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レトロ殺人RPG【最終回 執筆済】  作者: 凛1129
二章 共存的世界
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9話 同じ人間

 ◇


 翌日、俺たち四人は初心者の町へ向かった。


 ターシャを説得するのは難しかったが、最後には本店と支店へお触れを出すことを了承させた。


 初心者の館へ着くと、俺たちは掲示板に貼り紙を貼っていった。


【ターシャ商会利用について】


 死後、肉体を渡す契約をしない者は、今後ターシャ商会の利用を禁ずる。


 その下には、説明を行う日時と場所も記載した。


 ◇


 初心者の町の中央広場。


 町の中心にあるだけあって普段から人通りは多いが、広場の中央だけは露店も出なければ、立ち話をする者もほとんどいない。


 そこは、この世界に来て十年を迎えた者の死刑が執行される場所だった。


 中央には黒ずんだ石造りの処刑台があり、その周囲には何に使うのか分からない鉄の杭や、鎖を固定するための金具がいくつも残されている。処刑方法はその時にならなければ分からず、連れてこられた本人ですら、自分が何をされて死ぬのか知らない。


 何度洗われたのか分からない石畳には、ところどころ落ちない染みが残っていた。


 以前なら死刑の日になるたびに大勢の冒険者が集まり、次は自分かもしれないと怯えながら処刑を眺めていた場所だ。


 今では介錯を望む者が増えたせいか、ここで死刑が行われること自体、以前より少なくなっている。


 そんな場所に今日は俺が立っていた。


「みんな貼り紙に書いてある通りだ! まず説明する。聞きたいやつは集まれ!」


 声を張り上げると、何事かと足を止める者が現れ始めた。


 十分ほど待つ頃には、いつもなら死刑を見るために人が集まる広場を、今度は俺の話を聞きに来た冒険者たちが埋めていた。


「まず初めに、俺は西にいるモンスター連中と手を組んで、南地区を攻略するつもりだ」


 当然、広場が騒がしくなった。


『モンスターと手を組むのか!?』


『エリーを殺した奴らだろ!』


「ああ。俺もリリーと戦ったし、エリーも一回殺されてる。それでも組む」


 昨日の会食で聞いた話を、必要なところだけ説明した。


 モンスターを選んだ者はほとんど成長できず、パーティから捨てられたり、設定された敵と間違われて殺されたりする。リリーはそんな連中を集めて西に居場所を作り、生きた人間を狩らせない代わりに、すでに死んだ人間だけを食わせてきた。


「お前らも勘違いすんなよ。あいつらだって最初からモンスターだったわけじゃねえ。ここへ来る前は俺たちと同じ人間だ」


『でも、人間を食うんだろ?』


「ああ。それがあいつらの成長方法だからな。ただ、そこらで死んだ奴を食ってるだけじゃ、南を攻略できるほど強くならねえ」


 だからリリーは俺たちを偵察し、先に戦って自分たちにも対等にやり合える力があると見せた。そのうえで会食の席を用意し、生きた人間ではなく、もう二度と戻らない死者の身体を譲ってほしいと頼んできた。


「俺はその話に乗る。死んだ身体でモンスターを強くして、そいつらと一緒に南へ行く」


『でも……残された仲間の気持ちはどうなるんだ?』


『天国に行けなくなるかもしれないじゃないか……』


「なに寝ぼけたこと言ってんだ! もう俺たちのいるここが地獄だろ」


 広場のあちこちから野次が飛んだ。


『それなら勝手にやればいいだろ!』


『なんでターシャ商会まで使えなくするんだ!』


『それじゃ強制じゃないか!』


「ああ、そこは俺が決めた!」


 声を張ると、野次が少しずつ収まっていった。


「墓に入りたい奴は墓に入ればいいし、天国に行きたいなら勝手に行け。俺は止めねえ。ただ、俺たちが作った町、運搬、装備、情報、ステータス上げの支援を使って先へ進みたいなら、死んだあとは次の奴らのために身体を残せ。それだけだ」


『でも、それで本当に攻略が進むのか?』


「知らん!」


 広場のあちこちから「はあ?」という声が上がった。


「知らねーもんは知らねーよ! 俺だってまだクリアしてねえんだからな!」


 何人かが笑い出し、それにつられて張り詰めていた空気も緩んだ。


「東じゃ俺たちより先へ進む奴を増やした。町を作って、攻略を諦めた奴にも働いてもらった。今度はモンスターとも組む。それで南へ行く」


 人間だろうが、獣人だろうが、エルフだろうが、モンスターだろうが、使える力を種族で分けている場合じゃねえ。


「生きてるうちは好きに生きろ! 俺も好きに生きる! だけど死んだあと、その身体で元は同じ人間だった奴を生かせるなら、俺はそっちに使いたい!」


 広場の中央に残された処刑台が目に入った。


「こんなクソゲームに長くいると忘れちまうかもしれねえけど……俺たちは、もともと同じ人間だ!!」


 しばらく静まり返っていた広場の中で、一人の男が手を上げた。


『……お、俺はいいぞ』


 声のした方へ目を向ける。


『どうせあと二年しかねえ。墓なんか作ってもらったところで、見る奴もいねえしな』


 すると今度は別の場所から声が上がった。


『俺もだ!』


『俺も構わねえ!』


 それをきっかけに、広場のあちこちから少しずつ手が上がり始めた。全員じゃない。腕を組んだまま俺を睨んでいる奴もいれば、隣の仲間と相談している奴もいる。


「ターシャ商会を使うかどうかも、自分の身体をどうするかも、今決める必要はねえ! ただし契約した以上、死んでから『やっぱり嫌です』は聞けねえからな!」


『死んでんだから言えねーよ!』


「そりゃそうだわ!」


 広場に笑いが起こった。


 普段なら誰かが死ぬところを見るために集まる場所で、これだけ大勢が笑っている。

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