767:山林を手に入れる為に
勝手に住み着きゃいいじゃんって意見もあるかとは思いますが、安全は大事。
「ほほう? それが街を破壊する事になるって思わなかったの?」
「人間に配慮する気はありませんでしたので」
「この街が私の住んでるテリトリーって事は?」
「え?」
「わ、た、し、の、テリトリーに手を出したんだからそれなりの対処をしないとねえ」
「しししし知らなかったのです! 本当であります!」
「香子ちゃんの知り合いの天狗さんだから一回くらいは大目に見てあげても良いけど」
「本当でありますか?」
「その代わり、仕掛けた爆弾全部回収して来なさい。三分で」
「え? いや、そんなの無理……」
「とっとと行きなさい!」
「ひぃー!」
まあ鴉天狗とそんなコントを繰り広げていた。使徒エリエルは呆然と見ていた。目の前で何が起こってるか理解の範疇を超えたのだろう。
「ひとみん、あいつらやっちゃう?」
「いやまあ人外なら蒸発させたところで構わないんだけど、他の教団の情報も吐かせたいし、何より事件解決は人間に任せたいんだよね」
人間、すなわち地元の警察官に任せたいというのは事を大きくしたいため。そして揉み消ししやすくするため。つまりはこれは「撒き餌」だ。
しばらくして鴉天狗たちが戻って来た。手に手に爆弾を持っている。三分にはちょっと間に合わなかったけど流石に無茶振りだったからね。
「これで……よろしいでしょうか? いえ、時間が間に合っておらんのは承知の上です。しかし、とてもではありませんが三分などとどだい無理な話でした。どうぞご温情を賜りますよう……」
「分かった。じゃああんたらはもう帰って良いよ」
「なっ、我らの報酬は……」
いや待て。そもそもテロリズムに手を貸して成功報酬で仕事を受けたんじゃないのか? それを私たちが出す理由は?
「太郎丸、呼んでくる? 直接話してあげるけど?」
「いえ、多分、太郎丸さんは来れないかと」
「なんで?」
「鈴鹿坊様がつきっきりで鍛えている最中なので」
あー、あのじい様か。それならまあ仕方ないか。そのうち香子ちゃん連れて遊びに行ってやろう。
「しかし、それでは山林が購入出来んのはどうするのだ?」
「うーん、今のところだと山林使用は多分認められないんだよね。国有林だろうから」
「うんにゃ、あの辺は私有林だよー」
ハルが助け舟を出してくれた。
「まあそこまで高くないからちょっとした範囲なら十万単位で買えるよー」
山林ってそんなに安いの?
「そりゃあ住宅地にして売るとか出来ないからねー。産業廃棄物処理場とかソーラーパネル設置とかが流行った時は高かったみたいだけどねー」
となれば鴉天狗たちでも頑張れば稼げる様になるのか。よし、ならば鴉天狗たちが稼げる仕事を探そう!
「あのー、ひとみさん? ここの教団の資金はどうするのですか?」
「そりゃあこんな所に置いとけないでしょ。こいつらが金持ったら何するかわからんし」
「その、教団の資金を山林購入に使っちゃダメなんですかね?」
葵さんの指摘は至極もっともだった。私たちが持って帰る訳にはいかないもんね。となるとどこかに寄付とかになるけど贈り主を詮索されても困るし、出処を聞かれてもまた困る。どっかのファンタジー世界みたいに教会とかに付属してる孤児院があればそこに寄付でもいいんだけど。いや、宗教はダメだ。
「鴉天狗たち、このお金、持って帰って良いわよ」
「まことか!?」
「鈴鹿坊によろしく言っといてね」
「承知!」
こうして教団の支部は壊滅したのだった。




