助かります。王立騎士団も苦戦しているので……。報酬はこちらを」


「――――それにしてもこれは貰いすぎ」


「……ルルのために」


 殿下が父に渡したのは、ただの古い腕輪にしか見えないものだ。


「……そう言われれば、断ることができないな」


「俺に何かあった時には、それを使ってくださいね?」


 そう殿下が言った瞬間、殿下の目線は急に私の背よりずっと高くなった。なぜか、高い高いするように父に持ち上げられた殿下。


「わっ……ちょ! 何するんですか?!」


 殿下の顔が赤い。これくらいのことで、こんなに戸惑う殿下は、こんな扱いを大人からされたことがないのだろう。


「本当に……ガキのくせに。冒険者が依頼者からこれだけの報酬を気前よく前払いされたんだ。お前が誰より強い大人になるまで絶対に守ってやる。……だから、こんな子どものうちから諦めた目をして自分がいなくなった時のことなんて誰かに頼むな!」


 何かを諦めてしまったように、穏やかに微笑んでいるだけの父はどこへ行ってしまったのだろう。


 でも、私はこちらの父の方がさらに好きだ。

 そして私は初めて、未来に少しだけ明るさを感じた。

 



最後までご覧いただきありがとうございます。


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