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レトロ殺人RPG【最終回 執筆済】  作者: 凛1129
一章 排他的世界
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8話 くノ一のエリー


 ◇


「やっと見つけた! 夜はバーにいたのね?」


 ミヤビと行きつけのバーで飲んでいると、宿屋で男どもに辱められそうになっていた、あのピンク髪のくノ一に声をかけられた。


 アプサラスと契約してから、もうすぐ一週間。昼間は町の周辺でミヤビがまだ戦ったことのないモンスターを探して熟練度を上げ、夜になればこの場末のバーで酒を飲む。そんな生活を毎日繰り返していた。


「おっ? まだこの町にいたんだ? 結構図太いくノ一さんだな、ハハッ」


「いや、せめてお礼くらい言わせてよー! まさか助けてくれるにしても、いきなり人間の首を刎ねるクレイジーなヤツだし、言いそびれちゃったよ!」


「律儀なこった」


「君、迦楼羅って言うんでしょ? 町でもちょっと名前が売れてるからビックリしたよ。アタシはエリー。よろしくね」


「ああ」


 そこからエリーの独演会が始まった。


 生まれはアメリカ、アラバマの片田舎。このゲームには自ら参加を希望したらしく、その動機は――。


「だって『ニンジャ』になれるんだよ?」


 だそうだ。


 俺からすれば、そんな動機でこの殺人RPGに参加するほうがよほどクレイジーなのだが、やたらと露出が多く、とても忍とは思えない格好を見る限り、本人なりの『ニンジャ』像には忠実なのだろう。


 エリーはリタイア組ではない。


 元々は仲間と冒険を続けていたが、その仲間たちが三つのハートをすべて失い、今は一人になってしまったらしい。それから冒険者の町に滞在し、新しいパーティから声がかかるのを待っているそうだ。


「そこでだ!アタシのハート三つを鷲掴みにした迦楼羅のパーティに入ってあげるよ!」


「いや、間に合っている。お構いなく」


「えーー!いきなりコクるのー?ダメダメ!絶対ダメ!」


「ミヤビ……これ……コクっているのか?」

 俺には全く理解ができない。そしてエリーも変わらず自分のプレゼンを続けていく。


「アタシ結構優秀だよ?プレイ前も大学首席で卒業してるしね」


「えー!エリーさん大卒なんですかー?ちょっ、大卒の人初めて見ました!アプサラスは大卒だったの?」


「ノーコメントじゃ!」


 なるほど、タダのバカじゃない。

 トークスキルは元々高学歴によるものか……


「いや、ウチは俺以外、ヒーラーしかいねーんだ、探しているのはタンク系、もしくは後方支援可能なメイジとか弓とかそういう類だ」


「うんうん、アタシのことね?」


「はあ?どこがだ、しかも寡黙なタイプを俺は希望している」


「知ってる知ってる! 日本人っぽいね! アタシにピッタリだよ!」


 これ以上何を言っても、この調子ではぐらかされるだろう。正直なところ気が合いそうではないが、バカではないのだから真剣に向き合ってみることにした。


「エリーと言ったか? 俺はこのゲームに参加してから、ある一人の女性冒険者とパーティを組んでいた。だが彼女は死んだ。ハートを全部使い切ってな」


「……」


「その仲間を俺は食った。お前が話しかけている殺人狂の俺は、そういう男だ」


「うそ……」


 いつもなら茶化してくるミヤビも何も言わず、アプサラスも黙って聞いていた。

 エリーからも、さっきまでの軽い調子が消えた。


「……アタシは食べなかった。でも、仲間が死ぬところは見てる」


 エリーは少しだけ天井を見上げ言葉を選ぶように続けた。


「アタシだったら……どうせ死ぬなら、仲間に残さず食べてほしい……かもな」


 ◇


「迦楼羅さん、起きてる?」


「ん? どうした? 寝れないのか」


「うん。怖くて寝れなくて……一緒に寝ていい?」


「……」


 返事も待たず、ミヤビは俺の布団をめくって潜り込んできた。


「エリーさんに話したこと……あれ……ホント?」


「……ああ」


「想像もつかない話だったよ……」


「だろうな」


「迦楼羅がもし死んじゃったら……食べてほしい?」


「どうだろう。おっさんの肉は不味そうだけどな」


「フフッ、そういう問題なの?」


「どうすれば前に進めるのか……それは、生きている仲間が決めればいい」


 ◇


「改めて! 今日から世話になるエリーだ。よろしくね」


 宿屋の食堂の端っこで朝飯を食っているところにエリーがやってきて挨拶をした。


「迦楼羅さん! 質問があります!」


「不正解だ!」


「まだ何も質問してませんっ!」


「食べられるくノ一だからじゃない」


「なぜ質問がわかったのですか!?」


「あっ?なんとなくだ」


 こうして、俺たちは全く望まなかったくノ一とパーティを組むことになった。


 ある程度、忍術でもメイジと似たようなことはできる。素早く動けて、情報収集なども含めてオールマイティにこなせる職業が【忍】なわけだが、イマイチ、エリーはそこを分かっていないと俺は感じていた。


 三人いるうえ、常に出しっぱなしの精霊もいるお陰で実質は四人と変わらない。だから次を目指しても良かったのだが、不安を残したまま進む気にはなれなかった。


 ◇


 俺たちは町の外れにある大きい広場に向かった。


「エリー、早速で悪いが、次の町へ行くにはお前の戦力が問題だ」


「はあ? それはないよ〜。アタシのせい?」


「いや、多分頭はキレるエリーだからこそ、俺の言いたいことが分かると思う」


「……どういうこと?」


「まず俺を殺せ」


「パーティ組んで初日で殺し合い? どうかしてるよ」


「俺もエリーと同じ、ハートは三つ残っている。つべこべ言わずに殺せ。さもないと俺がお前を殺しちゃうぞ?」


 俺が刀に手をかけて剣気を放つと、エリーの目が変わり、腰を少し落とした。


「そう……それで良い」


「腕試しってことね? 良いわ。遠慮なくいくわ」


「【火遁】!」


 エリーが印を結ぶと、吐き出された炎が一気に膨れ上がった。渦を巻く火炎が視界を埋め、そのまま俺を呑み込む。


 俺は躱さなかった。


「バカ! なんで動かない!」


 炎が消えるより先にエリーが駆け寄ってきたが、その足は俺の姿を見たところで止まった。


「そんな……直撃したのに……」


 服の表面が少し焦げた程度で、身体には大した傷もない。

 

「分かったろ? 頭がキレて器用だと、それぞれの技も中途半端になりがちなんだ、この世界は」


「確かに人間や獣人相手なら、炎が派手に渦を巻いて自分に突っ込んでくれば、実際以上のダメージを()()してくれる可能性はあるが……続けるか?」


「いや……本能で動くモンスターや魔獣、それに熟練度の高い人間や獣人には、牽制でしか使えない……ということ?」


「御名答だ。忍をパーティに入れる以上、戦闘以外はエリーなら大丈夫だろう。だが、いつだって俺たちが死ぬときは戦闘中だ。一切攻撃をさせず、回復に全振りしているミヤビにとって、今のエリーでは足りていない」

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