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レトロ殺人RPG【最終回 執筆済】  作者: 凛1129
三章 選民的世界
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12話 アダムとアレだ!


 事前にエリーの精霊アネモイが偵察し、報告してきた【五重の塔】らしき建物に辿り着いた。


 周囲には南地区特有の建物がいくつも並んでいたが、塔の前だけは妙に広く開けていて、まるで最初からここで迎え撃つつもりだったようにも見える。


「ここか……」


 見上げても最上階まではよく見えない。ただ、アネモイの話が正しければアダムとイブはこの中にいる。

 俺は入口の大扉を蹴り飛ばして中へ入った。


 ◇

 

【リリー モンスター隊】

 

「魔王様! こっちに七人います!」


「ならマッソさんのところへ案内して」

 別のモンスターが駆け寄ってくる。


「リリー様! 南の奴が三人降伏しました!」


「南地区の人間は全員殺すと言われているのは、聞いているでしょ。いちいち僕へ確認しないで。聞いてる間に誰か殺されちゃう可能性もあるよ〜」


 そんなことを言いながら進んでいたリリーの目に、一人の死体が転がっている。


 刀傷を見ればすぐに分かった。

 進むにつれ、残されている死体が変わり始める。

 次は腕が落ち、その先では胴体までまともに残っていなかった。

 さらに進むと、元が何人だったのかさえすぐには分からないものまで地面に広がっている。

 

「迦楼羅……」


 ◇


【迦楼羅パーティ】


「この人たち本当に強い!」


 三人がかりでようやく南地区の男を倒し、エリーは荒く息を吐いた。


 精霊との誓約を終えた今でも、一人倒すのにこれだけ苦戦する。


「アタシたち三人でこれなのに……アイツどこまで行ったのよ」


 その時、マリムが前方を指差した。


「またあります」


 道端には死体が転がっていた。

 だが普通じゃない。

 四肢は失われ、何度斬られたのかも分からないほど滅茶苦茶に刻まれていた。


「……これ本当に迦楼羅さんですか?」


「刀使いでアタシたちより前にいる奴なんて他にいないでしょ」


 その時、近くの家から男が這い出してきた。

 左腕と右脚を失い、血だらけになっている。


「黒い影を纏った男だ……」


「刀を持った人?」


「ああ……笑いながら俺を斬りやがった。逃げても追って……」


 男はそれだけ言い残して顔から地面に落ちて息絶えた。


「……マリム、先に行って」


「えっ?」


 マリムは死体とエリーを怯えた目をしながら交互に見ている。

  

「このままじゃ追いつけない、早く!」


「……今は迦楼羅さん自身が心配です」


 ミヤビも結界を解きながら、周囲確認しながらマリムへ伝えた。


「……壊れちゃうってことですか?」


 ミヤビもエリーも答えなかったが、視線をマリムに合わせるとマリムは頷き、先へ走って行った。

 

 ◇


【五重の塔 1階 大広間】

 

「これ以上、上へ行くな」


 正面で待っていたのは、俺より頭一つ大きな男だった。武器こそ持っていないが、腕から肩にかけて異様に発達した身体には黒っぽい皮膚が浮かび、鎧を着ているというより肉そのものが硬質化しているように見える。


「楽しませてくれよぉ〜」


 俺は二十人ほどいる男の後ろにいる鎧を装備したデカい男へ勢いで突っ込んできた。


「もうすぐで……終わっちまうかもしれねーからよおー!」


 ◇


【マリム 五重の塔 1階 大広間】


「これは!」


 マリムは思わず手で口を塞ぎ、声が漏れるのを必死で押さえた。


 目の前にあるのは生涯で見たことのない肉塊の山。

 衣服や武器が落ちていなければ、人とは区別がつかないほど切り落とされている。


 マリムは階段を見つけ、恐る恐る登っていった。

 上がれば上がるほど肉塊の量は増えてゆく。


 ドォォンッ――


 さらに上から地が揺れるほどの衝撃音が聞こえると何かが崩れる音がする。


「迦楼羅さん!」


 マリムは叫ぶと顔色を変え、一気に階段を駆け上がっていった。


 ◇


【五重の塔 最上階】


 かわす間もなく左前腕へ直撃し、ギミックごと腕が千切れて飛んでいく。


「あ〜あ、また直さなきゃなんね……すいませーん、お楽しみのところ……邪魔したから怒ってんの?」


 そのまま俺はアダムへ一足飛びで飛びかかると、振り下ろした刀を素手で止められた。


「会った時より……随分と雰囲気が変わったが……(ヤク)でもキメてんのか? 家畜よ」


「ヘヘッ」

(どうでもいい!)


 左腕がなくなったことも、目の前でとなり女が裸で何か叫んでいることも、今は全部どうでもよかった。


【瞬天】を使い、部屋中を飛び回りながら右手一本でアダムへ斬り込む。死角へ回っても、足元へ潜っても、アダムは最小限の動きだけで刃をかわし、ときには素手で受け止め、返してくる。


 アダムの右手が俺の胸にそっと置かれると、そのまま衝撃が走り身体が壁まで飛んでいった。


「思った以上の戦闘能力……になったな……迦楼羅」


「グホッ……ハァハァ……まさかこれで終わりじゃないよな、アダム? こんなんじゃ全然満足できねぇ……ハァハァ」


 吐血?でも不快じぁあない。

 むしろ快感で死にそうだぁ……


『もっと』を求めると、いつもそう。

 斬れば斬るほど次が欲しくなり、止めたほうがいいと分かっていても、身体のほうが勝手に続きを欲しやがる。


「でも、しちゃいたいのだよ……こうなった俺は……グフッ……クックックッ」


 アダムの顔色が変わり、俺の顔を見て恐れを知った目へと変わっている。

 

「あ〜だめだよ、だめ!その目になったらお前はもう負けてんじゃ〜ん!」


「イヴ! コイツは俺の想定内を越えている! 一度――」


「【永眠……】」


 使ったことのないスキル名を口にした瞬間、視界から色が消えた。


 床も壁もアダムも、全部が灰色に染まっている。

 なのに俺だけは普通に動けた。


 目の前では、アダムが左へ飛ぼうとしている。その動きだけが、ひどくゆっくりだった。


「なんだこれ?これなら簡単に斬れるじゃねえか」

 俺はアダムへ近づき、逆袈裟に刀を振り上げた。


 ところが、遅いはずのアダムは僅かに身体を引いて刃をかわした。


「おかしいな……?こんなに遅いのに」


 そのまま踏み込み、頭突きを叩き込む。

 アダムの身体がゆっくり後ろへ揺れた。


 グフッ……いいねえ。

 斬り放題だ♪


 そこからは、どれだけ刀を振ったのか分からない。


 アダムの動きはいつまでも遅いままで、俺には次にどこへ斬り込むか考える余裕まである。何度刃を入れてもまだ動いているのが嬉しくて、もっと、もう一度と斬り続けているうちに、気づけば目の前の身体はもう人の形を保っていなかった。


 あれ?

 もう終わりか?

 もっと斬りたかったのに……。


 その時、灰色の世界の横に紫色の光が見えた。


 近づいているのか、もう食らったのか。

 次に何が起きたのかは分からなかった。


『迦楼羅さん!』


 声が聞こえた瞬間、灰色だった世界に色が戻った。


 壁のほとんどが壊れた五重の塔の最上階に、俺は倒れている。

 目の前にはマリムがいて、身体は指一本動かせない。


『【吸収】!!!!』


 巨大なスライムへ変わったマリムが、アダムを包み込んでいく。


 おお……なんだ、マリム。

 アダムを殺って、吸収までしているのか!?

 アダムを食ったら俺より強くなるぞ!

 やったなマリム! それでこそ義理の娘!


『迦楼羅さん!』


 おおっ? エリーよりミヤビが先に来たのか?


『【結界】!!』


 ミヤビが結界を張った向こうで、イブの周囲に紫色の光が集まり始めた。


「おのれ! 下等な家畜どもが! アダムより優秀なアタシを……倒せると思うな!」


 身体に少しずつ感覚が戻ってくる。


「寝ている暇はねえなっと!」


 起き上がると同時に踏み込み、紫色の波動を溜めていたイブの両前腕を下から斬り落とした。


「マリム! こいつも吸収しちゃいな!」


「はいっ! 迦楼羅さん! 【吸収】!!」


 マリムは再び巨大なスライムへ変貌し、イブの身体を一気に包み込んだ。


「ぎゃあああ……」

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