736:対峙
えーいめーん!
先ずはオッサンだけを入らせた。中には外科主任教授と思しきインテリメガネジジイが居た。
「あのう、失礼します」
「なんだ? お前は……ここに顔を出すんじゃない!」
「いえ、そういう訳にもいかない事情がありまして」
「なんだと? 飼い犬のくせに生意気な。一体何が起こったというのだ」
「はい、侵入者が実験体を狙ってきておりまして……」
実験体。恐らく真那さんの事だろう。込み上げてくる怒りを何とか抑えて話を聞く。
「あれはエレベーターに乗らんと辿り着けんだろうが」
「はあ、そうなんですが、様子を見て来いと言われまして」
「誰にだ?」
「えーと、その、なんというか……」
外科主任教授が明らかにイライラして来た。短気なのかな?
「わかった。お前は護衛につけ。私が見て来る」
「はい、お願いします」
そうして外科主任教授とオッサンは連れ立って行った。私たちは認識阻害で見えなくなってからついて行く。
エレベーターの前まで来るとネームプレートをかざして中に入った。そしてパネルの部分に右手をくっつけた。
「指紋認証確認。エレベーター、起動します」
「よし、地下研究施設は すぐだな。それじゃあ着くまでに説明してもらおうか」
「説明しよう!」
エレベーターの中で姿を現す。
「なっ、なんだお前は!」
「通りがかりの正義の味方だよ!」
「正義の味方だと!?」
「そうだよ、こんな事も出来ちゃうのだよ」
水球を生み出し、外科主任教授の頭に被せる。
「モガーッ」
ゴポゴポと何かを訴えていたようだがそのまま気絶してしまった。
「ありゃ、なんか言ってたみたいなのに気絶しちゃったよ」
「そりゃあ顔面を水で覆われれば誰でもああなるかと思うんですけど」
えーと、帰りに外科主任教授が必要になるかもだからこのまま連れて行こうか?
「あ、私持ちますね」
楓ちゃんが小脇に抱えてくれた。正直邪魔だったんだよね。
エレベーターから降りて辺りを見ると白い廊下だった。他に装飾らしきものは何も無い。他に道もないしまっすぐ進んでいく。ガラスらしきものがはめ込まれた壁があった。なんか中に寝かされている女性が居る。あれは……どことなく今日香ちゃんに似ているような。という事は彼女が真那さんかな?
「どこにも入口は無いみたいですよ」
「うーん、力技て破る訳にもいかないから先に進もう」
そこを通り過ぎて行くと徐々にドアが増えて来た。一番手前のドアを開ける。うーん、倉庫のようだ。
次のドア。仮眠室のようだ。誰も居ない。ベッドが二つ置いてある。他に出口も無いので先に進む。
更に次のドア。なんだ、ここ。教会? 礼拝堂? 十字架がある。どっちかと言えばカトリックっぽいんだけど。
「おや、珍しい。お客様ですか?」
怪しげな司祭がいつの間にか現れ、声を掛けてきた。嘘、私たちの誰も反応出来てない?
「ちょっと迷ってしまって。人を迎えに来たんですけど」
「ほほう? と言ってもここには人はおりませんが」
「あなたが居るじゃない」
「そうですね。あなたも居ますね」
「ふふふ」
「ははは」
警戒しながらのやり取りをしながら相手を見る。相手は一人。しかし、得体の知れない怪しさは残っている。それにいつの間にここに来たというのか。
「さて、久々に談笑しました。そろそろお暇していただけませんか?」
「……真那さんを返してくれたらね」




