963:本店融資部
融通利かない奴って居ますよね。
琴葉ちゃんの事は起こってから何とかしよう。今思い悩んでも仕方ない。増える……のかなあ? いや、ともかく今は熊井建設の事で精一杯だよ。プライベートは二の次。お仕事大事です。
支店長からの横やりは無くなったとはいえ、リスケを本部に呑ませるのはかなり至難の業かもなあ。だって元々不良債権なんだもん。
翌日、私は支店に顔を出すと支店長はお休みなんだそうな。まさか昨日の件で? でも困ったな。リスケの件は支店長に許可貰わないと本店の審査に回せないんだけど……
「私が直接本店の融資部に掛け合ってこよう」
「副支店長?」
「これさえ通れば熊井建設は助かる。ならば後は私の役目だ」
「いえ、私も行きます」
乗りかかった船だ。どれだけみんなが頑張ってるか証明してやる! よいな、各々方! いや、私と副支店長しか居ないけど。
「あ、私も行きます」
えっと睦月さんも?
「ええ。店内の仕事は中村さんと弥生さんが居ればもう大丈夫でしょうし、弥生さんへの実地での試験みたいな感じでできますから」
とは言っても年末のこの書き入れ時にやってる暇あるんだろうか? まあでも先輩も行ってこいって言ってくれたし、それじゃあ本店へレッツゴー!
関門海峡を臨む本州最西端の街、ここに本店はある。ふぐでも食べる? でもここであがるふぐのほとんどは大阪に行っちゃうらしいよ。ちなみにここであがるのはほんの少しで、ここは単なる集積地なんだよね。
まあ今日はふぐ関係ないし。どっちかって言うとふぐとかヒレ酒とかよりも瓦そばが食べたい。茶そばはいいぞ。
海通り沿いにあるビル。まるまるうちの本店だ。店舗だけじゃなくて本部業務もやってるから大きいんだよ。
受付でアポというか融資部の場所を聞く。すんなり通されて融資部の人に出迎えられ、応接室に通されたのだった。
「えーと、副支店長にテラーが二名? 何の用ですか?」
「はい、今日は客先のリスケについて」
「リスケは原則禁止です」
「そこをなんとか」
「ダメなものはダメです。どうぞ支店にお引取りを」
そう言って席を立とうとする。
「待ってください!」
「何ですか?」
「私どもの話もちゃんと聞いてくれませんか?」
「あなたは?」
「私は霜月ひとみです」
「霜月……ああ、そういえばお宅の支店で債権回収頑張ってるテラーが居ると聞きましたね。あなたですか」
あら、私の事は伝わってるみたい。ならば私の実績を武器にして交渉させてもらう。
「はい、今回の事も不良債権を減らす為の方策なんです。ちゃんと計画書も作って来ました」
計画書は楽々森彦が作ってくれたものだ。
「確定受注に売上予想……なるほど。確かにこれならば近い将来完済する目処が立ちそうですね」
「でしたら……」
「だが規則ですので規則をまげることは出来ません」
ピシャリと言い放つ融資部の人。融通利かねえな!
「じゃあ何のために融資部はあるんですか?」
「……なんですって?」
「判断もせず、規則に則ってあれはダメこれはダメって言うだけならあなたたちは要らないでしょう」
「我々の仕事をたかが支店のテラーの小娘ごときに言われる筋合いは無い!」
本性現しやがったな。たかが? ごとき? この男女平等の世に面白いこと言ってくれるじゃないですか。力尽くでも首を縦に振らせてやる!




