957:囚われの部長
貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!
「で、寝かせちゃってどうすんの?」
「どうもこうも。私に触れようとするなんて無礼千万。どこかの港にでも放り投げたらハゼの餌にでもなるのでは?」
ハゼは肉食だし、港湾内に沢山いるけど人肉食うかどうかは知らんぞ。というか殺る気満々ですね。
「いやあ、さすがにそれはまずいっちゃない? そんなら拷問部屋にでも連れてってとっとと締め上げた方がええよ」
里美さんもなかなかに殺る気である。いや、殺るまではいかないのかな?
そりゃあまあ私だってセクハラ紛いのことをされ……てないな。いや、バストサイズについての言及は立派なセクハラだよ!
かと言ってこの世から存在消したい程かと言うとそうでもない。ほら、私、成長期だし。まだまだこれから大きく……ね?
「それじゃあこの場でやってしまいましょう」
周りの景色が暗転した。おおっ、これは空間移動系の魔法? いや、それなら私が分かるし、なんの反応もないまま転移とかは無理なはず。空間にゆらぎも歪みもなかったから。
「暗幕張っただけです」
「ま、まあ。そらでも手が早い。縛っとく?」
「それじゃあお願いします」
ニアを呼び出して縛らせるのもどうかと思ったので里美さんに縛ってもらった。「慣れてますから」と言ってくれたがとても上手い。人を縛るのがなれるってどういうことだと思う?
「部長さん、起きてください。朝……じゃありませんけど起きる時間ですよ」
「ううーん……あ、お前ら、放せ、解け! こんなことしてタダで済むと思ってるのか!?」
まあ口から出たのは陳腐な脅しですけど。
「誘拐したところでバレるぞ」
「バレるならバラバラにバラしちゃえばいーよね」
無邪気に笑ってるが留玉臣は本当にやるだろう。
「ま、待ってくれ。そうだ、死体が残ったらどうしようもないだろう?」
「あー、じゃあ若頭の黒木さんに頼んどこうかな」
「く、黒木ってあの神戸の大組織の……なんでこんな田舎町に来たのか分からないくらいのエリート……」
間違いなく私のせいです。本当申し訳ない。まあそれはそれだよ。
「その、私はどうやったら助かるんでしょうか?」
あ、弱気になった。ガクガク震えている。
「選択肢としては
一、私たちに仕事を発注。値段も値引き無し。この事を誰にも話さない
二、誰かに話して私たちを捕まえる。その場合、間違いなく貴方の命で償ってもらう。私らはなんとでもなる
三、今すぐ役所辞めてどこか遠くの街へ。私たちに出会ったらその時が本当の最期
どーれだ?」
「あ、はい、一番で。間違いなくお仕事発注します!」
「よろしい」
私たちは彼の縄を解いてあげた。その上で言う。
「このまま解放しても多分喋っちゃうと思うから、一度だけチャンス。そのまま逃げてもらってそれを私たちが追い掛ける。誰かに喋ろうとしたらその時点でアウト。そうでなければ一時間後に私らが追い掛ける。八時間……いや、五時間逃げ切れたらお咎めなし」
「えっ、あ? おおっ!?」
「ほら、始めるよ。いーち、にぃー」
部長さんはあっちへふらふらこっちへふらふらしながら料亭を出て行った。
「じゃあ二人とも、待っててね」
留玉臣はそう言うと後を追う様に飛び出して行った。私ら? ええ、お部屋の片付けして料亭の方にお詫びして、食事代と迷惑料払って……散々だったよ!




