727:できない我慢に挑戦中
悟君は英語が苦手という裏の設定が……(多分出ない)
「お兄ちゃん」を中に通して肉じゃがを振る舞う。「お兄ちゃん」は訳が分からないという表情をしながら肉じゃがをぱくり。
「うわっ、なんだこれ?! めちゃくちゃ美味いんだが!」
「あー、お口にあった様で良かったです」
いや、男の人に褒められてもそんなに嬉しくはないんだけど不味いって言われるよりはマシだよね。いや、だから、今日香ちゃん? なんで私を睨んでるの?
結局用意したご飯を今日香ちゃんと明日香ちゃんはおかわりしてごちそうさま。「お兄ちゃん」もおかわりしたそうにしてたけど遠慮した様だ。
「それであなたは何者なんですか?」
「それを聞くならまずご自分から名乗りませんか?」
「失礼しました。医学部三年の御堂悟と言います」
ほほう、医学部生とはエリートだね。一年は本学だからこっちに来てもうすぐ一年といったところか。
「えーと、私は霜月ひとみ。職業は銀行員よ」
「銀行員の方がなんでここに?」
「ええ、実はこのアパートに立ち退き要請が出ててね」
それを聞いた今日香ちゃんは私の事を一層睨みつけた。
「私は、私たちはここから動きません! お母さんが帰って来れなくなっちゃう!」
「あー、うん、それは私もわかってるから立ち退けなんて言わないよ。出来たらお母さんも探したいくらいだけど」
「えっ!?」
私の言葉にびっくりした様だ。今日香ちゃんの目が丸くなってる。明日香ちゃん? 明日香ちゃんはずっとニコニコしてるよ。
「それで医学部生あなたがなんでここに?」
「その、僕は実はこのアパートの一階に住んでたんです。でも、一年もしない内に別の場所をと言われて……二人とはその頃に挨拶を交わす程度の仲でした」
「あ、あれ、お兄ちゃんだったんだー」
どうやら明日香ちゃんには認識されてなかった様である。今日香ちゃんは……首をひねってる。おい、それでいいのか?
「えーと、それで別の場所に住み着いたものの、前のアパートが気になって見ていたんです。廃棄の弁当をもって。そしたら今日香ちゃんと明日香ちゃんがお腹を空かせて居たので……」
それでコンビニ弁当あげたら満面の笑顔で喜ばれたらしい。それで悟君はもっとその笑顔を見たいと廃棄を出すのに一生懸命になっていたそうな。ちなみに売り上げは少し上がっていたらしい。
「でも、売り上げが上がっても廃棄は見過ごせないという事で、大量の廃棄を出すに至った発注をした僕がクビになったということです」
クビになった後はなかなかバイトが見つからなかったが、引越し屋の臨時バイトが決まって働いて手に入れたお金で二人にご飯を食べさせようと思ったそうな。
「僕の食費も自分で稼いで奨学金ももらってますからなかなか二人の分を稼げなくて」
医学部と聞いていたけど苦学生の様だ。金持ちのボンボンばかりかと思ってたよ。
「ん? でも引越し屋のバイトは臨時だったんだよね? 次のバイトは決まってるの?」
「いえ、実はまだ決まってないんです」
これから先、医学部って事は確実に忙しくなる。つまりそんなに時間は取れない。てことはバイトによってはこの子たちに会えなくなるかもしれない。ああ、だからバイト代持って「最後の晩餐」をしに来たのか。
「よし、わかった。じゃああなたは明日もう一度ここにこの時間……あ、いや、今日の夜で良いか。夜の八時頃にここに来てくれる?」
「え? ひとみさん?」
「今日はわたしもおきとく!」
明日香ちゃんが起きておく宣言をした。そうかいつもは寝てる時間なのね。




