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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
悪役令嬢は冒険者になります。え? 殿下はだめですよ?

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15 未来の王妃と呼ばないで。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 今日は、特待クラスに合流して授業を受ける日だ。

 私たちに会わせて、授業のスケジュールが組み直され、マナーやダンス、歴史、帝王学、戦術論など、王族や王妃になる上で必須とされる授業は、全て同日になっている。


 私だけだったら、そこまでの配慮なんてされなかっただろうに……。むしろ、特例でほかのクラスの授業まで受ける必要なかったと思うのに。


「さ、行こう? ルル」


 当然のように、私にエスコートの手を差し出すアレス殿下。


「はい、アレス殿下」


 なぜか、当然のようにその手を取ってしまう私。


 そういえば、光と闇魔法についてどこまで知っているのか聞いてみたいと思うのに、まだタイミングがつかめないでいる。


 それに、なんだか今日の殿下は第一王子としていつも微笑んでいる時のあの笑顔だ。冷たいような、慈愛に満ちているような、そんな笑顔。


 私の微笑みも、貴族令嬢の微笑みだ。参考は、悪役令嬢。


 ……そうしているつもりなんだけど、出来ているよね?


 私たちが揃って教室に入った瞬間、騒めいていた室内が静かになる。


「よろしく。アレスだ。校内では身分の差なくお互い研鑽を積むことになっている。ここでは気軽に声をかけてほしい」


「ルルーシアです。皆さんと一緒に学ぶ時間は少ないですが、お互い協力して学びを深めたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」


 そう言って、体に染みついているらしい淑女の礼が、ごく自然に出る。


 ――――私は、アレス殿下の隣で、こうやって過ごしていた。それは、確信に近くて。


 席は指定されていた。私と殿下は離れて座る。

 そのことを、少し寂しく思う。心なしか、アレス殿下まで、こちらを見つめて寂しそうだ。


 気のせいだろうけれど。


 あれ? 絆されないって、決めていたはずなのに。


 すると、こちらを遠慮がちに見つめるばかりだったクラスメイトの中から、亜麻色の髪の毛をゴージャスに巻いた少女が歩み出てきた。


 ……まさか、あなたは悪役令嬢の取り巻きの一人ですか?! 絵にかいたようなドリルヘアですね!


 実は、小説の中ではルルーシアも豪華な巻き髪だったのだ。でも、今の私は長い紫色の髪の毛をストレートにしてサイドを編み込んでいるだけだ。


「シュルツ侯爵家の三女、レイチェルですわ。レイチェルと呼んで下さるとうれしいです。よろしくお願いいたします」


 彼女は何と、私の隣の席だった。


 私に一礼して優雅に座るレイチェルのまるで令嬢の鑑のような所作に感動を覚えながら、どこか物語の強制力のような作為的なものも感じる。


「――――ご挨拶ありがとうございます。私はフリーディル伯爵家のルルーシアと申します。どうかよろしくお願いいたします」


「ええ。隣の席ですもの。仲良くしたいですわ。未来の王妃殿下の隣なんて光栄ですわ……」


 ――――王妃殿下に、私はならない。


 そろそろ、子どもなのに堅苦しい言葉遣いに疲労を覚えてきた私。

 ちらっとみると、相変わらずの王子様スマイルのアレス殿下の姿が遠くに見えた。


「それに、あの入学試験当日私も実技試験見学していましたの。すてき……でしたわ」


 薔薇色に頬を染めるレイチェル。

 たしかに、あの時のアレス殿下は凛々しく見えて七歳には見えなかったかもしれない。


「はあぁ……。素敵でしたわ。あの、黒い剣で戦うルルーシア様」


「えっ?! 私ですか? レイチェル様」


「そうです。ルルーシア様に憧れている生徒が多いのです」


 さすがに、悪役令嬢の取り巻き。悪役令嬢を見る時に、フィルターでもかかっているのかもしれない。


「それに、ルルーシア様との試合のあとの殿下。光魔法を駆使して戦う姿……素敵でしたのよ? ルルーシア様は見ることができなかったんですよね?」


 たしかに、あの後、初めて使った魔法のせいで魔力切れを起こして倒れてしまった私は殿下の残りの試合を見ていない。


 でも……。


「今、何ておっしゃいましたか」


「あっ。婚約者のルルーシア様の前で申し訳……」


「違うんです。殿下のカッコよさについては、お好きなように、いくらでも語っていただいて結構です。それより殿下が魔法を使って戦ったって……」


「そうです。光魔法を駆使されて」


 違和感がどんどん膨らんでいく。


 だって、私との試合の時に、殿下は光魔法を使ったりしなかった。

 それは手加減してくれたのかもしれないけれど……。


 そして、父が訓練をつけてくれた時に魔力をいくら使っても中々倒れるほどまで使い切ることはできなかった。精霊召喚にそれだけ魔力を使ったからって考えていたけど、もしも違う理由で私の魔力が全くなくなってしまったのだとしたら。


 ――――それに、父に訓練を受けている時、殿下は魔法を使わない。私は、アレス殿下の魔法を見たことがない。


 殿下の方を振り返ると、やっぱりたくさんの人に囲まれていた。


 冒険者クラスで過ごす時の、年相応の笑顔を見せる殿下はそこにはいなかった。


 

最後までご覧いただきありがとうございました。

誤字報告ありがとうございます。

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