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レトロ殺人RPG【最終回 執筆済】  作者: 凛1129
二章 共存的世界
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11話 公務員になりたくない


 ◇


 調印式から一か月が経った頃には署名は四万を超え、それを正式な契約書へ変える作業に、俺たちもリリーたちも日々追われるようになっていた。


「なんか俺たち、クソゲームの中で公務員になったみてぇだな」


 そんな俺のボヤキをきっかけに、現在【役所】を建設している。


 理由は簡単だ。公務員の仕事が性に合わなすぎる。


「初心者の町から城下町までの道はほぼ完成した。ハイウェイみたいに隔ても作ってあるから、物流も人の移動もかなり安全になったと思う」


 もともとはリリーの提案で物流の安全を確保するために整備した道だったが、両側を隔てて設定モンスターが簡単に入り込めないようにした結果、冒険者の生存率まで大きく上がった。


 その効果が分かってからは東側でも同じような工事が進み、以前とは比べものにならないほど人間が動きやすい世界になっている。


 ここまで環境を整えれば、俺たち以外にも南北を攻略するヤツが出てきてもよさそうなものだが、依然としてそんな冒険者は現れなかった。


 そしてとうとう俺たちは、東と西を一つの連合としてまとめることに合意した。


 そもそもこの世界に東地区や西地区なんてものはない。それでも名前をつけて形にすることで、ここで暮らすヤツらにも【連帯感】を持ってもらおうというターシャとリリーの案だ。


 その【東西連合】が、明日正式に発足する。


 ◇


「やっと一冒険者に戻れそうで良かった。これで俺の役目も終わりそうだ」


「……」


 東西連合の発足を前に、リリーからトップ同士で一度、二人だけで今後の話をしたいと誘われた。


 トップなんて柄じゃねえと最初は断ったのだが、堅苦しい話ではなくカジュアルな祝勝会みたいなもんだと言われ、それならと魔王城までやってきた。


 ガイコツの側近に案内されて入った部屋を見て、俺は思わず足を止めた。


 淡い色の壁に小さな家具が並び、ぬいぐるみや人形まで飾られている。今まで見てきた魔王城のどの部屋とも違い、どう見ても幼い女の子が喜びそうな部屋だった。


 そんな部屋に一ミリも似つかわしくないワインが用意され、俺たちは二人で乾杯した。


「にしても変わった趣味の部屋だな。ここに来てから、こんなところ見たことねえぞ」


「僕の趣味だ……嫌いか? こういう部屋」


「いーや、久しく見てねえ光景だ。それに、酒さえあれば便所でもいいっていうおっさんに確認する質問じゃねーな」


「フフッ……便所って……ひどいな」


 二人で酒を飲んでいると、サキュバスの姿をしていても、中身はちゃんと人なんだと改めて思う。


 十七年以上この世界で生き、モンスターたちをまとめて魔王なんて呼ばれている女が、こんな子供っぽい部屋を好んでいる。それまで見えなかったリリーの一面を知れたことが、なぜか俺には少し嬉しかった。


「もう一つ」


 リリーが俺の目の前に人差し指を立てた。


「自分のことを……僕って言ってしまうのは……嫌い?」


「ん? ああ、それか……」


 以前、ボクっ子の女が嫌いだなんて言ったことを思い出した。


「慣れた。それに傷つけたんなら詫びるよ。軽口叩いて悪かったな」


 頭を下げて顔を上げたところで、目の前にいるリリーの輪郭が歪んだ。


「……ん?」


 一人だったはずのリリーが二人、三人と重なって見える。握っているグラスの感触まで薄れていき、腕にも力が入らない。


「そう……意外と僕は傷つきやすいんだ……」


「リリー……お前、なにを……」


「許してくれ……迦楼羅……」


 何を飲ませやがった。


 そう思ったところで、視界が真っ白な光に埋め尽くされた。


 ◇


 目を覚ますと、俺は柔らかいベッドの上に寝かされていた。


 身体はほとんど動かず、首だけを僅かに動かして周囲を確認する。灯りは消えているものの、月明かりに浮かぶぬいぐるみや小さな家具には見覚えがあり、どうやらさっきの部屋にあったバカでかいベッドへ運ばれたらしい。


「目……醒めたかい?」


「リリー、そこにいるのか? 俺になにを……」


「言ったろ? 僕は傷つきやすいって……」


 暗がりから現れたリリーが、そのまま俺の上に馬乗りになった。


 身体は動かねえし、相手は俺より遥かに強いサキュバス。こんなところで終わるのかと思ったら、怖がるより先になぜか笑えてきた。


「ヘヘ……悔いはないかな……好きにしな」


「ホントか!?」


「はあ?」


 予想していたものとはまるで違い、リリーは嬉しそうに俺へ唇を重ねてきた。


「僕は子孫がほしい! だからもらうぞ」


 言い終わるなり、また唇を塞がれる。今度は身体を動かせないこっちの事情などお構いなしで、殺される心配はなくなったのに、別の意味で普通に死にそうになってきた。


「ぷはぁ〜♪」


「おいっ、普通に誘え! 怖すぎるだろ!? 死ぬかと思ったぞ!」


「え〜、断られたら嫌なんだ。僕は傷つきやすいって言ってるだろぉ?」


「だからって――」


「Never turn down a chance to get some……」


「あ〜そぉ。……なら麻痺回復してくれね? ちゃんと食べるから」


 ◇


【ターシャ商会 無限平原】


「昨日は随分長いこと魔王城でお楽しみになったようですねえ……迦楼羅さん?」


 おお……なんかミヤビがイラついてる?


「朝どころか昼帰りか……念のため言い訳を聞こうか?」


 エリーもか。


 俺の部屋でコイツらなにやってんだ?


「言い訳ってなんのだよ?」


「白々しいわぁ……夜中何してたかを聞いてるのよ」


「エッチしたかですよ」


 まあ隠しても仕方ねえし、別にいいか。


「んー……子孫繁栄?」


「「はあああああ!?」」

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