10 大物が次々に出てきます。
しばらくすると、担任の先生が入ってきた。
しかし、その先生の前にいる人物が問題だ。、
シルバーグレーに深い森の中を思わせる知的な翠の瞳をしたイケオジ。
なぜか、担任の先生の前にいた男性が、「学園長のレイドだ。よろしくな?」と私たちに自己紹介を始めたのだ。
あれ? 学園長は特待クラスを管轄していましたよね? と不思議に思うが、すぐにその理由に行き当たる。
――そうよね? 第一王子とその婚約者がいるクラスが管轄なのだわ。
こんなところまで、殿下の可愛い我儘の余波が来ているなんて……。私? 私は成り上がり伯爵の娘なので、冒険者クラスにいてもおかしくはない。殿下の婚約者? 円満解消予定だから。
「このクラスが、未来を担い、強大な敵に立ち向かう強さと仲間を手に入れる空間であることを願う」
学園長の挨拶は、どこかで聞いたようなセリフで締められた。
「さ、俺は行くけど。楽しませてくれ? 未来の英雄たち。あとよろしくな? シーク」
ちょっと、そんなセリフ恥ずかしくないのかしら? と思って周りを見渡すけれど、どの子も目をキラキラとさせてやる気に満ち溢れていた。
……アレス殿下。あなたもですか?
その後に教壇に立ったのは、淡いクリーム色の髪の毛とペリドットみたいなオリーブグリーンの瞳をした優しげな男性だった。
……うわー。大物が出てきた。
その人の耳は、長く尖っている。そう、いわゆるエルフの特徴だ。でも、その耳は今は耳の下で切り揃えられた髪の毛に隠されている。
加えて、シーク先生お得意の認識阻害魔法が掛けられている。
……でも私は知っている、この人はエルフなんてものじゃない。
人嫌いのエルフたちの中の異分子。
それでいて、上位に位置する存在。
「ハイエルフ……」
思わずつぶやいてしまったセリフは、耳が人族よりも良い彼には聞こえてしまったのかもしれない。興味深そうな目線を向けられてしまう。
いけない、おかしな行動を取ると観察対象に選ばれてしまう。
「担任のシークテイルダイアンタスだ。名前が長いのでシーク先生とでも呼ぶといい。魔法は全属性を持っている。もちろん教科は魔法学だ。何か質問はあるか?」
担任の先生とは、初対面。質問する人間はいないと思われた……が。
「はい!」
視界の端に、赤い髪の毛が揺れる。
「元気でよろしい。では、名乗って質問をしなさい」
「カトルです。俺も魔法を使えるようになりますか?」
相変わらず、主人公体質的な空気の読めなさを発揮するカトル。しかし、その質問の答えなら私も持っている。だってA級冒険者カトルが得意とするのは。
「ふむ。見たところ、炎の属性に適性がありそうだし、魔力量も桁外れ。努力すれば使えるだろう。……だが」
そう、カトルは現在は魔力が使えない。炎の精霊と契約を結んでいないし、その契約が大問題なのだ。
「激しい炎は敵だけでなく、周囲を焼き尽くす。自分の大事なものさえも時には。それを忘れずにいるように」
「はい!」
カトルは元気に応えていたが、七歳の子どもにそれを理解するのは難しいように思えた。
そして、続いて静かに手を挙げたのは、なぜか私の隣の席を陣取った殿下だった。
「アレスです。質問よろしいでしょうか」
「ああ、君は……。もちろんだ」
「シーク先生。全属性を使えると仰いましたよね? 光魔法と闇魔法は共存可能なのでしょうか」
その瞬間、少しだけ気の毒そうな目をシーク先生が私の方に向けた気がした。
それは、気のせいだったのかもしれない。
でも、たしかに何かが私の胸にチクチクと小さな棘のように刺さるのを感じた。
最後までご覧いただきありがとうございました。
誤字報告ありがとうございます。
『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。




