769:無職じゃないし英雄でもないよ
この物語はフィクションです。実在の宗教などとは一切関係ありません。
「ロニちゃん、みぃつけたぁ」
シスター服の女性の声色は大変のんびりしたものだがロニさんがガタガタ震えている。
「あの、どちら様で?」
「あなたには関係ないでしょぉ」
手に持ってる黒い剣を私に投げた。って、ちょっと待てや! そもそもなんで剣がこんな所にある訳? 普通銃刀法違反で国内には持ち込めないよね? それなのにこの襲撃者? は堂々と持ってる。これが普通と言えるだろうか? いや、言えない(0.4秒)
何はともあれ、投げられた剣を何とかしなくちゃ。溶かす? でもいきなり蒸発させるのは変だし、風の精霊さんに吹き飛ばして貰う? いや、室内だと他のものも吹き飛んじゃうから却下だ。アースウォールは……スピード的に間に合わないしそもそも地面が無いから使えない。となると水で薄く膜でも張るか? あ、ダメだ、ぶつかる。ママ、先立つ不幸をお許しくださいってそんなことでママと離れ離れは嫌だよ!(0.6秒)
剣は私にぶつかりそのまま床に落ちた。
「えぇ!? なんで黒剣が弾かれてるのぉ?」
私もなんで? 今のは完全に串刺しコースだったよね? 焼き鳥は塩の方が好きだな。
「得体がしれない。最初は牽制だったけど今度は本気で!」
シスター服の女性が今度は両手に持てるだけの黒剣を持って、私に突き刺さるように投げて来た。視界の端では私のところに飛び込もうとするハルをロニは必死で止めてた。まあハルだとダメージ負っちゃうのかな? ロニさんの判断に従おう。
キンキンキンキンキン。あ、チャンバラシーンじゃないです。私に黒剣がぶつかって落ちた音です。
「なんでぇ!?」
シスター服の女性は右左と交互に黒剣を投げまくる……一体いくつ持ってんだよ。無限に剣製でもしてんのか? しかし、その全ては私に刺さらずに落ちる。
「嘘でしょぉ……何よ、このバケモノはぁ!」
「いや、あなた、バケモノって人の家にいきなり乗り込んで来てなんて言い草よ」
「我らは主の代行者。神罰の地上代理人。我らが使命は我が主の前に立ちはだかりし愚者を、その肉の一片までも撃滅せしめること。エェェェェェイメェェェェェェン!」
えーと、ヘル〇ングの愛読者ですか? ところどころ違うけど。
「あー、こやつはなあ、「バチカン」のイヌじゃ」
「つれないこと言うじゃありませんかぁ、ミスロニ。永ぁい付き合いでしょぉ?」
「わしはお主と長い付き合いにはなりたくなかったがの……」
なんかすっかり世間話モードになってるからそれなら中で話してもらおう。どうやら黒剣とやらは私には何故か効かないみたいだし……黒剣? あっ、剣か! そういえば私に剣は効かないって誰か言ってた様な気がする。レーヴァテイン恐るべし。いや、天叢雲剣の方か?
「改めましてぇ。聖教奇跡認定課。対魔物殲滅部隊、聖人アナスンと申しますぅ」
「あ、はい、ご丁寧に。私、こういうものです」
「銀行? テラーって店頭の受付? 単なる下っ端ぁ!?」
「あ、はい。そうですね。出世欲とかはありませんし、多分今後も普通の行員として……」
「普通の行員は私の黒剣を全部叩き落とせないわよぅ!」
なんか涙目で睨まれてる。
「極東でロニが眷属を増やしたと聞いて飛んできたらこんな得体の知れないバケモノを眷属にしてるなんて……」
「いや、別にこやつは眷属でも同族でもないんじゃが……」
「眷属じゃないのぉ!?」
あ、ちょっとほっとしたみたい。




