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レトロ殺人RPG【最終回 執筆済】  作者: 凛1129
二章 共存的世界
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10話 魔王城 不可侵条約

 ◇


【魔王城 会議室】


「なんだと? 僕の希望以上の条件になっただと?」


「まあ、肌感だが中途半端にやってもここじゃ通用しないと思ってな」


 魔王城といっても、会議などそうあるものではないのだろう。


 通されたのは、これまで見てきた城内の豪華さに比べれば随分と狭い部屋だった。壁際には場違いなくらい大量の薔薇が飾られ、その香りが部屋中に漂っている。中央には豪華な長机が置かれ、その両側に椅子が五脚ずつほど並んでいた。


 リリーと側近のガイコツ。それに俺たち四人と、今回はマッソも連れてきている。


「それだけじゃない」


 羊皮紙とペンダントを渡すと、リリーはそこに描かれたものと手の中のペンダントを見比べ、目を丸くした。


「これは……」


「初心者の町で、新しくモンスターを選んだヤツに配ることにした」


 羊皮紙には本人の似顔絵とサイン、ペンダントにも同じ印を入れてある。これからモンスターを選ぶヤツが設定上の敵と間違われて殺されないよう、宿屋の店主マローニに管理を任せることにした。


「そしてマッソ、例のものを」


「御意」


 マッソが会議室を出ていき、しばらくすると廊下から車輪の転がる音が聞こえてきた。


 再び扉が開いた時には、大きな木箱を載せた台車を引いている。蓋を開けると、中には同じ形をしたペンダントが隙間なく詰め込まれていた。


「拙者のサインを施してある。リリー殿が管理しているモンスターたちも、これを身につけていれば元人間だと分かる。日が足りず、とりあえず五百個。納めてくだされ」


「…………五百?」


 リリーは木箱を覗き込んだまま、しばらく動かなかった。


「ちょっと待ってくれ! 僕はここまでされても、同等の対価と言えるものを返せないよ」


「いや、リリーはこれから嫌というほど忙しくなる……エリー、説明をお願いできるか?」


「うん、ちょっと待って」


 エリーは持ってきていた契約書と分厚い署名簿の束を机の上に広げた。


「死後、身体を引き渡してもよいとする署名一万人分と、不可侵条約の契約書です」


 要は死後の身体をリリーたちへ渡す意思確認と、人間側とモンスター側が互いに先に手を出さないための取り決めだ。


 その代わりリリーには、モンスターとなったヤツらの管理や育成を任せる。さらに外の世界を知るため人間と行動する者や、運搬などに協力する者も募ってもらう。


「こんなもので良いのか?」


「いや、あと一つ。東には炎を纏う武器を落とす、強い中ボスみたいなヤツがいたんだが、西にはいなかったか?」


「んっ? 強い中ボス……? いたかなぁ? 僕は見てないと思うけどなあ」


「リリー様、ポセイドンのことじゃないでしょうか。何度も復活するアレでは?」


「ああ、練習用の水のヤツか!」


 練習用だと。


 こいつらにとってどの程度ならそう呼ぶのか分からねえが、何度も復活するなら弁慶と同じ匂いがする。


「そいつ、なにか落とさなかったか?」


「水の防具になるのかな? 僕たちは装備できないし必要ないから……どこかに置いてたっけ?」


 ガイコツの側近が手配すると、数分後には四種類の装備が机の上へ並べられた。


 青みがかった鎧に盾、兜。それに腕へ装着する防具。どれも表面を薄い水が流れ続けているように見える。


「そうだ! 色んな種類が出てきて、最初は集めていたな! 思い出したよ」


 ◇


【ターシャ商会 無限平原支店 幹部室】


「ちょっと……これエロすぎません?」


 水の羽衣を纏ったミヤビを見ると、身体のラインが丸見えだった。薄い水が布のように全身を覆っているのだが、隠しているというより濡らしているだけにしか見えない。


 俺は酒を一気に飲み干して目を逸らした。


「いやあセクシー、セクシー! なんかファッションモデルショーみたいでいいよ?」


「いいねぇ! こんなの着て現れたら、萌系エルフで人気のあるミヤビならどんな男もイチコロよ!」


 エリーは手を叩いて笑い、ヒューヒューと指笛まで鳴らしている。ターシャまで完全に悪ノリしていた。


「え〜、そうなのぉ? じゃあ迦楼羅さん……今日これ着て……する?」


「ブッ!?」


 危うく酒を吹き出すところだった。


 見た目はともかく、水系装備の効果は凄まじい。


 特に回避率の上昇が異常に高く、サムライと忍の装備は小手だった。俺の場合は左腕がギミックになっているため片方しか装備できず、両腕に装備したマッソには及ばないが、それでも充分すぎる効果がある。


 その後、どのクラスで何を落とすのか確認するため、俺たちもポセイドンと何度か戦ってみた。


 リリーは『練習用』なんて言っていたが、とんでもねえ。単純な強さなら弁慶より上で、水を纏った身体は炎の武器とも相性が悪く、俺も初見では刀の炎を切って対応することになった。


 本来は先に西で水の防具を揃え、それから東へ向かうのが正解なのかもしれない。


 だが、それなら西へ進むほど設定モンスターが強くなっていた理由が分からねえ。攻略順そのものが決まっていないのか、わざと簡単には進めないようにしているのか。


 まあ、このゲームを作った野郎の性格が悪いことだけは間違いない。


 そしてもう一つ、ここ最近になって妙な変化が起きていた。


 初心者の冒険者が、以前とは比べものにならないほど増えている。


 始まりの町へ戻るたびに見たことのない顔が増え、ターシャ商会へ流れてくる新人も珍しくなくなった。何人かにこのゲームへ来た理由を聞いてみても、借金、金目当て、人生を変えたい、誰かに勧められたと答えはバラバラで、共通点らしいものはない。


 何が連中をここへ呼び込んでいるのかは分からない。


 ただ、俺がこの世界へ来た頃より、明らかに新しく入ってくる人間が増えていた。

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