768:井上喜久子さん十七歳
アニメ化とかそんなのは全く考えてませんよ?
中野開作の教団の件がひと段落して、日常が戻って来た。でも私たちにはやらなきゃいけない事がある。
「香子ちゃんを崑崙に連れて行く」
「えー? 夏休みとかでいいんじゃなーい?」
今からだと学校休めないし、私もそんなに仕事に穴を開けるのは無理だ。いや好き放題やってるけど成果は出してるからね?
「まあ六月は祝日もないもんなあ」
「そーそー、それそれ。はぁー、だっるぅー」
「いや、ハルはカレンダーで仕事してないでしょうが!」
「いやほら、株式市場は暦通りだからさー」
正直ハルが直接手掛けなくてもそこそこ維持はできるらしい。でも、ハルの動物的カン(と本人は言ってるが経験と知識から来るものだろう)が働くと莫大な利益が出るそうな。
「ひとみんが休めないんなら真面目にやろうかなー」
「いや、まあお金はいくらあっても困らないっちゃ困らないけどさ。その、大丈夫なの?」
「うーん、今は肉体的にも大丈夫になったよー。そもそも私が引きこもってたのは命の危険が身近だったからだもーん」
なんですと! いやまあ私がハイエルフになってからは随時ハルの周りに結界は張ってたけども。ロニさんの襲撃事件の時も最初自分が狙いだと思ってたらしい。
「今はこーんな身体になったからー、そんじょそこらの暗殺者じゃビクともしないけどー、その代わり、退魔師とかそういうのはダメなんだよねー」
「退魔師とか、来るの?」
「出先で時々出会うかなー。でもだいたい私に近づいて来る時にひっくり返って倒れるんだけどさー」
風の精霊さんにそういう風にしてくれとは言ってあるが、という事は今までは私が出向くまでの奴は出て来てない訳か。
「でもまあ、教団、潰しちゃったからねー。あいつら狂信者だからさー」
「いや、さすがに狂信者は言い過ぎじゃ……」
「マヤとかアステカとか滅ぼしたり、十字軍で難癖つけて土地を奪おうとしたりしたのは奴らだよー?」
言い方! いやまあ確かに宗教的な対立で戦争起きたりしてるけども。
「そんなだからさー、多分本格的に来ると思うんだよねー」
「それにはわしも同意するぞ」
ロニさんが会話に加わって来た。さっきアイス食べながら寝るって言ってたよね?
「クルースニクだけならまあなんとでもなるが、今回、使徒まで倒したのじゃろう? ならばバチカンが動くぞ」
「バチカン?」
「聖教奇跡認定課。対魔物殲滅部隊という所じゃ。わしも昔出会ってほうほうの体で逃げたわ」
「ロニのそれは自業自得じゃーん」
「だって、持っとった食い物が美味そうでなあ」
「だからって奪い取るとかじゃなくて催眠暗示掛けて代金だけその人に払わせるとか鬼畜の所業でしょーが!」
「まあ金をちょうど持ち合わせておらなんだしな。それに男というのは女に貢いでこそ価値があるんじゃろ?」
いつの思想だよ、って思ったら昔のマンガを読んだらしい。大変癖の強いマンガですこと。私はやっぱり「星の瞳のシル……」
「ごめんくださーい」
「おや、誰か来たようだー」
「ハル、フラグ立てようとするのはやめて」
インターホン越しに対応するとニコニコしながら立ってるシスター服の女性。優しそうな雰囲気の人だな。イメージ声優は井上喜久子さんだろうか?
「なっ、なっ、なっ、こやつ、まだ生きとったんか!」
ロニさんが分かりやすく狼狽していた。一体なんなの?




