1157:強欲(マチェ子)
強欲と書いてマチェ子と読む(嘘)
あれからレミーさんは毎日喫茶店に来るそうな。毎度ありがとうございまー。レミーさんが来る事でレミーさん目当ての男性もちらほら来るんだそうな。
お子様連れのお母さん方には子供預けて良いから席を空けて貰うようにお願いした。これなら奥様方は夕飯の買い物とか子供の面倒見なくても出来るし、悪くない。
ご年配の皆様方には特には思いつかなかったので困ってたんだけど、何仙姑さんが協力してくれて鍼灸と漢方をサービスしてくれる事に。お店は隣の店舗が空き家なのでそこを借りた。
マチェ子さんが毎度ありって言ってたので間違いなくマチェ子さんの物件だ。ていうかどんだけ物件持ってんだよ。
さて、そんなこんなで客足も増えて売り上げには歴然たる差が出来た。一ノ瀬兄弟はとても悔しそうだ。
「悔しいが俺たちの負けだ」
「ああ、お前らの言う通りにしよう。だが、兄さんの残り少ない髪の毛だけは勘弁してくれ」
「なっ、なんだと!? これは……地毛だ!」
「誤魔化さなくても良いんだよ、兄さん。全部わかってるさ。ぷぷっ」
「貴様! 許さんぞ!」
あの、お白州で兄弟喧嘩するのやめて貰えます?
「そうねぇ、勝者はひとみさんだけどぉ、要求は私からさせて貰うわぁ。あんたら、店を一つにまとめて兄弟で喫茶店経営しなさぁい」
「はああああ!?」
「そ、そんなこと出来るわけ……」
「男に二言はないんでしょぉ?」
言葉につまる二人。更にマチェ子さんは続ける。
「だいたいねぇ、分けて店出させてあげたのもぉあんたらのお父さんがぁこんな事があるかもだからってぇ、頼んできたのが原因なんだからねぇ」
どえやら二人の不仲はお父さんにはお見通しだったらしい。
「見込みがあるならぁ続けさせてやってくれ。だけどぉダメなら好きな方を潰していいってねぇ」
最後の望みに賭けて二人が仲直りするか、どっちかが潰れてしまうかやらせてみようと。
「でもぉ、本当はねぇどっちも潰しちゃおうかと思ってたんだぁ。ちょうどこの地域の再開発の話も来てたしぃ」
それでもマチェ子さんはやらなかった。それは最後の良心なのか、それとも二人に対する愛情なのか。
「再開発地域がズレてたからぁ、店舗的には残るのよねぇ、この辺りはぁ」
個人的な都合かよ! 単なる欲得尽くかよ。いや、きっと照れ隠しだな。素直に二人の行く末が心配だった……とかだよね? 信じてるよ、マチェ子さん!
「二人がぁ、力を合わせてぇ、喫茶店やったらぁ、昔みたいにぃ、お客さん増えると思うなぁ」
「……やってみるか」
「やってみよう、兄さん!」
一ノ瀬兄弟は手に手を取り合い協力する事を誓うのだった。
「じゃあお兄さんの方の店はとっとと潰すから今月中に出て行ってねぇ」
「え? 今月中って今日は二十九日なんだが?」
そう、本日は六月二十九日。ナターリアの誕生日である。あ、いや、ナターリアは関係ないけど。つまり月末間近なのである。というか六月は二四六九十一だから三十一日まで無いんですよ。
「あの、もしかしてこっちのお店も明日までですか?」
「あ、ひとみちゃんたちはいいのよぉ。あんなに売り上げ出してくれてるんですものぉ。家賃とマージンさえくれればねぇ」
マージンまで払うの!? あ、いや、確かにマチェ子さんのお陰で儲かっているかはともかくとしてうりあけは上がってますけど……




