735:無駄な手続きが多いのは仕方ないよね
なお、医局長は医局の雑用係、現場監督みたいな立場なんだとか。
「それならさっき居たオッサンの手を切り取って来るねー」
おい、待て、ハル。さすがにそういうのはやめてくれ。それに実はダメでしたとかなら徒労になるし。
「んー、じゃあどうするー?」
「とりあえずその辺のやつ締め上げて役員の場所を聞こう。ちょっと、そこの雑魚どもから適当に見繕って」
「オッケーです。こいつでいっか」
むさい男のうちの一人を楓ちゃんが叩き起こして白状させる。
「な、なんだ……あっ!」
「どうも〜」
「よっ、寄るな、バケモノ!」
「傷つくなあ。ちょっと銃弾弾いたくらいで」
銃弾弾くのは立派なバケモノだと思うけど、私も同じような事は出来るからなんにも言わない。
「頼む、見逃してくれ。十を頭に十二人の子供が……」
「数合わなくない?」
「双子が居るんです」
「なるほど……じゃなくて! ほらキリキリ吐かないとどうなっても知らないよ?」
「オレはここに忠誠を誓っている。裏切る事は……」
「奥さんと子供は良いの?」
「いや、まあ、そうなんだが……」
もしかして、こいつ……
「気を付けて、こいつ、時間稼いで仲間が来るのを待ってるんだわ!」
「はっはっはっ、その通りだ! 救難信号は送ったからな。ここに待機していた倍の人数がここに雪崩込むぞ!」
なんだ、倍程度か。そりゃあまあこんなド田舎でそんなに人が居るはずも無いか。
「って事はさっきの家族の話は?」
「うるせー、こんなド田舎でこんな仕事してて結婚出来るとでも思ってんのか!?」
結婚出来ないのは仕事のせいというよりこの人の性格からだと思うんだけど可哀想だからそっとしておいてあげよう。私も結婚してないし……してないよね?
いや、まあ、ハルたちがお嫁さんになってくれるのは吝かでないんだけど、私がなりたいのもお嫁さんなんだよねえ。そこまで結婚願望強くなかったんだけど。
それより増援だ。まあ来るのわかってるならそのまま対処すれば良いだけだけど。あっ、来た。っていきなり一斉射撃!? こっちの味方の生存も確認せずに?
仕方ない。火の精霊さんたちに頑張って貰おう。ほーら、炎の壁だよ。弾丸通らないねえ。
「ひとみさん、熱いです」
「あ、ごめん。そっちの熱は遮断しとくね」
炎の壁に指向性を持たせた。これで向こうの部隊を襲うよ。
「なんだこりゃあ……オレは夢でも見てんのか?」
「悲しいけど、これ、現実なのよね。それじゃあ役員のところに案内してくれる?」
「わかったわかった。その代わりオレには攻撃を……」
「さっきみたいに騙そうとしなきゃ何もしないわよ。ほら、キリキリ歩け」
男を先導に階層を上がっていく。
「エレベーターじゃだめなの?」
「各階に先回りされてるかもしれんし、閉じ込められても面倒だ。なら階段の方がいい」
「まあ、上るのが少しなら構わないけど」
言いながら他のみんなに重力軽減をかけてあげる。実家に連れていく時にかけているやつだ。これで負担は十分の一くらいだね。
「ここだ」
辿り着いたのは十一階。だいぶ上ったよね。役員専用フロアらしい。
「この階から上に居るやつなら誰でも大丈夫だと思うぜ」
「まあ、二度手間も嫌だし、このフロアの一番奥に居るやつにしましょう」
「一番奥?」
「偉いやつ程奥に行くから」
「……まあ、そうだな」
目の前にあるプレートには「外科主任教授」と刻まれていた。ここなら問題無さそうだ。でもまあ医局長とか出てくるかなと思ってたけど。




