966:参戦
うーん、ちょっと迷走。
「さて、黄金沢さん、と言いましたかね?」
「は、はひっ!」
声が上擦っとるぞボンクラ。
「いっそ潰してしまった方が銀行の為になる、でしたかね? 御説明いただけるかね?」
「……そ、その先は不良債権なのです。我々も日夜健全化をめざして努力はしておりますがどうしても取捨選択せざるを得ません。その判断でのリスケの拒絶でして……」
「だが、資料を読む限りはそうでもない様ですが?」
「そんなもの、絵に描いた餅ですよ」
随分頑なな態度だなあ。助けたくないの? というか助かったら困るの?
「それは今断ずるには早計ではないですか? しばらくはリスケで様子を見ては」
「そんな貧乏くさい会社に価値はない!」
「それはまた、どうして?」
「そこの社長は事故で半身不随だからな。建設会社の社長がそのざまでは復興もままなるまい」
あれ? やっぱりこの人、文吾さんのこと知ってるのかな? 副支店長とも知り合いだったみたいだし。
「今は息子さんが社長の様ですが?」
「半身不随の人間を抱えて介護の合間に仕事など出来るものか!」
これは私が出ていった方がいいのかな? よし、出よう。
「副支店長、一緒に役員会まで」
「私もかね?」
「どうやら黄金沢さんが約束を守ってくれなさそうなので」
「なんでそんなことが分かるのかはともかくそれなら急がねばならないね。行こうか」
私たちは廊下を通って役員会の部屋へばんっと扉を開いて乱入した。
「失礼します!」
「なんだね、君たちは? 今は役員会中だ。一般の行員は立ち入り禁止だぞ?」
「お久しぶりです、頭取」
「君は……副原君か。何年ぶりだろうな」
「五年ほどだと思います。頭取もお変わりなく」
おや、副支店長のお知り合い……って頭取なの? いやまあそれくらいの貫禄はありますけど。
「副原……お前」
「黄金沢、またお前は繰り返そうとしたのか?」
「お前には関係ない」
「関係ない事があるか! 二十年前の事を忘れた訳では無いだろう!」
うわっ、副支店長の激高したところ、初めて見たよ。いつもニコニコな人だと思ってたんだけど。
「二十年前、お前は融資をすると熊井建設に近付いて、設計書類を盗み出し、別の建設会社に売り渡して口封じの為に融資を潰し、事故まで起こした。あの当時はまんまと逃げられたがもう言い逃れは出来んぞ!」
なんか凄いことになってるんですけど……熊井社長のところでそんなことあったんだ。ってそれなら会った時に断罪すれば良かったんじゃ?
「頭取の前で断罪しなければまた逃れようとしますからね。それに、リスケを提案する様なら過去の事は水に流して前向きに生きた方が良いと思いますし」
副支店長のお人好しは敵にかけなくても良いと思います。
「本当か、黄金沢君?」
「頭取! 違います! デタラメです! こいつらの言う事は全てデタラメなんです!」
この期に及んで言い逃れようとする黄金沢。状況証拠は限りなくクロなんだけど決定的なものがない。どうしたもんかね?
「副支店長、その時のライバル建設会社ってどこだか分かります?」
「ああ、支店長が熊井建設のリスケをはねつけようとした時の建設会社があったろう」
……ってそれじゃあ支店長もグルって事!? 確か、あの建設会社は太鼓腹建設だっけ? そうと決まれば……
「頭取、一週間ください。証拠というか証言を取ってきます!」




